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ECサイトの出店方法には主に自社ECとモールがあります。どちらにも長所や短所はありますが、将来的な販路の拡大も見据えて自社ECを構築したいと考えている方もいるのではないでしょうか。
自社ECはモールに比べると集客が難しいという側面はありますが、ブランディングを確立できれば大幅な売上の向上を期待できる運営方法でもあります。一方、モールにも多くのメリットが存在します。そこで今回は、自社ECとモールの違いやメリット・とデメリットについて詳しくご紹介します。
自社ECの概要
自社で固有のドメインを作ってECサイトを運営する自社ECは、構築方法や運用に利用できるプラットフォームもさまざまです。自社に合った方法を選択することで運用のしやすさだけでなく売上も大きく差がつくので、まずは代表的な種類を確認しておきましょう。
自社ECとは
自社ECは「他社が運営しているプラットフォームに出店するのではなく、自社でドメイン(インターネット上の住所のようなもの)を取得してECサイトを運営すること」です。
自社ECにもさまざまな構築方法があり、事業規模や取り扱っているアイテム数、予算などによって適している媒体は異なります。
ASP
ASPは、事業者が既に作り込んだECサイトのプラットフォームをインターネットを通じてユーザーに提供するサービスのことです。
既に完成した状態の機能を複数のユーザーに対して提供するという性質上、費用はパッケージやフルスクラッチに比べると安価に抑えられる可能性が高いといえます。クラウド環境で提供されることが多いので、インターネットに接続できる環境であればどこからでも利用できるのがメリットといえるでしょう。ただし、完成済みのシステムを利用することからカスタマイズ性は低いというデメリットもあります。
無料のものと有料のものがありますが、一般的には有料のものの方が機能が充実している傾向にあります。
パッケージ
パッケージは「ECサイトに必要な基本機能をある程度作り込んだ状態でパッケージ化してあり、そのパッケージをユーザーが購入する」方法のことです。
機能はある程度自由にカスタマイズできるので、自社独自の運用方法に合わせて機能追加や変更をかけられるのがメリットです。ただし、追加の開発費用がかかる場合がほとんどなので、ASPに比べると費用は高額になるケースが多いでしょう。
カートや受注機能、決済機能などの基本機能は一通り揃っているので、カスタマイズが不要であればそのまま利用することもできます。
オープンソース
オープンソースは「無料で公開されているプログラミング用のソースコードをダウンロードし、エンジニアがカスタマイズして自社用のECサイトを作り上げる」方法のことを指しています。
企業や個人の有志が制作したECサイト向けのソースコードは無料で提供されている場合があり、このソースコードはライセンスフリーで改変自由とされています。プログラミングの知識が必要なのでスキルの高い人材がいる場合に限られますが、無料で利用できるのでコストを抑えられるのが最大のメリットです。
ただし、自社に開発できる人材がいないのであればITベンダーなどに開発を依頼しなければならないので、結果的にパッケージよりも費用が高額になる可能性がある点には注意が必要です。
フルスクラッチ
フルスクラッチは「すべての機能を1から構築する」方法です。決まった形がないので、システム設計の段階から必要な機能をヒアリングして自社の形式に合わせることができます。一般的なECサイトの運営では対応しきれない特殊な運用がある場合や、自社の運用に完全に合致したシステムを求めている場合にはフルスクラッチが検討されるでしょう。
フルスクラッチはECサイトの構築方法の中では最もコストと準備期間がかかることから、採用するのであれば慎重に検討を重ねることが大切です。
自社にとって必要な機能を十分に検討しなければ、余計な機能を実装してしまったり機能不足で使い勝手が悪いシステムが出来上がってしまったりする可能性があるからです。
ECプラットフォーム一覧
