越境ECで海外に荷物を発送する方法にはさまざまなものがありますが、少しでもリードタイムを縮小する目的でDHLの利用を検討している方も多いでしょう。とはいえ、実際に利用するための契約方法が分からないという方もいるかもしれません。
自社で飛行機を所有しているDHLは、比較的どのような世界情勢でも安定的に荷物を届けられるなどのメリットがあります。そこで今回は、DHLの概要や契約方法、発送方法などについて分かりやすくご紹介します。
DHLの概要
まずは、DHLの概要について簡単に解説します。
DHLとは|ドイツの国際宅配サービスを提供している企業
DHLは、ドイツに拠点を置いている国際宅配サービスを提供している企業です。世界でもFedExやUPSなどと並んで知名度の高い運送会社であり、多くの事業者が海外への発送手段として採用しています。
日本でも越境ECなどの海外発送によく使われており、特にスピード重視で荷物を送りたい場合に重宝します。当日中に商品を発送可能な輸送サービスから、9時、12時などの指定した時間までに荷物を届けるサービスなど、プランが充実しているのが特徴です。
後述しますが、DHL EXPRESS EASYというプランを使うと梱包資材を無料で請求できるので、資材を用意する必要がなく手軽に発送準備を行える点もメリットといえます。
自社で飛行機を所有
日本国内でよく使われている海外への発送手段のひとつに日本郵便のEMSがありますが、日本郵便との大きな違いとして、DHLは自社で飛行機を保有しているという点が挙げられます。
日本郵便が荷物を発送する際の飛行機は、JALやANAなどの航空会社の貨物スペースを間借りしている形になっています。そのため、災害などの緊急時に航空便が欠航や減便になってしまうと、海外への発送手段が途絶えてしまい、荷物を国内から発送できなくなってしまう可能性があります。
その点で、DHLは自社便を保有していることから、民間の航空会社に突発的な事情が起こったとしても物流を確保し続けられます。自社便によって安定的な物流を維持できるのは、DHLの魅力といえるでしょう。
世界228以上の国と地域の配送に対応可能
DHLは世界で228以上の国と地域に対する配送に対応しており、世界中のあらゆる場所に荷物を届けることができます。EMSは発送できる範囲が限られていることから、EMSでカバーできない地域に荷物を発送する際にもDHLが役立つでしょう。
前述したとおり、災害時などの緊急事態にはEMSが発送できる地域はさらに狭まるため、DHLなどの安定して荷物を届けられるサービスに大きなメリットがあります。日本国内からの発送に問題がなかったとしても、受け入れ先の国が問題を抱えていて日本の民間機の受け入れができない状況にある場合は荷物の発送ができません。
そういった有事でも、自社便であるDHLが着陸して目的のユーザーのもとに荷物を届けられる可能性は高いといえます。世界の広い範囲に荷物を届けたいと考えているなら、DHLを契約しておくとEMSで対応できない地域への発送が必要になった場合でも安心です。
DHLの契約方法
ここからは、実際にDHLを契約する方法について手順に沿ってご紹介します。
契約手順の詳細
DHLと契約する手順は、カスタマーサポートへ連絡を入れてDHLからの書式に返信し、契約書を締結してPayPalとリンクするのが一般的です。詳しい方法を順番に見ていきましょう。
手順1:カスタマーサポートに連絡する
DHLと契約したいと考えたとき、まずはDHLのカスタマーサポートに連絡を入れる必要がります。電話とメールのどちらでも構いませんが、情報の伝え漏れが無いように、伝える内容をあらかじめ準備しておくことが大切です。
カスタマーサポートに伝える内容は、「自社の業務」「業務の規模感」「個人事業主や法人として事業を営んでいること」などがメインになります。
自社の業務については、例えば「越境ECサイトを〇〇というプラットフォームで運用しており、中国のユーザー向けにコスメ用品を販売している」などです。具体性のある内容を伝えることで、実際に業務を営んでいることを伝えられます。
またDHLにとっては新規契約の審査になるため、規模感についても伝えることが大切です。「これまでは日本郵便のEMSで毎月200件程度の発送業務を行っていたが、DHLとも契約したいと思っている」といった内容です。
DHLは個人事業主か法人でなければ契約できないので、個人事業主や法人として事業を営んでいることも併せて伝えておきましょう。その上で、新規契約について営業からの連絡を貰いたいと申し伝えることで、DHLから契約に関する詳細を電話もしくはメールで連絡してもらえます。
