検針とは|アパレルでは欠かせない検針について詳細を解説

openlogi2023年11月9日  
openlogi2020年12月25日

検針とは|アパレルでは欠かせない検針について詳細を解説

アパレル業界に参入する際に考えておかなければならない体制のひとつに、「検針をどのように行うか」というものがあります。とはいえ、検針とは何をする業務なのかよく分からないという方もいるのではないでしょうか。

検針をおろそかにすると事故やクレームにつながり、大きな損害を被る可能性があるため、事前にしっかりと体制を整備しておかなければなりません。そこで今回はアパレルでは欠かせない検針についての基礎知識や目的、具体的な方法などについて解説します。

検針とは|折れた針が商品に残っていないか調べる作業

検針とは、製造時に折れた針が商品に残ったままになっていないか検査することを指しています。まずはその重要性や目的について詳しく見ていきましょう。

アパレルでは欠かせない検査

アパレル商品の製造工程においては、針と糸の使用が欠かせません。中には無縫製を用いる洋服もありますが、ごく一部に限られており、現在流通しているほとんどの洋服は針と糸を使って作られているといっても差し支えないでしょう。

工場では大量の洋服を次から次へと縫製するため、作業の工程において針が折れることも少なくありません。その針が出荷前の洋服に刺さったままになっていないか調べる作業を「検針」と呼んでいます

縫製工場においては「縫子(ぬいこ)」と呼ばれる洋服を縫うための作業員が縫製を行いますが、針の扱いは厳重に管理されています。使用する針は常時1本のみに限定され、出勤後に工場のマネージャーから受け取った1本のみを折れるまで使用するのが一般的です。

もし折れた場合は「折れた方」と「残った方」を合わせて報告し、服に折れた針が残っていないことをチェックしたうえで初めて新しい針を使用できます。しかし、それでも完全に針が残っていないとは言い切れないため、出荷前にあらためて検針を実施します。

検針の目的|検針しなければ大きな損害発生の可能性

日本には「製造物責任法(PL法)」と呼ばれる法律があり、製造物の欠陥が原因で命を落としたり、怪我をしたり、財産に不利益を被ったりした場合は、製造責任者が賠償責任を負うものと定められています。そのため、検針を行わずに出荷した製品に針が混入していた場合、その責任は製造者が負わなければなりません

もちろん、単に賠償しなければならないからというだけでなく、購入した消費者が気が付かずに着用して怪我をしたり、幼い子どもが誤飲したりするおそれもあるため、安全性の観点からいっても針の混入は絶対に避けなければならない事態です。

もし出荷済みの製品から針が見つかった場合、基本的には同じロットで製造した商品が全て回収対象となる可能性が高いでしょう。針の混入が起きた事実の告知費用や回収のための送料、クレーム対応にかかる費用などを合計すると一度の不祥事で数千万円ものコストがかかるといわれていることからも、初期段階で事故を食い止める重要性が見て取れます。

一般的にアパレルは購入単価がそれほど高くない場合も多く、価格が数百円~数千円のものもめずらしくありません。小さな利益を積み重ねて売上を立てる経営スタイルにおいて賠償リスクは非常に高く、企業の信頼性も著しく低下するため、検針を徹底する必要があるといえます。

検針方法

ここでは、実際にどのように検針を行うのかについて解説します。

検針機が主流

検針にはコンベア検針機やX線検査機を使う方法、金属探知機を用いる方法などさまざまな方法がありますが、スピードや利便性の観点からも国内ではコンベア検針機が主流となっています。それぞれの検針方法について簡単にご紹介しましょう。

コンベア検針機

ベルトコンベアの上に商品を置き、金属探知機の下をくぐらせて針がないかどうか検査するタイプの検針方法です。生産した商品を納品用の袋に収められた状態で次から次へと流しながら検査できるため、スピーディーに検針を進められるというメリットがあります。