最近では世界中の企業がECプラットフォームを開発しています。日本国内でも多くの事業者がECプラットフォームを提供していますが、よく使われている有名なECプラットフォームには次の3種類があります。
Shopify
カナダ発祥のShopifyは、世界No.1のシェアを誇るASPサービスです。世界175ヶ国で利用されている販路の広さが特徴で、世界中の決済手段に対応しているというメリットがあります。日本でよく使われているクレジットカードや代引きなどにも対応しています。
ECサイトのテンプレートは100種類以上用意されており、好きなデザインを選ぶだけで簡単に機能性が高く集客力の高いECサイトを構築できます。専門知識がなくても運用できるので、初心者に適したECプラットフォームといえるでしょう。
コストも比較的安価で、ベーシックプランであれば1ヶ月あたり29ドルから使えます。日本円で月々3,000円程度のランニングコストと考えると、小規模事業者でも導入しやすい価格帯といえます。
国内外の大手配送サービスと連携しており、越境ECを検討している場合にも役立つプラットフォームです。
BASE
2012年からサービスを開始したBASEは、初期費用や月額費用を抑えた運用を叶えられるASPサービスです。ショップの開設は初期費用も月額費用も0円で可能であり、機能も豊富なので日本国内では多くのユーザーを抱えています。
デザインテンプレートから希望のものを選択するだけでECサイトを構築できるので、特別な専門知識が不要なのも支持されているポイントです。よりクオリティが高いテンプレートを使いたい方は、有償でプロのデザイナーが制作したテンプレートを購入することもできます。
HTMLのカスタマイズも許可されていることから、プログラミングの知識があればデザインを自在に変更できるのも魅力的です。
ショップの開設に費用はかかりませんが、毎月の販売額に応じて販売手数料(3%)と決済手数料(3.6%+40円)がかかる点には注意しましょう。
STORES
STORESは初めての方でも直感的にECサイトを制作できるASPサービスです。管理画面が最適化されていて、パソコン・スマートフォンを問わずに魅力的なデザインのECサイトを構築できます。
導入方法がよく分からない場合でも担当者が支援してくれるので、自社にとって利便性の高い設定で使い始められるのもメリットのひとつです。HTMLの編集などには対応しておらず、テンプレートを選んで利用するだけのシンプルな作りなので初心者の方でも扱いやすいでしょう。
フリープランは初期費用と月額費用がかからないのもポイントです。販売手数料が5%と比較的良心的な価格なので、ランニングコストを抑えやすいといえます。販売額が大きくなってきた場合はスタンダードプランに移行することで手数料を3.6%にまで引き下げられます。
自社ECのメリット・デメリット
自社ECはブランディングしやすくリピーターを獲得しやすいというメリットがありますが、集客の難易度が高く成果が上がるまで中長期的な視点で運営する必要があるというデメリットもあります。それぞれのメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット1:自社ブランドを確立しやすい
自社ECはモールとは異なりデザインが自由で、自社独自のキャンペーンを打ち出せるというメリットがあります。
一般的にECモールはある程度店舗ページのデザインが決められている場合が多く、デザイン面で他社と差別化しにくい傾向にあります。商品写真や紹介文などで独自性を押し出したとしても、大々的な差を生み出すことは難しいでしょう。
また、モール自体のキャンペーンに参加することはできても、自社だけのキャンペーンを実施しにくい環境にあるという問題もあります。モール全体で一斉にキャンペーンを行っている期間は自社だけでなく他社も割引などを行っている可能性が高く、ここでも差別化が難しい問う問題が発生します。
一方、自社で運営しているECサイトに訪問してくれるユーザーは、自社の商品以外を目にすることは基本的にありません。モール自体の商品ページのテンプレートに則る必要もなく、自由度の高いデザインで運営できます。