手順2:DHLから送られてきた書式に返信する
DHLのカスタマーサポートに連絡を入れると、営業から新規契約の件で連絡が入ります。この電話の内容次第で契約が確定することもありますが、中にはさらに詳細な情報を把握するために、DHLからメールなどで特定の書式が送られてくるケースもあります。メールが送られてきた場合は、書式の内容に従って回答し、返送しましょう。
どのような内容を記入すれば契約できるか、という見本のようなものはないので、自社の現状を振り返りながら正直に回答しましょう。
書式の内容は「現在利用しているサービス」「商品を発送する国の割合」「商品を販売しているサイトのURL」などがあります。EMSや国際eパケットなど複数の選択肢がありますが、DHLの金額などをEMSを多めの比率にして記入しておく方が多少イメージが向上する可能性はあります。
発送国の割合は、現状の運用状況のまま率直に記入しましょう。販売サイトのURLを誤って記入すると、先方の担当者が自社の状況を把握できないため審査を通過できなくなるリスクがあります。返送する前に、必ず記入したリンクに間違いがないかどうかを確認しましょう。
手順3:契約書を締結してPayPalとリンクする
DHLとの電話の内容や前述の書式の内容などを総合的に判断して、契約できるかどうかを審査されます。審査が完了するとDHLから契約書が送付されてくるので、内容を確認して押印し、返送しましょう。締結を急ぐのであれば、事前にPDFなどにスキャンした契約書を送付しておくと先行して登録してもらうことも可能です。
契約書を返送してからおよそ数日程度で、PayPalとリンクするためのURLがメールで送付されてきます。送料の引き落としがPayPalの場合は、このページからリンクすることで出荷を開始できるようになります。
ただし、利用するDHLのプランによってはPayPalを通じた引き落としではない可能性もあるため、あらかじめDHLの担当者に確認しておくことをおすすめします。
すべての設定が完了すると、3~4営業日程度でアカウント番号が発行されて、DHLを利用した出荷を開始できます。
契約は個人事業主または法人に限る
DHLと契約できるのは個人事業主または法人に限られるため、利用する場合は必ず開業届か法人の登記を申請しましょう。個人事業主は屋号がない状態でも登録が可能ですが、DHLの登録には屋号が必要になるので、必ず屋号を設定しておきます。
必要な書類を揃えて管轄の税務署に登録するだけなので、それほど難しい作業は必要ありません。確定申告などにも必要になるので、必ず届け出を出しておくことが大切です。
DHLの発送方法手順
DHLで商品を発送するためには、次の3つの手順で準備を進めます。ここでは、具体的な発送方法について解説します。
手順1:商品を梱包資材を手配する
まずは、商品の梱包資材を手配します。DHLでは梱包資材を無料で提供してもらえるので、DHLに対して梱包資材を請求しましょう。発送の際に必ず必要になるのが「ビニールポケット」と呼ばれる資材であり、発送用のラベルを封入する際に必須となります。また、「FLYER」という袋も用意されているので、2種類の袋を取り寄せておきましょう。
DHLの重量の算出は、通常の場合「実重量」と「容積重量」の重い方を採用します。しかし、「FLYER」のビニール袋を使う場合は必ず実重量を採用するため、この袋に収まる大きさであれば、軽量の荷物は送料を抑えられる可能性があります。
FLYERを使わない場合は、自社で用意した段ボールを用意しても、DHLから提供された資材を利用しても問題ありません。
手順2:発送ラベルを作成する
資材を用意して梱包が完了したら、発送ラベルを作成します。DHLの発送ラベルには3つの作成方法があり、自社に対して発行されているアカウント番号を登録するとどのツールも利用できます。
MYDHL+とHIROGETEの2種類については、無料で利用できます。ラベルの作成にコストをかけたくないという場合は、この2種類のどちらかを利用すると良いでしょう。
有料になっても構わないのであれば、Ship&Coというアプリがおすすめです。ラベル1枚につき19円かかりますが、多くの事業者に支持されているサービスであり、機能性が高くeBayなどモールとの連携も可能です。迷った場合は3種類をそれぞれ試してみて、自社に合ったものを選ぶのも手段のひとつです。
手順3:集荷依頼をかける
