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近年新しく登場したマーケティングの概念のひとつに「ULSSAS(ウルサス)」があります。SNSを中心とした行動購買プロセスを表すこの概念は、ユーザー投稿コンテンツを活用して顧客満足度の向上やコスト削減を図りながらマーケティングを行う上で効果的です。
ULSSASを活用すると、ユーザーの声を自社の販促に活かせます。そこで今回は、ULSSASの概要や活用メリット、間違えられやすいマーケティングファネルとの違いなどについて詳しく解説します。
ULSSAS(ウルサス)とは
近年ではさまざまなマーケティングの概念が登場していますが、ULSSASという考え方に馴染みがない方も多いでしょう。そこで、まずはULSSASの基本的な考え方について解説します。
ホットリンク社が提唱したSNS時代の新たな行動購買プロセス
ULSSASとは、ホットリンク社が提唱したSNS時代の新たな行動購買プロセスのことを指しています。
SNSが登場してから、ユーザーは以前にも増してSNSを使って口コミやレビューなどを積極的に配信するようになりました。この「ユーザー投稿コンテンツ」をマーケティング戦略に活用していくための考え方が、ULSSASという行動購買プロセスです。
「ULSSAS」の名前は、6つの項目の頭文字を取って定義されています。
UGC
「UCG」とはユーザー投稿コンテンツのことで、ユーザーがSNSを通じて投稿する商品の感想や写真・画像、レビューサイトに書かれる口コミなどが該当します。
UCGが高評価だと、企業が宣伝しなくても他のユーザーが興味を持って商品を使ってみたいと思ってもらいやすくなります。インターネットやSNSが普及した今日では、UGCは非常に重要視されています。
Like
Likeは「いいね!」を指しており、SNSでユーザーがお気に入りの投稿を保存しておく機能のことを指します。UGCによって発信されたユーザーや企業の広告を閲覧した他のユーザーが投稿をお気に入りとして保存し、具体的に検討したりさらに関心を高めるためのアクションに移行したりします。
お気に入りの数が多い投稿は、他のユーザーからも注目されやすくなる傾向にあります。
Search1(SNS)
Search1はSNSでコンテンツに関する情報を検索する行動のことです。近年ではSNSでコンテンツの情報を収集するユーザーも多くなり、ハッシュタグや公式アカウントを通じて商品の発売日や特徴、メリット、感想などを検索する機会が増加しています。
Search2(Google/Yahoo!)
Search1がSNS内での検索である一方で、Search2は検索エンジンからコンテンツの情報を検索する行動です。「SNSで気になった商品をGoogleやYahoo!などの検索エンジンで検索してみる」というユーザーはとても多く、SEO対策などによってキーワードの検索順位を高める施策は重要であるといえます。
Action
Actionは文字どおり具体的なアクションの段階で、実際に商品の購入やサービスの契約を行います。ここまでのSNSや検索エンジンによる情報収集でユーザーは十分に購買意欲が高まっているため、公式サイトやECサイトなどに適切な導線を敷いて、スムーズな購入につなげることが大切です。
Spread
商品やサービスを使ってみた感想を、SNSに投稿して拡散するのがSpreadです。ユーザーによって拡散された投稿がUGCとなり、最初のサイクルに戻ります。
【コラム】UGCについて知る
ULSSASの考え方を学ぶにあたって、UGCについて知っておくことも大切です。ここでは、「ユーザー投稿コンテンツ」を表すUGCやULLSASの重要なポイントについて、前述の概要からもう一歩踏み込んで解説します。
UGCとは|ユーザーが生成する制作コンテンツ
UGCとは、ユーザーが生成するコンテンツのことです。英語で「User Generated Content」と表されることから、頭文字を取ってUGCと呼ぶようになりました。日本語では「ユーザー生成コンテンツ」とも称され、ユーザー自らが発信源となって商品やサービスへの意見や感想を投稿します。
SNSに口コミを投稿したり、購入した商品の写真を撮影したり、自身が運営するブログで商品を紹介したりするなど、ユーザーがインターネット上で発信するコンテンツ全般をUGCと呼んでいます。