ブランドのコンセプトに合わせたサイトデザインでブランドの価値を高めたり、ユニークなキャンペーンを打ち出してユーザーの興味・関心を集めるマーケティング手法も展開できます。
メリット2:利益率が高くリピーターも得やすい
一般的にECモールへの出店は出店料や月額費用、販売額に応じた所定の販売手数料がかかるケースが多いといえます。
中には出店料と月額費用を0円に設定しているモールもありますが、その場合でも利益化のために販売手数料やその他のオプション費用を徴収したりする事業者がほとんどです。従ってモールへ出店すると商品を販売して得られる粗利の中からモールへ支払うコストが差し引かれる形になり、実際の利益は大きく減少することを前提に運営しなければなりません。
一方で自社ECであればモールに対して手数料を支払う必要がなくなるので、純粋に販売した商品の分だけ粗利を得られます。ECサイトの管理コストはかかりますが、モールへ支払うコストを削減できるのは非常に魅力的です。
また、自社ECは前述のように他社との差別化がしやすいことから、自社のファンを増やしてリピーターを獲得しやすいというメリットもあります。安定的なECサイトの売上確保にリピーターの獲得は必要不可欠であることから、自社ECを上手く育てられれば実りが大きいといえます。
デメリット1:集客が難しい
自社ECは自由度が高く訪問客のファン化がしやすい反面、ECモールと比べて集客が難しいというデメリットがあります。
モールは運営元の企業の知名度によって一定の集客が期待できる環境にあり、運営を開始したばかりで認知度がそれほど高くない事業者であってもある程度の集客を期待できる公算が大きいでしょう。一方で自社ECは1から訪問客を集めなければならないため、効果的な集客施策を打ち出して自社の認知度を高める戦略が必要になります。
デメリット2:成功までに時間がかかり長期的計画を立てる必要がある
前述のように、自社ECは集客施策を重ねて自社の認知度を高めるためのブランディングが必要不可欠です。どれだけ訪問客を集められるかが自社ECの成功のカギを握っているという見方もできるでしょう。
しかし、集客手法として代表的なSEO対策やSNSの運用、広告出稿などはどれもすぐに効果が表れるとは限らず、一般的にはある程度の時間がかかるといわれています。
集客施策が実を結んで売上につながるまでには中長期的な視点で取り組む必要があるので、すぐに売上を立てなければ経営が立ち行かなくなる事業者にとっては参入しにくいというデメリットが考えられます。
ECモールの概要
自社ECとは異なり、ECモールは他社が運営するプラットフォームへ出店して商品を販売する方法です。ここからは、ECモールの概要を分かりやすくご紹介します。
ECモールとは
ECモールは「企業が提供しているプラットフォームに対して事業者が出店し、自社の販売ページを設けて商品を販売する」というECサイトの運営方法です。自社でドメインを取得したりページを作り込んだりする必要がないので、自社ECと比べると手軽にビジネスを始められるでしょう。
自社ECとは異なりあらかじめ店舗ページや商品ページのテンプレートが決まっているケースが多く、出店した事業者は規定に沿って商品を販売する必要があります。中には特定の範囲内でカスタマイズできるECモールもありますが、基本的には他社と大幅な差別化を図ることは難しいといえます。
集客のためのキャンペーンに力を入れているモールも多く、特定の時期になると事業者側も参加を促される場合もあります。割引やプレゼントなどさまざまなキャンペーンを駆使して運営元がモールへの集客を図ってくれるので、自社で集客を行わなくてもある程度訪問客が期待できるのがメリットです。
大手ECモール一覧
日本国内にもさまざまなECモールがありますが、特に知名度の高い大手のECモールは次の3つです。出店を検討する際は真っ先に候補に挙がる3社であるといえるでしょう。
Amazon
https://www.amazon.co.jp/ref=nav_ya_signin?
