複数のモールやカートに販売チャネルを広げていくと、売上が伸びる一方で「バックヤード業務がいつの間にか増えていた」と感じることはないでしょうか。受注確認、在庫の振り分け、CSVでのデータ連携。ひとつひとつは小さな作業でも、積み重なると担当者の時間を大きく圧迫します。
この記事では、成長中のECにおいて担当者のバックヤード業務を可視化したうえで、OMS(受注管理システム)を導入すると業務がどのように変わるのかを、見ていきます。
複数チャネル運営で、EC担当者の業務はどう変わる?
💡 この章の要点
販売チャネルが増えるほど、受注・在庫・出荷に関する管理業務は複雑になりやすく、売上に直結しないバックヤード業務に一定の時間を取られやすくなります。
EC事業が成長し注文数が増えるほど、受注・在庫・出荷管理などの物流業務も複雑になりやすいものです。特に複数のモール・カートを運営していると、販売チャネルごとの管理画面を行き来しての受注確認や、CSVを使ったデータ連携が日常的に発生します。
こうした業務は、売上を直接生み出すものではありません。それでも、日々の運営を止めないためには一定の時間を割かざるを得ないのが実情です。
では、EC担当者は具体的にどのような業務に、どれくらいの時間を使っているのでしょうか。ここからは、ヒアリングをもとに再構成したシミュレーションで、1日の業務を見ていきます。シミュレーション① EC担当者の1日の業務とは?
💡 この章の要点
EC担当者へのヒアリングをもとに、CSV運用時の1日の業務を可視化しました。
本シミュレーションが当てはまりやすいのは、次のような特徴を持つEC事業者です。条件が近いほど、このあとに紹介する業務負荷も近くなると考えられます。
該当しやすいEC事業者の特徴
- ✓ 3つ以上のモール・カートを運営している
- ✓ モール・カートとのデータ連携にCSVを利用している
- ✓ 受注・在庫・出荷管理をEC担当者が手動で行っている
- ✓ 取扱商品(SKU数)が多い
上記の条件に当てはまるEC事業者のモデルケースとして、ヒアリング内容をもとにしたシミュレーションを見てみましょう。
【CSV運用時の業務】
| 業務カテゴリ | 具体的な作業内容 | 所要時間(目安) |
|---|---|---|
| ① 注文修正・更新 |
※販売チャネルごとに繰り返す
|
約1時間半 |
| ② 出荷指示登録 |
※販売チャネルごとに繰り返す
|
約3時間 |
| ③ 出荷実績登録 |
|
約1時間 |
| ④ 在庫の振り分け |
※販売チャネルごとに繰り返す
|
約30分 |
| 合計 | 約6時間 |
※本シミュレーションは、オープンロジが複数チャネル運営事業者への提案・ヒアリングを通じて把握した業務内容をもとに、再構成しています。 ※シミュレーションは一例であり、実際の業務内容やボリュームは事業者によって異なります。
業務カテゴリごとに時間を積み上げると、受注・在庫・出荷に関するデータ処理や確認で1日あたり約6時間を要する計算になります。
業務を整理すると見えてくること
シミュレーション①の作業は、複数チャネル運営に共通して起きやすい、次の2つの事象として整理できます。
【データの受け渡し】
各販売チャネルの管理画面から受注データをCSVでダウンロードし、加工し、倉庫システムへアップロードする——というデータ受け渡しの連続が発生しやすくなります。
ひとつひとつは単純に見えても、確認・修正・待ち時間が積み重なることで、業務負荷は確実に増えていきます。
【在庫の振り分け・補充】
CSV運用では、在庫をチャネルごとに個別の数量で割り当てて運用しているケースも少なくありません。
この場合、担当者は各チャネルの在庫状況を確認し、振り分けや補充の要否を判断する工数がかかります。この判断・調整自体が、CSV運用における業務負荷のひとつです。
加えて、もしこの判断が遅れると、いずれか1つのチャネルで割り当て分が先に売り切れてしまい、他のチャネルにはまだ在庫が残っているにもかかわらず、そのチャネルでは「売り切れ」表示になって販売機会を逃してしまうこともあります。
OMSとは?
OMS(Order Management System:受注管理システム)は、複数の販売チャネルからの注文を一元管理し、受注や在庫の情報をシステム間で連携することで、手作業による管理業務の自動化を実現します。
システムを導入・構築する際のアプローチとしては、大きく以下の2つの方法があります。
| タイプ | 概要・仕組み |
|---|---|
| 単体型 |
OMS単体で提供されるシステムを利用する方法。 ※他システムや既存の倉庫管理システム(WMS)とAPI等で連携させて運用します。 |
| OMS・WMS一体型 | OMS(受注管理)とWMS(倉庫管理)までが最初から一体になったパッケージシステムを利用する方法。 |
▶︎︎ 「OMS・WMS一体型システム」については、こちらでも紹介しています。
シミュレーション② OMSを導入すると、EC担当者の1日はどう変わる?