消費者の立場として、立ち寄りたい飲食店を探すときにレビューサイトを参照したり、化粧品を購入しようか迷っている時にレビューサイトの書き込みを参考にしたりする場面は多いのではないでしょうか。
従来はレビューサイトや掲示板などを自ら訪問しなければ商品の情報を得られませんでしたが、SNSの登場によって投稿そのものがUGCとみなされるようになりました。拡散力の高いSNSの性質を活かして、以前に比べて爆発的な認知度の向上を期待できる時代になっています。
このように、私たちは購買行動を決定する際に日常的にUGCを参考にしており、企業側ははコストをかけることなく自社の商品やサービスの認知度を高められます。企業にとって、UGCの活用はマーケティング戦略上非常に重要なものであるといえます。
ULSSAS(ウルサス)の重要ポイント
Webマーケティングの分野においては、検索エンジンやSNS、Web広告出稿による集客施策が激化しています。多くの企業が顧客の獲得に取り組んでいますが、検索エンジンやSNSのプラットフォームは限られていることから絶対数が限られているユーザーを奪い合う構図がみられるようになりました。
このように、顕在化している顧客にアプローチするマーケティングが常態化していることによって潜在層の掘り起こしが十分に進んでおらず、現状においてはやがて顧客が枯渇してしまう可能性があるといえます。
この課題を解決するためにSNSによる潜在層の掘り起こしを図り、新たなニーズを顕在化させて顧客の枯渇を防止しアプローチ先を増やす必要があり、その際にULSSASの考え方が重要になります。
ULSSAS(ウルサス)を活用するメリット
ULSSASを活用することで、次の2つのメリットがあります。それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
メリット1:コストを削減できる
広告を出稿するなどのマーケティング施策を行わなくてもユーザーに商品やサービスをSNSで拡散してもらえるため、広告費をかける必要がなくなりコストの削減が期待できます。業種や業態、商品の性質によっては多額の広告費を割り当てている企業も少なくないことから、広告費のコストダウンは大幅な利益率の向上につながるでしょう。
削減したコストは新商品の企画や既存商品の改善など、商品のクオリティをさらに高めるための開発費に回せるようになります。
商品やサービスを認知してもらうためにはマーケティング活動が必要不可欠です。しかしどれほど積極的に市場にアプローチしたとしても、商品そのものに魅力がなければ購入したいと思ってもらうことは難しいといえます。
ULSSASによって商品の認知度向上や購買意欲の促進をユーザーに肩代わりしてもらうことで、市場への訴求力を高めるための商品開発に資金を集中させることができます。
また、広告にそれほどコストをかけられない企業であっても、SNSマーケティングであれば低コストで実施できます。ULSSASはコストの削減にも効果的ですが、創業したばかりのスタートアップ企業や広告費の予算が十分ではない小規模事業者などにも有効です。
メリット2:顧客満足度を向上させることができる
浮いた分のコストを商品開発に回すことも顧客満足度を向上させる手法の一種ですが、顧客に直接還元することで顧客満足度の向上を図る方法もあります。
削減した広告費を活用してカスタマーサービスに割り当てる人員を増やしたり、クーポンの発行や商品の割引セールを開催したりすることによって、ユーザーは自分に還元されているという実感を得られるようになり顧客満足度が向上するでしょう。
他にも、物流の予算を増やしてリードタイムの縮小を図るなどの方法もあります。現場で働く人員を増やすだけでなく、業務改善のためにロボットによる自動化を推し進めたり、システムを導入したりする野も手段のひとつです。
また、ULSSASは企業からの発信ではなくユーザーの発信による情報なので、さまざまな視点から見た客観的な情報を獲得できます。企業が発信する情報には通常の場合デメリットはあまり含まれていないため、デメリットを自由に発信できる状態で好意的な感想が多く見受けられる商品については信頼性の向上も期待できます。
ULSSAS(ウルサス)とマーケティングファネルの相違点