世界的にも知名度の高いAmazonは、日本だけでなく多くの国でビジネスを展開しており莫大な流通総額を誇るECモールです。
日本市場も非常に大きく、2019年の流通総額は約1兆7,000億円にものぼっています。取り扱っているアイテムが多岐に渡るので、欲しいものを思いついた時にまずはAmazonで商品を検索してみるという方も多いのではないでしょうか。
Amazonに事業者が出店するには「マーケットプレイス」というプラットフォームを利用します。出店者登録を済ませると販売価格や在庫数を入力するだけで販売準備が完了するので、手軽に商品の販売を開始できるのは嬉しいポイントです。
また、オプションにはなりますが「FBA」というAmazon独自のフルフィルメントサービスを展開しており、物流をAmazonにまとめて委託できるサービスも魅力のひとつです。24時間365日のカスタマーサポートやAmazonプライム契約者に対するスピード配送なども利用できるようになるので、物流から手を離したい方にもおすすめです。
プランは「大口出品」と「小口出品」の2種類ありますが、小口出品は1ヶ月に49点以下の商品を販売する個人や小規模事業者向けのプランなので、一般的には大口出品を選択するケースが多いでしょう。月額費用は4,900円で利用できますが、カテゴリー毎に定められた販売手数料がかかるので事前に確認しておくことも大切です。
楽天
楽天は楽天株式会社が運営しており、国内向けとしては最大規模のECモールです。会員数は1億IDを突破し、現在でも順調に成長を続けています。2020年には楽天全体で4.5兆円、楽天市場だけでも3兆円の流通総額に到達し、Amazonと並んでよく利用されているモールだといえるでしょう。
クレジットカードや通信キャリア事業、電子書籍など複数のサービスを展開しており、「楽天ポイント」という共通のポイントを得られる仕組みで顧客を囲い込むことに成功しています。
他のECモールに比べて集客のためのキャンペーンに力を入れていることも特徴のひとつで、「楽天スーパーセール」や「お買い物マラソン」などの思わず多くの商品を購入したくなるような取り組みを数多く実施しています。
スーパーセールでは人気商品を割安な価格で提供し、お買い物マラソンは複数店舗で購入すると獲得できるポイントが増えていくというシステムで、日頃はそれほど高額な買い物をしないユーザーも積極的にショッピングを楽しみたくなる工夫が詰まっています。
楽天市場に出店するには「スタンダードプラン」「がんばれ!プラン」「メガショッププラン」の3つのプランの中から1種類を選択する必要があります。プランによって月額費用やシステム手数料の料率、ディスク容量、登録可能な商品数の上限などが異なります。オプションにはなりますが、楽天ペイなどのモバイル決済にも対応しています。
Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングはヤフー株式会社が運営しているECモールで、国内No.1の出店数を抱えています。出店にあたって出店料や月額費用がかからないだけでなく、販売ロイヤリティーも徴収されないことからECサイトを開設したら登録しておきたいモールのひとつです。
楽天と同様にさまざまな集客キャンペーンを実施しており、「5の付く日キャンペーン」や「PayPay祭り」などが有名です。5の付く日に商品を購入したり旅行予約サイトで宿泊予約をすると5%還元される、PayPayを利用して決済すると商品の購入金額に対して一定割合のポイントが得られるなどの仕組みでユーザーに購入を促します。
登録店舗数が多いので競合も多いという側面もありますが、ランニングコストを抑えたいのであれば魅力的なECモールです。
また、EC事業に参入したばかりの事業者は認知度の向上が重要になりますが、Yahoo!ショッピングでは自社の店舗ページに他サイトへのリンクを設置できるのがメリットです。一般的なECモールでは自社サイトなどへのリンク設置は禁止されているケースが多いので、ブランディングを並行して行えるのは同社の特徴といえるでしょう。
ECモールのメリット・デメリット
ECモールは集客力の高さや出店の手軽さが最大の魅力です。一方で競合他社が多く、手数料などの関係で利益率が低くなる可能性もあるので、メリットとデメリットの双方を考慮した上で出店を検討しましょう。
メリット1:知名度のあるモールは集客力が高い
知名度が高いモールには、日々多くのユーザーが商品を探して検索に訪れます。欲しい商品を思いついた時にまずはECモールを覗いてみるという人は多く、モールに出店しているだけで自社の商品を見つけてもらえる可能性は高まるでしょう。