シミュレーション①と同じモデルケースにて、OMS導入後の1日の業務を可視化しました。
【OMS導入後の業務時間】
| 業務カテゴリ | OMS導入後の作業内容 | 所要時間 |
|---|---|---|
| ① 注文修正・更新 |
出荷保留・確認待ちリストの対応 ※住所不備や変更依頼など、修正が必要な場合のみ発生 |
例外対応のみ |
| ② 出荷指示登録 | 自動化のため作業なし | 0分 |
| ③ 出荷実績登録 | 自動化のため作業なし | 0分 |
| ④ 在庫の振り分け | 自動連携のため作業なし | 0分 |
| 合計 | 例外対応のみ |
※本シミュレーションは、OMS・WMS一体型システムを導入した場合を想定しています。OMS単体型を導入し、既存の倉庫管理システム(WMS)とAPI連携で運用する場合は、一部の工程で違いが生じる可能性があります。
CSV運用時とOMS導入後で比較すると、担当者の業務は「すべてのデータを自分で移動・確認する」ことから、「例外的に確認が必要なものだけに対応する」ことへと変わっていることがわかります。
OMSによる自動化で、EC担当者の時間をどう使えるか
OMSによってバックヤード業務を自動化することで、EC担当者は販促や商品企画など、売上向上や事業拡大につながる業務に時間を振り向けやすくなります。
複数チャネル運営の負担は人の頑張りで乗り切るものではなく、仕組みを変えて軽減できるものです。
OMS導入を検討するときに確認したいポイント
💡 この章の要点
すべてのEC事業者にOMSが必要なわけではなく、販売チャネル数や業務の状況に応じて検討することが重要です。
ここまで見てきたように、OMSは複数チャネル運営における業務負担を軽減する手段のひとつです。ただし、すべてのEC事業者にOMSが必要なわけではありません。次のような状態に当てはまるかどうかを、まず確認してみてください。
OMS導入検討のチェックポイント
-
✓
販売チャネルが複数に増えているか
チャネルが増えるほど、管理画面の行き来やデータ連携の手間が比例して増えやすくなります -
✓
受注確認のために複数の管理画面を行き来しているか
1件の受注確認に複数の画面を要する状態は、確認漏れのリスクにもつながります -
✓
CSVによるデータ連携が増えているか
CSVの抽出・加工・アップロードの工程が多いほど、人手を介した作業が増えます -
✓
在庫更新を手作業で行っているか
手作業による在庫更新は、振り分け・補充の判断に工数がかかったり、対応が追いつかず機会損失につながったりするリスクを伴います -
✓
受注・在庫管理のために担当者の時間が取られているか
本来注力したい業務に時間を使えているかどうかの目安になります
自社の業務量や運用方法に合わせて検討することが重要です。
なお、上記に複数当てはまり、実際にOMSの導入を検討する段階になった際は、システム構成にも目を向けてみてください。OMS単体型(他システムとAPI連携でつなぐ形)か、OMS・WMS一体型(倉庫管理まで一体になっている形)かなどによっても、解決できる範囲やタイムラグの起きやすさが変わります。
▼ 詳しくは、こちらの資料でも解説しています
【無料ダウンロード】EC多店舗展開「物流自動化」の設計図まとめ|複数チャネル運営の業務は、OMS導入によって軽減できる
複数チャネル運営では、受注・在庫・出荷に関するバックヤード業務が複雑になりやすく、CSVを使ったデータ連携では取得・加工・アップロード・確認といった作業が日々発生します。
OMSを導入すると、こうした業務の一部を自動化でき、そこで生まれた時間を、販促や商品企画など売上向上につながる業務に振り向けられるようになります。
※本記事の数値は、過去の提案をもとにしたシミュレーションです。実際の運用による業務時間削減実績ではありません。
▼ 受注・在庫管理から物流まで、EC業務の効率化をご相談ください
複数チャネル運営における受注・在庫・出荷の課題は、事業者ごとに事情が異なります。自社の状況に合わせた解決策について、お気軽にご相談ください。

記事監修|有田 秀夫(ありた ひでお)
某大手物流企業にて業務設計や法人営業を経験後、老舗通販物流企業にて20年近く数多くのクライアントの物流課題を解決に導いてきた物流のプロ。
現職のオープンロジでは、物流ネットワーク開発に携わっている。