発送する荷物の準備が整ったら、DHLに対して集荷依頼をかけましょう。MyDHL+やカスタマーサポートへ電話で連絡を入れて集荷の希望日時を伝えると、集荷に来てもらうことができます。日本国内ではDHLが集荷を行っていない地域もありますが、その場合は佐川急便が集荷に対応してくれます。
集荷自体にはそれほど長い時間はかからず、国内の事業者のようにバーコードで発送ラベルをスキャンするだけで完了します。荷物のサイズや重量は自動的に計測されるので、事前に計算した金額と誤差があったときでもスムーズに算出され、正しい重量に基づいた料金が請求されます。
DHL利用時に押さえておきたいポイント
DHLを利用する際には、押さえておきたいポイントがいくつかあります。次の4つのポイントを忘れずに確認して、スムーズな発送作業を行えるように準備を整えましょう。
ポイント1:ECストアの送料設定を忘れずに行う
DHLを新しく利用する際は、ECストアの送料設定を忘れずに行いましょう。DHL用の送料設定を行っていないと、ユーザーが送料を選択できなかったり、正しい送料が計算されずに誤った送料を請求してしまったりする可能性があります。
以前使っていた発送方法を完全にDHLに切り替えるのであれば、過去の送料設定を完全に削除してから新規の送料設定を行う必要があるでしょう。一方、EMSなどの発送方法も残しつつDHLも選択できるようにする場合は、DHLを選択できるように送料設定を追加することになります。
送料の請求を誤ると、顧客との間でトラブルが起こったり、クレームに発展したりするリスクもあります。新規契約できたことに安心せず、送料設定を忘れずに見直した上で運用を開始することが大切です。
ポイント2:関税に注意
DHLのような海外の民間企業が配送を担う国際宅配便は、発送先の国の基準額を超えると関税が発生する可能性があります。EMSでも関税が発生することはありますが、DHLなどのクーリエ業者の方が通関検査が比較的厳密であり、関税が発生する可能性が高いともいわれています。
一部のプランでは関税の支払いを発送人にできる場合もありますが、一般的には関税を支払うのは受取人とされています。そのため、商品を販売する際にあらかじめ関税が発生する可能性についてユーザーに伝えておかなければ、いざ商品が届いた際に受け取りを拒否されてしまう危険性があります。
「商品によっては関税の負担が発生する場合があります」など、商品の注文ページや購入完了メールなどに記載しておき、周知を徹底することでリスクを軽減できます。
ポイント3:DHLで取った見積もり以外にも追加料金がかかる可能性
DHLで取った見積もりは、あくまでもDHL自身の商品の配送サービス料金になります。他にも国や地域によって所定の追加料金の負担を求められるケースがあるので、想定外の費用がかさんで慌てないように、あらかじめどのような費用が考えられるのかを把握しておきましょう。
燃油サーチャージ
燃油サーチャージとは、航空機の燃料割増料金のことです。基本的に毎月新しい料率に更新されていくため、常に同じ料率ではありません。2021年3月は15%だったので、この料率を元に計算してみましょう。
例えばアメリカへ5kgの荷物を送る際の送料が4,000円だったとすると、燃油サーチャージが「4,000円×15%=600円」となるので、送料の4,000円に燃油サーチャージ600円を加算して合計4,600円となります。
燃油サーチャージの料金は原油価格によって変動するため、世界情勢の影響を強く受けます。この価格だけでコストが大きく跳ね上がる可能性もあるため、世界の動向を注視しながら配送料金の変動には気を配っておく必要があるといえます。
遠隔地配達手数料
すべての地域に適用されるわけではありませんが、遠隔地配達手数料もよくある追加料金のひとつです。日本国内では離島などに適用されるケースがありますが、首都圏や主要都市から離れた地域へ荷物を配達する場合に追加費用を請求されます。
DHLの場合は、「2,600円もしくは1kgあたり60円」の高い方が適用されます。つまり、約43kg以下の荷物を発送する場合は2,600円が適用になりますが、それ以上の荷物を発送する場合は荷物の重量に60円を乗じた金額が遠隔地配達手数料として上乗せされることになります。
前述の「Ship&Co」を利用して発送ラベルを作成すると遠隔地配達手数料が発生するかどうか分かりますが、そうでない場合もDHLが遠隔地に設定している郵便番号の一覧のPDFを参照すると対象地域を把握できます。
緊急事態追加金
現在の新型コロナウイルス感染症をはじめとして、緊急的に対応しなければならない状況に陥った際に追加で請求される費用のことです。長期的にかかるわけではなく、あくまでも緊急事態が発生している間の追加費用ではありますが、この費用が発生している間は大幅にコストが増加する可能性もあるので注意しましょう。