自社ECでユーザーに商品を購入してもらうためには自社の存在をユーザーに認知してもらった上でECサイトに誘導し、さらにユーザーに商品を購入したいと思わせるためのマーケティングが必要不可欠です。
一方、モールであればどの商品を購入しようか決まっていない状態で商品を比較・検討するユーザーも多いので、同じカテゴリーに登録されている商品を無作為に閲覧する可能性は高いといえます。検索で偶然出会った自社の商品を気に入って購入してもらえる確率はモールの方が高いといえるでしょう。
メリット2:知識が無くても簡単にスタートできる
自社ECを運営するには構築方法や利用するプラットフォームを選定し、どのようなデザインにするのかを決めて運用管理もすべて自分たちで行わなければなりません。専門知識がなければ難しい部分も多く、自社に運営ノウハウがない場合は外部業者への委託なども検討しなければならないでしょう。
選んだ構築方法にもよりますが、一般的にはサイトをオープンできる段階にまで作り込むにはある程度時間がかかるため、思いついた時にすぐに事業を始めるのは難しいといえます。
しかし、ECモールなら既に企業が用意しているプラットフォームに出店登録するだけで商品の出品が可能になります。事前準備の時間は自社ECに比べると大幅に短縮できるので、すぐに商品の販売を開始したいという希望も叶えられるのが強みです。
ECモールならHTMLなどECサイトを開設するための専門知識がなくても簡単にスタートできるので、「ECサイトを開設したいけど、開設方法が分からないのでなかなか決断できない」という方はECモールへの出店から始めるのも選択肢のひとつです。
デメリット1:競合他社が多く価格競争に陥りやすい
ECモールはひとつのプラットフォームに多くの事業者が出店するため、複数の事業者が同じ商品を扱うこともめずらしくありません。
前述のようにECモールはある程度店舗ページや商品紹介ページのデザインが指定されていることから他社との差別化がしにくく、自社の商品に注目してもらう方法に「価格の安さ」を選択する事業者が増えやすい傾向にあります。
どのページを見ても同じデザインで販売されていて商品の機能や効果も同じであれば、ユーザーが少しでも安価な商品を購入したいと考えるのは自然です。そのため他社と価格競争を繰り広げて少しでも安価に商品を提供することで購入に結びつけようとする動きがモール内で活発化します。
結果的にユーザーにとっては商品を安く購入できるというメリットがありますが、事業者側にとっては価格競争に巻き込まれることによって利益が減少するというリスクがあります。
デメリット2:利益率が低い
ECモールは月々の販売額に応じて所定の手数料を支払うように設定されているケースが一般的です。そのため商品の売上がそのまま利益にはならないという点は自社ECと大きく異なる部分であり、デメリットになり得えます。
例えば販売価格が1,000円で粗利が15%の商品Aを自社ECで販売したとき、手元に残る利益は「1,000円×15%=150円」になります(物流コストや運用管理費など諸々の諸経費がかかる可能性もありますが、ここではすべて含んだ上で粗利が15%という前提で計算します)。
一方で、販売手数料が8%に設定されているモールで同じ商品Aを販売したとき、販売額の1,000円に対して「1,000円×8%=80円」の手数料を支払わなければならないので、本来の粗利である150円から手数料を差し引くと「150円-80円=70円」の利益しか残りません。
このような例を見ると、思ったよりも利益が少ないと感じる方もいるのではないでしょうか。ECモールへの出店は集客力が高まり出店も手軽にできるなどのメリットがありますが、利益率を理解した上で費用対効果を検討することが大切です。
また、出店するモールや出品する商品のカテゴリーによっても手数料の料率は異なる場合があるので、選ぶモールや扱う商品にも注目してみましょう。
「自社EC」と「ECモール」選定時のポイント
自社ECとECモールのどちらにもメリットとデメリットがあるので、どちらを選ぶかは自社の状況に合わせて判断することが重要になります。そこで、自社ECとECモール選定時の3つのポイントをご紹介します。
自社の商材で判断
どちらを選ぶか迷ったら、自社でどのような商材を扱うかによって判断するのもおすすめです。例えば全体的には需要がそれほど高くないものの、一部のターゲットには安定的な需要があるマイナーな商品などはモールを利用すると売上を上げやすいといわれています。
