関税とは|越境ECを行う際に注意すべき点もあわせて解説

openlogi2023年11月8日  
openlogi2021年5月26日

関税とは|越境ECを行う際に注意すべき点もあわせて解説

海外に商品を輸出したり、海外から商品を輸入したりする際に、配送料金とは別に関税という税金がかかることがあります。関税は主に国内の産業を保護する目的で設けられている制度であり、海外から入ってきた商品が自国の商品に比べて安価になりすぎて、輸入品に頼りすぎる状態を是正するために活用されています。

越境ECや海外からの仕入れを行う際は、関税の問題を避けて通ることは難しいでしょう。海外からの輸出入を伴うビジネスを始めるのであれば、あらかじめ関税に関する知識を身につけておくことが大切です。

そこで今回は、関税の基礎知識や具体的な計算方法、越境ECを行う際に押さえておきたいポイントなどについて詳しく解説します。

関税がもつ機能とは

海外へ荷物を発送する時について回るのが関税の存在です。しかし、なぜ関税を支払う必要があるのでしょうか。まずは関税が持つ機能について分かりやすくご紹介します。

機能1:国内の産業を保護

もし自国の商品よりも海外から輸入した商品の価格が圧倒的に安価であれば、一方的に国外から安価な商品を輸入し続ける事例が増加して、国内の産業を発展させるよりも輸入した方が良いと考える人が増えるでしょう。

海外から商品を輸入する際に税金がかかっていないと、自国の商品よりも明らかに安価で品質も同程度の商品が簡単に入ってくる可能性があることから、海外からの輸入に頼りきりになってしまい、国内の産業が衰退するリスクが考えられます

このリスクを回避するために、輸入の際に一定の関税をかけて一方的に輸入品を安価に販売できる状況を阻止し、国内の産業を保護するのが関税の主な目的です。

商品にどの程度の関税をかけるかは国によって大幅に異なっており、同じ商品であっても関税の税率は輸出先によって変動します。この税率は自国の産業との兼ね合いを見極めた上で、国同士の友好関係などの政治的事情も加味して決定されます。

関税には主に「法律に基づく税率」と「条約に基づく税率」の2種類あり、法律のもとに徴収する税率のことを「国定税率」と呼んでいます。日本では「関税定率法」と「関税暫定措置法」という法律で関税に関する詳細な条文が定義されています。

機能2:国の財源の一部

関税の最も大きな目的は国内産業の保護にありますが、関税は国庫収入となることから、国の財源の一部にするという目的も持っています

従来の関税は国の財源として非常に大きなウェイトを占めていましたが、現在ではそれほど大きな割合ではなくなっています。

昔に比べて国家予算が膨大になり、税金の徴収体制が整ったことから関税が全体の国庫収入に占める割合はそれほど大きなものではなくなりました。とはいえ、未だに国の貴重な財源の一部であることには変わりなく、適切に徴収することが重要視されています。

関税が正しく機能しなければ、前述のように国内の産業を保護することはできなくなってしまいます。あくまでも関税の最大の目的は産業の保護であり、正しく関税を徴収することで自国の産業の発展性を維持し、さらに国の財源にとってもプラスになる状況が望ましいといえるでしょう。

支払う側にとっては負担に感じられることも多い関税ですが、自国が他国から守られるためには大切な税金であるといえます。

機能3:アンチ・ダンピング

輸出された商品が輸出元の国で販売されている価格よりも安価に自国に流入し、自国の産業に影響を及ぼすことを「ダンピング」と呼びます。ダンピングが起こると関税による保護だけでは自国の産業保護を達成できない可能性があるため、ダンピングを防止するために「アンチ・ダンピング関税」という関税が追加で課される場合があります。

正常な価格とダンピング価格(不当に安価になっている価格)の差額の範囲内で輸入品に対して割増の関税をかけられる仕組みになっており、WTOでも一定の規則に基づいて認定されている制度です。