ULSSASと似たマーケティングの考え方のひとつに「マーケティングファネル」というものがあります。しかし、ULSSASとマーケティングファネルでは構造に明確な違いがあります。
相違点は構造
両者の相違点は「構造」の部分にあります。ULSSASはフライホイール構造の概念を取り入れていますが、マーケティングファネルは逆三角形の概念です。
ULSSASはフライホイール構造
ULSSASは「フライホイール構造」という考え方の元に成り立っています。フライホイールとは、消費者の購買行動のプロセスや企業のマーケティング活動をフライホイールという「弾み車」の形で表したものであり、企業が継続的にに広告宣伝を行わなくても、消費者が一度購買行動を始めるとUGCによって自動的に購買サイクルが回り続ける、という考え方です。
後述するマーケティングファネルでは、広告を出稿してから顧客が商品を購入する一連のサイクルが完了するともう一度広告出稿のプロセスに戻ります。しかし、フライホイール構造を採用しているULSSASでは「UGCが生み出されたら拡散する、というその拡散によってまたUGCが生み出される」という循環で成り立っています。
SNSアカウントを運用するにあたって質の高いフォロワーを獲得し、自社の投稿がシェアされやすい環境を構築することで、UGCの発生を促して拡散されるサイクルを効率よく生み出せます。
マーケティングファネルは逆三角形
弾み車の形で表すフライホイール構造に対して、マーケティングファネルは逆三角形の形が採用されています。マーケティングファネルでは、企業の商品やサービスに興味を持ったユーザーの人数は行動プロセスが進むごとに減少していくという考え方を持っています。
マーケティングファネルは「AIDMA」というユーザーが購入に至るまでの心理的なプロセスが元になっています。
例えば、広告をきっかけに商品を認知したユーザーが100人だったとすると、その商品の詳細ページを閲覧するのが90人、カートに入れるのが40人、決済ページに進むのが20人、実際に購入を完了するのが10人といったイメージです。この流れが逆三角形に見えることから、マーケティングファネルは逆三角形だと表現されます。
マーケティングファネルの考え方では、ユーザーが商品の購入を完了するとまた逆三角形の最初に戻ります。そのため再び広告を表示しなければならず、ULSSASのようにユーザーの自発的な発信による自動サイクルを構築することは難しくなります。
ECに強いマーケティング会社をご紹介
ULSSASを成功させるために外部企業のサポートを依頼する際は、ECに強いマーケティング会社を選定することが大切です。ここでは、ECに強いマーケティング会社をご紹介します。
株式会社アパレルウェブ
https://www.apparel-web.co.jp/
アパレルウェブは4つの柱を持っており、「デジタルマーケティング」「グローバルマーケティング」「データベースマーケティング」「メンバーズラボ」を軸にマーケティングサービスを展開しています。
デジタルマーケティングにおいては、誰もがSNSを活用するようになって多様性が広がる市場の最新トレンドを正確につかみ取り、クライアントの性質に合わせてデジタル戦略や運用サポート、制作プロデュースを総合的に行ってもらえます。
どのようにSNSを始めれば良いのか分からないという方でも、最初から丁寧にサポートしてもらえるので心強いでしょう。
グローバルマーケティングでは、Shopifyを活用した越境ECの制作プロセスをサービスとして展開しています。越境ECマーケティング部門のグループ子会社を持っており、戦略の一環としてSNSの運用サポートも行っています。
また、アパレルクラウドというASPサービスを2012年から提供しており、サービスが収集した大量のデータを分析してデジタルマーケティングを行い、将来のトレンドを把握するのに効果的な分析サービスも提供しています。
「メンバーズラボ」では会員誌の発行やセミナーなど、「体験・発見・コミュニティ」をテーマとしたさまざまな企画も開催しています。
世界へボカン株式会社
世界へボカン株式会社は、越境ECを中心にサポートする海外Webマーケティングソリューションです。Shopifyで越境ECサイトを構築するサービスを中心として、グローバルリサーチや戦略立案、広告運用やSEO対策など、越境ECでハードルになりやすい運用面を一括で委託できます。