検針機を通った際に異常があれば出荷から弾き、特に問題が見られなければ梱包作業を行って通常の出荷ルートに乗せる業務フローで運用している企業が多いでしょう。異常を検知すると自動的にベルトコンベアがストップする仕組みになっており、誤って出荷エリアに進まないための工夫が凝らされています。

X線検査機

磁気に反応する可能性がある商品や、ベルトコンベアを通らない商品などはX線検査機を用いる場合があります。靴やバッグ、金属チャームの付いたアクセサリーなどはコンベア検針機による検出が難しいため、X線検査機が活躍します。

また、アパレル商品の針や釘、金属の混入の他にも、食品などに金属類の異物が混入していないか検査する目的で使われるケースも少なくありません。空港の手荷物検査などでもX線検査機が使われているため、目にしたことがある方も多いでしょう。

白黒画像を目視して針の混入を発見するだけでなく、色を反転して見落としにくくする機能などが搭載されているものもあります。人的ミスを防止するための検査記録を残したり、自動警報機能が備わっていたりするため、効率的に異常を検知できます。

金属探知機

「検針機」ではなく「金属探知機」と呼ばれる機械には、鉄やアルミ、ステンレスなどあらゆる金属を検知する電磁コイルが採用されているのが一般的です。

しかし、アパレルではボタンやファスナーなどにあらかじめ金属が取り付けられている商品が多いため、単に全ての金属に反応する「金属探知機」を使用すると、針が残っていなくても異常を検知してしまいやすくなります。そのため、針に使用されている鉄のみに反応するアパレル製品の検針に特化したものを「検針機」として利用しています。

検針機には永久磁石が用いられており、スナップやボタンなどの金属には反応しにくく、鉄を検知しやすい特性があります。このような工夫により、本当に問題のある製品のみを検知することが可能になるのです。

【コラム】販売には商品の品質表示義務がある

商品を販売する際には、製造者の責任のひとつとして「品質表示義務」が課されています。具体的にどのような制度なのか、簡単にご紹介しましょう。

家庭用品品質表示法に基づいた表示が必須

家庭用品品質表示法は昭和37年に制定された法律で、「消費者が商品を購入する際に商品に関する認識不足が原因で損失を被ることがないように、正確な品質表示を事業者に義務付ける制度」のことです。アパレルについてもこの法律に基づいて、正しい品質表示を行わなければなりません。

例えば「シャツ」を例に挙げると、次の表記が必須と定義されています。

  • 繊維の組成
  • 家庭洗濯等取扱方法
  • 表示者名等の付記

繊維の組成については、「綿100%」「ポリエステル75%、ウール25%」など、その商品がどの繊維で作られており、割合がどのくらいなのかを明示する必要があります。

また、家庭洗濯等取扱方法では、洗濯機で洗えるのか、手洗いに限るのか、ドライクリーニングを使用しなければならないのかなどの「洗濯の際にどのように取り扱う必要があるのか」を国が定めた取扱表示に従って記載します。

さらに、「表示した人の名前(企業名)」と「問い合わせ先の住所または電話番号」を付記することで、その商品に問題があった場合の責任はどこに属するのかを明確にする必要があります。

検針はアパレル必須の重要項目のひとつ

アパレルで商品を製造する工程において、検針は消費者の安全確保や企業のリスク回避の観点からも必ず行わなければならない重要な業務のひとつです。万が一にも事故が起こらないように、出荷前の検針は万全の体制に整えましょう。

本来であればメーカーからの出荷時に検針も含めて対応してもらうのが原則ではありますが、海外で生産を委託した商品など、一部の商品においては必ずしもメーカーで対応しきれない場合もあります。

そのような環境では、例えば物流を委託している倉庫に依頼することで検品を徹底する方法も考えられます。自社の限られたリソースを割くことなくプロのスタッフによる正確性の高い検品を行えるため、外注も積極的に検討すると良いでしょう。

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オープンロジマガジン 編集部

物流プラットフォーム「オープンロジ」のマーケティングメンバーにて編成。物流のことはもちろん、ネットショップやマーケティングのことなど、EC事業者に役に立つ情報を幅広く発信していきます。

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