WTOの協定では、アンチ・ダンピング関税は「ダンピングによる輸入品が国内に入ってきている事実があること」「ダンピングされた輸入品と同種の商品を製造している国内産業が実害を被っていること」「国内産業が受けた実害が、ダンピングされた輸入品によるものであること」「国内産業の保護の必要性が生じていること」の4点が認められた場合に課せられるとされています。

日本では関税定率法第8条の条文にアンチ・ダンピング関税について記されており、適用の際はこの法律に基づくことが定められています。

関税の課される条件

関税はすべての海外からの輸入品に必ずかけられるというわけではありません。関税が課される条件は、輸入の詳細によって異なります。

輸入の詳細により異なる

関税は各国の関税率表に細かく税率が規定されていますが、一部の商品については無税に設定されていることもあります。例えば日本においては関税定率法で約35%が無税に設定されています。代表的な無税品は羊毛、綿花、鉄鉱石、ゴムタイヤ、写真用フィルム、機械類などが挙げられます。

また、海外から日本に個人輸入する場合は、課税価格が1万円を超えない範囲であれば関税がかからないという規定もあります。しかし、この場合でも同梱されている商品の課税価格が1万円以上であれば関税を支払わなければならないなど、輸入の詳細によって細かく定義づけがされています。

なお、同じ商品を輸入する場合であっても、課税価格が20万円を超えない範囲内であれば簡易税率が適用され、一般税率に比べて関税を簡単に計算できるなどの特例もあります。

関税の仕組みは複雑であり各国によって規定は異なるので、海外に荷物を発送する場合は送り先の国の法律がどのように定義されているかを調べた上で発送する必要があるでしょう。 

関税の計算方法

ここからは、実際に関税を計算する方法について解説します。さまざまなルールがあるので、一つひとつ手順を詳しく見ていきましょう。

手順1:海外の通貨を円に換算する

関税を算出するためには、まず海外の通貨を日本円に換算する必要があります。税関のWebサイトで公開されている「公示レート」を参照すると、外国為替相場のレートに対して適切な調整を施した通貨の換算レートが掲載されているので、換算の際は参考にすると良いでしょう。

実際に換算する際は「商品の価格(海外通貨)×公示レート=商品価格(日本円)」となります。

例えば、米ドルの公示レートが1ドル=108円だったとすると、現地で購入した商品の価格が100ドルの場合は「100ドル×108円=10,800円」が日本における商品価格となります。この価格を元にして、次の手順で申告価格を計算します。

手順2:申告価格の合計額を計算する

商品を海外から輸入する際には、単純に商品の購入価格だけが関税の申告額になるわけではありません。海上運賃や海上保険など、輸入にかかる経費も含めた「CIF(Cost, Insurance and Freight)」と呼ばれる金額が申告価格になります

海上運賃や海上保険も海外通貨で提示されている場合は、この価格についても日本円に換算しなければなりません。仮に海上運賃と海上保険を合計して15ドルかかった場合は、前述のように公示レート1ドル=108円で計算すると「15ドル×108円=1,620円」となります。

つまり、前述の商品価格10,800円とCIF価格の1,620円を合計した「10,800円+1,620円=12,420円」が関税の申告価格です。

手順3:按分を行う

一度に複数種類の商品を輸入する場合は、関税の税率が商品の種類によって異なります。そのため、関税率が高い商品に経費を加算して申告価格を計算してしまうと、関税の総額が不当に高額になってしまいます。

このような場合に、商品の合計金額をそれぞれの商品に対して割り振る「按分」という作業を行います

「商品1種類あたりの価格÷商品の総額×100=商品1種類あたりの経費の割合」を算出し、「商品ごとの価格+(商品1種類あたりに加算する経費×按分した経費の割合)」を求めることで商品1種類あたりのCIF価格を導き出せます。

例えば1,500円、3,000円、5,500円の3種類の商品を輸入した際に、経費の割合は左から順に「15%、30%、55%」となります。

手順4:1,000円未満の金額を切り捨てる

CIF価格は、1,000円未満の金額が出た場合に切り捨てを行います。例えば前述までの計算を行って算出されたCIF価格が15,200円だったとすると、200円が切り捨てられて15,000円が関税を計算する基礎の金額となります。