マイナーな商品は取り扱っている事業者自体が少ないため、事業者がより多くの販売機会を求めているのと同様にユーザーも購入できる場所を知りたいと思っているケースが多いといえます。どこで購入できるか分からない商品はまずECモールで検索して探してみるというユーザーも多いことから、お互いのニーズが一致する可能性は高いでしょう。
アパレルやインテリアなどのデザイン性やブランド力が重視される商材なら、自社ECでブランディングに注力してファンを増やす手法が効果的な場合は多いといえます。
たくさんの商品が並んでいる中から1着の服を購入してもらうより、自社のコンセプトをECサイト上で表現してユーザーに伝えることで、ブランドの魅力が伝わりリピーターの獲得にもつながります。
これからのビジネス展開で判断
今後のビジネス展開によってどちらに出店するかを判断するのも有効です。事業規模を大幅に拡大する予定がなく、安定的に商品を提供することを最優先にするならECモールに出店すると運用管理の手間を削減でき、商品の提供に注力できる可能性は高いといえます。
一方で、将来的に販路を拡大していきたいと考えているのであれば、自社ECを運営して商品やサービスの認知度向上に取り組むことは重要です。
自社ECの集客は中長期的な目線で進めなければならないからこそ、事業規模の拡大を見据えているのであれば、できる限り早い段階で自社ECを開設してマーケティングや集客施策を打ち出すのが理想的といえるでしょう。
利益の最大化を考えるなら、自社ECに訪問客を呼び込んで商品を購入してもらいモールの販売手数料がかからない体制を整えるのは必要不可欠です。ただし、最終的に目指している事業規模によっては運用コストを加味するとECモールに出店した方がコストを抑えられる可能性もあるので、事前に十分な試算を行いましょう。
また、将来的に越境ECによる海外進出を目指すのなら自社ECで運用することをおすすめします。Amazonなど一部のモールでは海外向けの販売に対応しているケースもありますが、対応している国は一部に限られるので、自社EC上で越境EC対応を進めた方が自由度の高い販売が可能になります。
両方着手するのも手段のひとつ
自社ECを開設してブランディングを進めていきたいと考えていても、売上が立たない期間が長引くと経営に支障が出るかもしれないとお悩みの方もいるでしょう。その場合は思い切ってECモールと自社ECの両方に着手するのも選択肢のひとつです。
例えば出店料がかからなかったり月額費用が割安なECモールを開設して商品を販売しながら、自社ECのマーケティングや集客を並行して行い将来に向けて育てることで、売上を確保しながら自社ECの認知度を高められます。
両方にリソースを割り振らなければならないのでどちらか一方を手がけるよりも手間はかかりますが、安定性を重視するのであればおすすめです。
ECモールは顧客データを蓄積することができない場合が多いので、モールを運営しながら自社ECでデータを蓄積することにより、効果的なマーケティング施策を行えるようになるという効果も期待できます。
EC成功のポイント
ECを成功させるには、多くの訪問客を確保するとともにリピーターを獲得することがカギになります。次の3つのポイントを意識して運営すると、成功に近づきやすくなります。
ポイント1:集客対策を万全に行う
どれほど良い商品やサービスを提供しても、認知されていなければ購入にはつながりません。さまざまな集客対策を万全に行って、自社やブランドの認知度向上に努めましょう。
集客対策にはSNSアカウントの運用や広告出稿、SEO対策、キャンペーン実施など多くの方法があります。SNSアカウントはTwitterやInstagram、Facebookなどの活用が人気です。Twitterは比較的どのようなジャンルの商品でも使いやすく、拡散性が高いので低予算で多くのユーザーに商品を知ってもらえる可能性のあるツールです。
Instagramは写真を中心とした投稿型SNSで、10~20代のトレンドに敏感な若年層が多いことからアパレルなどの訴求に利用できるでしょう。Facebookは長文の投稿に最適です。
SEO対策は「キーワードを検索した際に投稿の順位を上げてより上位表示させる」手法のことです。検索順位が上がると流入が増えて、より多くのユーザーに商品を閲覧して貰える可能性が高まります。
集客対策も自社の商材や予算に応じてさまざまな手法を試すことが大切です。常に成果を測定して改善しながら、自社にとって効果の高い集客方法を見つけましょう。
ポイント2:コンバージョン率・リピート率を向上させる