追加費用はある程度重量がある荷物に限定されており、2.5kg以下であれば緊急事態追加金はかかりません。現在どのような追加金が発生しているのかを常に把握しておくことで、想定外の費用を支払わなければならない事態を回避できます。
配達先変更手数料
発送ラベルに記載した住所が誤っていた場合などに、DHLに連絡を入れることで配達先を変更可能です。しかし、配達先変更は無料ではなく、1件につき1,300円の手数料がかかります。この手数料のことを配達先変更手数料と呼んでいます。
配達先を変更しなければならない時は、DHLのカスタマーサポートへ連絡してみましょう。とはいえ、変更には手間とコストがかかるため、発送の際に住所を間違えないように十分内容を確認しておき、極力変更が発生しないような運用を確立することが大切です。
ポイント4:返送料がかかる可能性も忘れない
海外に商品を発送して、現地で受取人に受け取りを拒否されてしまった場合は、管轄の配送センターに返送されることになります。一旦センターで受け取り拒否となった荷物を保管し、その時点で荷主に対して今後の荷物の取り扱いについて問い合わせが入ります。
どのような対応を行うかは案件によって異なりますが、返送する場合は往路とは逆の順序をたどって日本国内まで荷物が戻ってきます。この時の返送費用は発送人の負担になるため、費用が非常に高額になる可能性があることを覚えておきましょう。
DHLにはさまざまな割引運賃が設定されており、格安で荷物を発送できるプランもありますが、返送に関しては割引が適用されないことから非常に高額な料金を請求されるリスクがあります。前述のように関税に関する情報を事前に伝えておくなど、できる限り受取人に受け取り拒否をされないような工夫を施すことが大切です。
もし返送になってしまい、高額な返送費用の負担を回避したいのであれば、現地の発送代行会社を返送先に指定して倉庫に保管し、再度現地の別のユーザーに対して発送するなどの方法が考えられます。
【ご紹介】オープンロジは海外発送にも対応可能
オープンロジでは、海外発送にも対応しています。
独自のDHL連携をご用意
オープンロジではDHLとシステム連携しているため、DHLアカウントをお持ちでないユーザーでも海外へをDHLを使った発送ができます。
「EMSよりも多くの国と地域に対応したい」「DHLでさらに速くユーザーのもとへ商品を届けたい」などの要望を持っている場合には、通常の海外発送はEMSを利用しながら、スポットでDHLを取り入れるという使い方も可能です。発送を急ぐ荷物にのみDHLを利用するなどの方法を取ることで、さらに多様な発送方法を実現できます。ご興味のある方は、ぜひお気軽に詳細をお問い合わせください。
商品1点から登録可能
「海外に商品を発送しなければならない場面はあるものの、それほど頻度が高くない」という事業者様は少なくありません。1ヶ月あたりの海外発送は数件程度なので、少々手間ではあるものの自分たちで対応している、という声はよく聞かれます。
しかし、少数だからこそ特別対応を負担に感じる場合も多く、できれば海外発送の注文も含めて委託したいと考えている方も多いのではないでしょうか。「海外発送を受け付けるにはある程度まとまった注文がなければ難しい」と断られてしまった方でも、オープンロジなら商品をお預かりできます。
商品1点からでも倉庫に商品を保管でき、国内向けと海外向けの商品には取り扱いに差がありません。海外への出荷指示もオープンロジのASPサービスから簡単に作成でき、インボイスの作成はもちろん、オプションサービスで通関書類の作成なども代行しています。
面倒な手続きをまとめてオープンロジにお任せいただけるので、海外発送を負担に感じている事業者様は少数の取り扱いであってもぜひご利用をご検討ください。事業者様ごとの規模感に合わせて、柔軟にサービスをご提供いたします。
DHLについて知り物流のノウハウを深めよう!
ドイツの運送会社であるDHLは、自社便を所有していることから安定的に荷物を配送できるのが強みです。世界情勢が不安定になりやすい昨今の状況下にあっても、世界中の国と地域に荷物を届けられるので、EMSが対応していない地域に荷物を発送する際には重宝するでしょう。
DHLを契約する際は、個人事業主か法人として事業を営んでいるなどの条件があります。詳細な条件を確認した上でカスタマーサポートに連絡を取るなど、契約までの流れがスムーズに進むように準備を整えましょう。