切り捨てを行わないまま関税の計算に進んでしまうと正確な数値がでなくなってしまうので、この手順を忘れないように注意が必要です。

手順5:関税を算出する

輸入品のそれぞれのCIF価格を算出できたら、商品ごとの関税率を乗じて個々の関税額を算出します。その後、すべての関税額を合計してから100円に満たない端数を切り捨てると、納めなければならない関税の総額が求められます。

例えばCIF価格3,000円で関税率10%の商品A、CIF価格5,000円で関税率5%の商品B、CIF価格10,000円で関税率8%の商品Cがあった時、関税は次のようになります。

商品A:3,000円×10%=300円
商品B:5,000円×5%=250円
商品C:10,000円×8%=800円
商品A+商品B+商品C=300円+250円+800円=1,350円

1,350円の端数50円を切り捨てて、関税は1,300円

個別の関税を算出した段階で端数を切り捨ててしまうと計算結果が変わる可能性があるので、すべての税額を足してから切り捨てるように注意しましょう

 

関税率の種類を解説

一口に「関税」といっても、その種類はさまざまです。それぞれの関税には優先順位が定められており、どの関税が適用されるかによっても税率が大きく異なるので、一つひとつの知識を身につけておくことが大切です。

実行関税率表を使用

「輸入統計品目表」とも呼ばれる関税の一覧表のことで、輸出入の際に取引されるあらゆる品物のHSコード(輸出入統計品目番号)が記されています。

HSコードには世界中の税関において通関業務を行う際に基本となる番号で、「税番」と称されることもあります。実行関税率表にはHSコードが一覧で記載されており、通関の際に何パーセントの関税が適用されるか把握できます。

従来の輸入統計品目標は書籍の形でしか発行されていませんでしたが、現在では税関のホームページに掲載されており、関税率を知りたい時には手軽に調べられる環境も整っています。

HSコードで定義されている品目にはさまざまな種類があるものの、ピンポイントで特定の商品を表すのが難しい場合もあります。その際は「通則」という考え方に基づいてどの関税率を採用するかが決定されるのが一般的です。

HSコードの数は国によっても異なりますが、どの国でも概ね1万品目程度だといわれています。

関税率の詳細

関税には一般税率と簡易税率があり、どちらが適用されるかは一回あたりの輸入品の総額によって決まります。一般税率は20万円を超える場合とされており、ビジネスで輸入を行うのであれば一般税率が適用されるケースが多いでしょう。

輸入品にかかる関税率には複数の種類があり、どの関税率が適用されるのかは優先順位が定められています。実行関税率表を参照するとどの順位で優先されるかも記載されているので、分からなくなった時は参考にすると良いでしょう。

ただし、経済連携協定(EPA)を締結している国から輸入する製品には、EPA税率という個別の関税率が設定されている場合があります。EPA税率が設定されている製品に関しては、優先順位が高い税率と比較してどちらか低い方を適用します。

それでは、優先順位の高い順にどのような関税率があるのかをご紹介します。

基本税率

無税の製品を除いた、すべての製品に対して定められている税率です。基本的にはこの税率が適用されるため、実行関税率表に記載されている税率を参考にして製品ごとに何パーセントの関税がかかるのかを調べる必要があります。

例えば「コーヒー(カフェインを除いていないもの)」は20%、サングラスが6.4%など、同じ製品であっても状態によって細かく分けられています。多くの商品を輸入する場合は関税率を調べるのにまとまった工数がかかる可能性もあるので、あらかじめ準備しておくことが大切です。

特恵税率

特恵税率は開発途上国やそれに準ずる地域の支援を目的として、該当地域を原産とする一部の輸入品に適用される税率のことです。基本税率に比べて料率が低く設定されており、輸出側にとっては多くの国に輸出できるチャンスが広がり、輸入側にとっても安価に輸入が可能となります。