どれだけ多くの訪問客を獲得できても、実際に商品を購入してもらえなければ売上の向上は実現できません。訪問客の確保は第一段階として重要ですが、第二段階として「自社のECサイトを訪問してくれたユーザーに商品を購入してもらうための施策」を考えましょう。
訪問してきたユーザーの数に対して商品の購入などの具体的な行動を起こした割合を「コンバージョン率」といいます。コンバージョン率を高めることで商品の購入が増加し、結果的に売上も向上します。
訪問者数は十分であるにもかかわらずなかなか購入につながらない場合は、ECサイト内に原因が潜んでいるかもしれません。例えば商品をカートに追加するボタンの配置が不親切だったり、決済ページの情報入力がしにくかったり、対応している決済方法が少なかったりするなどの原因が考えられます。
ECサイトはちょっとしたきっかけで購入を諦められてしまうことも少なくないので、ユーザーの目線に立って購入しやすいサイト作りを心がけましょう。
また、新規顧客を常に獲得し続けることは難しいため、リピーターの獲得も大切です。ポイントシステムを導入したり、定期購入による割引を採用したり独自の施策を展開して、「次もこのお店で購入したい」と思わせるような工夫を取り入れましょう。
ポイント3:短期間でなく長期間で計画を立てることも忘れない
できるだけ早く売上を立てたいと考えるあまり、目先の売上だけを追いかけて長期的な計画を立てていないケースはよくあります。キャッシュフローの健全化には短期的な目標も重要ですが、将来的な目標も忘れずに設定しましょう。
具体的には1年間の売上目標を立てて、その目標をもとに半年、3ヶ月、1ヶ月、1週間などの小さな枠組みに落とし込んでいく方法がよく用いられます。長期的な目標を達成するためには短期的にどの程度の売上が必要なのかを把握すると、日々の運用にも目的意識を持ちながら取り組めます。
計画を立てる際は、これまでに蓄積した販売データも分析して計画に反映することが大切です。設定したターゲットが狙い通りの行動を取っているかを確認したり、売上に大幅な変化があるならその原因は何なのかを特定したりするなど、データに基づいて次の販売施策を立てることで効果的なマーケティングを行えるようになるでしょう。
ECの成功事例をご紹介
最後に、EC事業に進出して成功を収めている4社の事例をご紹介します。ECの成功には物流の外注を上手く活用しているケースが多いため、外注を取り入れた次の事例をぜひ参考にしてみてください。
Bay Trade Japan
Bay Trade Japanは洗練されたデザインと技巧を凝らした日本包丁を販売している企業で、大手ECモールを通じて北米やヨーロッパ大陸、アジア圏など世界に向けて日本国内以外にも商品を販売しています。
越境ECを行うにあたって複数にまたがる販路を一括管理できる環境が必要だと考えたことから、同社はモールを一括管理できるネクストエンジンの導入と物流パートナーにオープンロジを選んでいます。
事業開始当初から国内と海外のどちらのモールにも同時に着手し始めましたが、競合との価格競争に巻き込まれやすい国内ではなく、海外のECモールから優先的に事業を本格化させました。
海外で認知度が高まったことで日本国内でも需要が増加し、現在では逆輸入のような形でAmazonや楽天、au Payマーケットなどの国内ECモールにも参入しています。
ECを選択した理由は「ショップ開設までのハードルが低く、希少性の高い商品をアピールしやすい」ことにありました。しかし、取り扱う商品が増えていくに従って物流業務に時間を取られるという課題に悩まされるようになったことから、連携機能の豊富なネクストエンジンとオープンロジへの外注を導入しています。
この試みによって従業員のリソースを主要業務に割り当てられるようになり、ECサイトの作り込みなどより重要な作業に注力できるようになったと述べられています。
導入事例:https://service.openlogi.com/case-studies/bay-trade-japan/
株式会社BRH
自社のアクセサリーブランドである「gray」や「Carpe diem」などを中心に商品を展開しているBRHは、ECサイトやポップアップストアを販路に選んで2016年から事業を続けています。
同社がファッションやアクセサリーを販売するにあたって、従来の実店舗を通じたBtoB事業だけでは立ち行かない時代であると判断し、販路にECを選択しました。
かつてはBtoBで企業に対して商品を卸し、その商品を企業が小売店などを通じて消費者に販売するスタイルが中心でしたが、現在はインターネットの普及で一般消費者に直接販売できる環境が整っていると考えたためです。