運用サポートの一環として海外向けSNS運用も行っているため、越境ECでマーケティングを始める方でULSSASの運用を考えているのであればおすすめです。的確な戦略に基づいて、綿密な運用体制を構築できます。
同社のショップづくりのコンセプトは「戦略を元に海外で売れる」であり、越境ECに強いShopifyと同社の積み重ねてきたノウハウを相乗したサイト設計で売れやすいECサイトづくりに役立ちます。SNSを含めた市場調査を丁寧に行うため、ユーザー目線に立ったサイト運用を実現できるのが特徴です。
海外向けの越境ECサイトを運用する際は英語力も重要ですが、単に単語を英訳するだけでは商品の魅力を上手く伝えられません。そこで、商品価値を正しく現地ユーザーに伝えるためのコピーライティングを英文で作成し、購買意欲を促進する運用を行います。
ECマーケティング株式会社
https://www.ecmarketing.co.jp/
ECマーケティングは集客から接客、追客までトータルでサポートするマーケティングソリューションと、ECサイト構築や運用、リニューアル、アプリ開発などを行う開発・制作ソリューションの2つのサービスを提供しています。
市場リサーチを行い、経営目線でどのような集客対策を行わなければならないのかを明確にした上で、ULSSASを含めた最適な手段を提案してもらえます。また、自社でECサイトを運用するとユーザビリティの改善が後回しになりがちですが、同社ではユーザーが使いやすいサイトを随時追及してもらえるのも強みのひとつです。
新規顧客を獲得した後はリピーターの獲得を目指す顧客管理のコンサルティングも行うため、掴んだ顧客を逃さずに囲い込めます。EC戦略の過程でアプリ開発やEC構築が必要になった場合は開発・制作ソリューションを併用することで効果的にフォローできるため、一社で全て完結できるのも嬉しいポイントです。
これまで約400社のサポート実績があり、事前のオンライン無料相談も可能なことから、外部企業への委託を迷っている方でも安心して任せられるでしょう。
フラッグシップ合同会社
フラッグシップはShopifyを活用したECサイトの開発支援に特化しているマーケティング会社です。15ヵ国にまたがる多国籍企業であることから世界中の幅広い国々に導入実績を持っており、越境ECの進出を目指している企業におすすめです。
Shopify PlusでECサイトを構築した実績は日本で最も多く、Shopifyの開発パートナーである「Shopify Expert」には国内で一番最初に選定されました。
Shopifyで制作したサイトを世界中の国にローカライズできるため、進出先が中国やアメリカなどの一般的な国でなくても対応できる可能性が高いでしょう。越境ECサポートに対応している企業が少ない国への進出を検討しているのであれば、覚えておきたいマーケティング会社のひとつです。
自社で開発したShopifyのアプリを活用して納期を短縮することに成功しており、短期間でECサイトを構築できます。同社はクライアントのオフィスに常駐する形で作業を進めるため、最終的には運用支援を受けなくても自社で運用できる体制に持って行けるのが強みです。
社内でULSSASを運用したいものの、越境ECのノウハウに不安がある場合に高い効果を発揮します。
ULSSAS(ウルサス)はこれからのEC運営に取り入れていきたい手法のひとつ
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SNSにおけるユーザーの行動購買プロセスを表したULSSASは、SNS全盛の時代ともいわれる近年のマーケティング手法として大きな注目を集めています。
自社で広告を出稿せずに商品が売れるサイクルが回り続けるため、従来型の概念であるマーケティングファネルなどに比べてコスト削減も容易になり、企業目線ではなく第三者目線の意見を得られることから、顧客の信頼感も高まりやすくなります。
これからのEC運営には、ユーザーが投稿したコンテンツを活用するULSSASを取り入れたマーケティングがより重要になっていくでしょう。ULSSASを実践できる環境を整えて、ぜひ積極的に取り入れていきたい手法のひとつであるといえます。