特恵税率を適用するためには、原産地が特恵税率の対象国であることを示す証明書の提出が必要です。「一般特恵制度原産地証明書様式A」という様式が用意されているので、必要事項を記入の上で提出しましょう。

ただし、証明書を提出しなくても輸入品の原産地が明確であると定義されている商品については提出不要です。輸入品の総額が20万円を超えない場合も、一般税率の対象外となるため提出の必要はありません。

暫定税率

「関税暫定措置法」に基づき、輸出入国において特別な事情がある場合に基本税率を訂正する目的で一時的に採用される税率です

一般的に、基本税率は一度定義されると変更されることはありません。しかし、野菜等の生鮮食品をはじめとした一部の商品では、気候変動や国際情勢などの影響で基本税率が実態とかけ離れた税率になってしまうことは十分に起こり得ます。このような状況に対応するために、暫定税率を適用して実態に沿った関税をかけるのです。

暫定税率は期間が定められているため、期限を迎えるタイミングで延長するか打ち切るかが協議されます。需給バランスが十分に整っており、暫定税率を解除しても問題がないと判断されれば、その時点で打ち切られて基本税率に戻ります。

日本においては、数百種類程度の商品に対して暫定税率が適用されているのが実情です。暫定税率が設定されていることによって物価が急激に上昇する事態を防ぎ、ある程度安定的な価格で商品が供給されています。

WTO協定税率

WTO協定税率とは、その名の通りWTOが定めた協定に基づく税率を指しています。WTOの目的は「公正な貿易を行うこと」にあり、公正さが失われる可能性がある取引についてはさまざまな方法で是正措置を実施します。

先進国と開発途上国の二国間が貿易を行う時、国力の差によって先進国が一方的に貿易上有利な立場に立つことがないように、WTOが中心となって世界の標準的な貿易ルールを制定しています。この世界的な協定によって定められている関税が「WTO協定税率」です。

WTOのルールにおいては「自国の中で最も恩恵を受けられる関税を適用する」という原則が取り決められています。例えば、基本税率が15%、WTO協定税率が10%であれば、輸入時に適用される関税率は10%です。ただし、前述のEPA協定による関税率が設定されている場合は、そちらが優先されることになります。

WTOには2017年12月現在で164ヵ国が加盟しており、世界中の多くの国でWTO協定税率が有効になりますが、非加盟国においては効力を発揮しません。非加盟国については、WTO協定税率に関わらず基本税率が適用されます。

特別特恵税率

特別特恵税率は、前述の特恵税率よりもさらに関税率が優遇される措置のことです。国連が定義している後発開発途上国が原産地である輸入品については、原則的に関税が0%になります。

ただし、特別特恵税率を適用した輸入品の割合が増加して国内産業に多大な影響を与える、またはその可能性がある場合には、産業保護を目的として特恵税率や特別特恵税率が停止されることもあります(エスケープ・クローズと呼ぶ)。

特別特恵税率を適用する場合も、特恵関税同様に所定の様式を提出しなければなりません。一部の国や地域では特別特恵税率の対象外となっている国もあるので、あらかじめ特恵適用国一覧を確認しておきましょう。

経済連携協定税率

経済連携協定税率は、少し前にも軽く触れたように、日本と特定の国の間で結ばれたEPAに基づいて決定された関税のことです。EPAを締結している国を原産地としている輸入品は、協定に基づいて関税が減額されたり無税になったりする措置が適用されます。

経済連携協定税率を適用するためには、輸入通関を行う際に輸入品がEPAに該当する原産品であることを証明しなければなりません。そのため、輸出国が発給した原産地証明書、認定輸出者が作成した原産地申告、輸出入者や生産者の作成した原産品申告書のどれかを輸入深刻のタイミングで提出する必要があります。

原産地証明書には有効期限が定められており、最初に発給された日または作成された日から1年間となります。期限が切れると新たな日付で再発給が必要です。

経済連携協定税率は、基本的にEPAを締結している国から直接日本国内に運送されることを想定していますが、第三国を経由して日本に到着する場合は別途手続きが求められます。