自社ECの構築にあたり、プラットフォームには拡張性の高さやデータ分析に長けているShopifyを選んでいます。以前は他のプラットフォームを利用していたものの、使い勝手を考えてShopifyを利用することを決めました。
ある年のゴールデンウィーク直前に物流がひっ迫したことをきっかけに、ECサイトを効率的に運営するためには物流の効率化が必要だと考え、オープンロジへ物流業務を外注して物流の自動化を図っています。
Shopifyとの連携が可能であることから受注~倉庫への出荷指示までの流れもスムーズになり、1日かけて複数人で作業しなければならなかった作業が30分に短縮され、スタッフの対韓で8~9割の手間の削減に成功しています。
導入事例:https://service.openlogi.com/case-studies/brh/
株式会社LÝFT
トレーニングウエアをはじめとしたフィットネスアパレルを手掛ける株式会社LÝFTは、BtoCのブランド「LÝFT」が近年多くのユーザーから人気を集めている急成長中の企業です。
用意した300個のセット商品がわずか5分で完売する例もあるなど大反響を得ているにもかかわらず、運営チームは4人だけで構成されています。これだけの省力化を実現できているのは、Shopifyとオープンロジの連携による物流の自動化が要因だとインタビューの中では述べられています。
同社の代表である加藤氏はEC事業の開始前からInstagramで14万人のフォロワーを獲得していました。そのため、より多くのフォロワーに商品を届けるためにはECが有効であると判断してECサイトの開設を選択しています。
同業他社へのリサーチを実施したり自身が利用してみたりした結果からデザイン性の高いサイトを構築できるプラットフォームとしてShopifyを選定し、少数精鋭でクリエイティブ性の高い運営を実現するために物流は初期段階から外注することを決めました。
物流業務に手間をかける必要がないことからメンバーそれぞれが生産性の高い業務に集中でき、4人という少人数での運営を可能にしています。システム改善も自分たちで取り組む必要がなく、メイン業務に注力できるのが物流外注の魅力だと語られています。
導入事例:https://service.openlogi.com/case-studies/lyft/
フォン・ジャパン株式会社
フォン・ジャパン株式会社は世界最大のWi-Fiコミュニティサービスを運営している「FON」の日本法人です。「世界をWi-Fiで覆い尽くす」という理念をもとに活動しており、FONルーターの利用者同士で日本各地にあるアクセスポイントを共有できるというオリジナリティの高いサービスを展開しています。
同社は日本法人を設立した当初、家電量販店やAmazonのようなECモールを通じて販売を行っていました。しかし、物流を自社ですべて担っていたことから在庫保管や梱包、出荷業務に多大なリソースを取られてしまい、個人向けの販売を一旦停止したという経歴を持っています。
外部倉庫への委託も検討したものの、当時検討していた倉庫はデータ連携ができなかったり倉庫とのやり取りが負担になったりして結果的に委託を断念せざるを得ませんでした。
それでも店舗を通じて販売するとユーザーの意見を吸い上げにくいという背景があり、BtoC事業を再開しようとオープンロジに物流を外注する形でEC販売を再開しています。
複数のECモールと連携できる点を魅力に感じてオープンロジを選んだところ、過去には半日かかっていた作業がわずか15分に短縮されて物流業務の負担から解放されたと感じているようです。在庫状況もすぐに確認できるので、顧客対応もスムーズになったという手応えについても述べられています。
導入事例:https://service.openlogi.com/case-studies/fon/
「自社EC」or「モール」自社商品・状況などトータルで判断することが大切
自社ECは競合他社との価格競争を避け、高い利益率を確保しながら独自のマーケティング施策を打ち出しやすい運用方法です。一方で、集客がモールに比べると難しく、成果が出るまでに時間がかかるというデメリットも抱えています。
モールは手軽に出店できて集客力が高い点が魅力ですが、競合他社との差別化がしにくく販売手数料が大きな負担になりやすいという側面もあります。どちらが良いか一概に言い切ることはできないので、取り扱う商品や社内の状況などを考慮した上で自社にとってメリットがある方を選択すると良いでしょう。
場合によっては自社ECとモールの両方に着手するのも手段のひとつです。将来的には自社ECで運用したいものの安定性に欠けるという場合は、モールを併用すると売上を確保しやすくなります。