簡易税率について知る

関税には、一般税率の他に簡易税率という制度もあります。簡易税率は、一般税率に比べると簡単に計算できるのが特徴です。制度の詳細について詳しく見ていきましょう。

簡易税率とは|課税価格20万以下の場合適用される税率

簡易税率は、輸入した商品の課税価格が20万円以下の場合に適用される税率のことです。関税のパターンが数種類に限定されるという特徴があり、このような輸入を「小口輸入」と呼ぶこともあります。

ただし輸入申告は免除されないので、一般税率と同様に申告が必須となります。薬品や食品のような特定の品目では許可が必要なものもあり、パターンは減少するものの関税の計算方法については一般税率と同じです。

簡易税率のメリット|手続きが一般税率よりも簡単

一般税率を利用して関税を計算する場合は、実行関税率表を参照して10,000種類近くがリストアップされている関税率の中から自社の商品に適したものを探す必要があります。この作業は非常に膨大な工数を必要とする上に、新たな商品の取り扱いを増やすたびに同様の作業を行わなければなりません。

しかし、簡易税率は7つに大別された税区分から適した税率を選ぶだけで関税を計算できるので、関税計算にかかる工数を大幅に削減できます

10,000種類近い品目の中から適切なものを選ぶ作業はある程度専門性も必要になるため、輸入申告のためだけに通関業者に業務を委託する事業者も少なくありません。簡易税率であれば比較的簡単に税率の種類を判別できるので、自社のスタッフだけでも対応できる可能性が高いでしょう。

また、簡易税率を活用して輸入する場合は「特定原産地証明書」などの一部書類の提出が不要になるというメリットもあります。 

簡易税率のデメリット|物によって税率が異なる場合がある

1回の輸入の中で複数の商品が混在する場合は、簡易税率であっても複数種類の税率が適用される可能性があります。複数種類の税率にまたがる場合は、最も高い関税率を全商品に適用して計算する「合算申告」を行わなければならない例が非常に多いといえます

この例では一般税率で計算した場合よりも高額な関税を支払うことになるので、コストが高くなる可能性があるということを覚えておきましょう。

ただし、輸入額が20万円以下だからといって必ずしも簡易税率を適用しなければならないというわけではありません。あえて一般税率を選んで輸入し、品目に応じた料率をかけて関税を算出・納付することも認められているので、自社の輸入の状況に応じて適切な計算方法を選びましょう。

越境EC事業を行う際に注意したいポイント

越境EC事業を行う際は、次のポイントに注意して発送業務を行いましょう。思わぬトラブルを避けるためにも、詳細をよく確認してから物流を整備することが大切です。

ポイント1:関税は基本的にお客様負担

クーリエなど一部の発送方法では関税を発送人支払いにできる場合もありますが、関税は基本的にお客様が負担する決まりになっています。日本郵便のEMSなどでは発送人が配送料を負担、関税は発送人支払いとすることが厳格に定められており、変更はできないので注意が必要です

どうしても関税を発送人が受け持ちたい場合は、そのような運用が叶う運送業者やサービスを探さなければなりません。自社はどのような方針で運用していきたいのか、事前に明らかにしておくことが大切です。

関税がかかる可能性があることについては、事前にお客様に周知を徹底しておくと思わぬトラブルを防止できます。

関税は受取人の支払いが原則ではありますが、すべてのお客様がその規定を認知しているとは限りません。そのため海外に荷物が到着し、お客様のもとへ配送された段階で関税の支払いを拒否されてしまい、荷物が返送されてくる可能性は付き纏います。

注文の際に商品ページや注文ページなどに「受け取りの際に関税の支払いが発生する可能性があります」と記載しておくなど、事前に告知することで認識の相違を防止し、トラブルが発生するリスクを下げられます。

ポイント2:販売したい国ごとに事前確認が必須

関税は同じ商品であっても国によって税率が大きく異なるため、販売したい国ごとにあらかじめ税率を調べておくことが大切です。

1つの国だけを相手に商品を販売するのであればその国の関税だけを調べておけば対応できますが、2ヵ国以上に商品を販売する場合は、お客様の最終的な支払金額が大きく異なる可能性があります。仮に注文ページなどで関税の金額の目安を案内する場合は、国によって正しい税率を記載しておかなければトラブルの原因になるでしょう。

お客さまからの問い合わせが入った際にスムーズに回答できる状況を整えるためにも、お客様に関税の負担を求める場合であっても自社の商品の関税率を把握しておくことは重要です

また、一部の発送オプションなどを使って関税を発送人支払いにする場合は、自社の負担金額が発送先の国によって大幅に異なります。仮に1ヶ月間にまったく同じ商品を2つの国に同じ量だけ発送するとしても、関税率の平均が10%と15%の国では利益に大きく差が出るので、コストを見誤って経営悪化を招かないためにも、正確な税率を押さえておきましょう。

【コラム】関税だけでなく消費税にも注意!

海外へ荷物を発送する際には関税を把握しておくことも重要ですが、消費税も見落としやすい部分なので注意が必要です。関税の支払いが無くても消費税の支払い対象となる場合があるので、詳細を確認しておきましょう。

関税がかからずとも消費税が加算される場合もある

発送先の国で無税に指定されている商品であっても、消費税は別途加算されます。例えば海外から日本に腕時計やその他の時計を輸入した場合、関税の免除の対象となるため関税の支払いは0円となります。

しかし、消費税は日本国内で商品を売買する際に必ずかかる税金なので、2021年4月時点で10%(軽減税率対象であれば8%)の加算が発生します。「関税がかからないのだから、商品価格そのままの金額で購入できる」と安易に考えていると、消費税の加算を忘れて想定外の支払いが生じる可能性があるという点には注意しましょう。

消費税が10%の場合、内国消費税(7.8%)と地方消費税(2.2%)に分かれており、CIF価格と,1,000円未満を切り捨てた関税額の総額に対して内国消費税がかかります。さらに、内国消費税の22/78の金額(100円未満は切り捨て)が地方消費税として加算されます。

軽減税率に指定されている8%の商品の場合は、内国消費税が6.24%、地方消費税が1.76%です。CIF価格と,1,000円未満を切り捨てた関税額の総額に対して内国消費税がかかり、内国消費税の22/78の金額(100円未満は切り捨て)が地方消費税として加算されます。

税金が免除となる16,666円以下のルールは商用利用には適用外

関税は「関税定率法14条18項」に基づいて「個人輸入の場合に商品の価格が1梱包あたり16,666円以下であれば支払いを免除される」というルールがあり、この条件は消費税にも適用されます。そのため、関税の免除の条件に当てはまる場合は消費税もかからないことになり、基本的に無税で商品を輸入できます。

しかし、注意しておきたいのは「あくまでもこの条件が適用されるのは個人利用に限られる」という点です。ビジネスを目的とした輸入の場合は、関税の免除と消費税の免除は輸入金額がいくらであっても適用されません

「16,666円以下の輸入だから、税金はかからない」と勘違いして仕入れを行うと、想定外の税金を支払わなければならなくなって採算が見合わなくなるなどのトラブルが起こる可能性もあります。スムーズな輸入を行うためにも、関税がかかる条件は間違えずに覚えておきましょう。

関税について事前に知識を深めておくことが肝心

越境ECや海外からの仕入れには、常に関税の問題が付き纏います。関税にはさまざまな種類があるため、自社の商品のすべての関税を把握して適切にコストを計算することは、膨大な手間がかかる可能性が高いでしょう。

越境ECを行う際は、物流を外注して発送業務を丸ごと専門業者に任せた方が効率を高められます。関税に関する知識やノウハウを豊富に蓄えたプロが対応するので、難しい手続きを行うことなく海外に荷物を発送できます。

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オープンロジマガジン 編集部

物流プラットフォーム「オープンロジ」のマーケティングメンバーにて編成。物流のことはもちろん、ネットショップやマーケティングのことなど、EC事業者に役に立つ情報を幅広く発信していきます。

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