安全在庫とは|算出方法やメリット・注意点など詳しく解説

2021年1月27日

安全在庫とは|算出方法やメリット・注意点など詳しく解説

適切な在庫管理は、事業を維持し利益を正確に把握するためにも非常に重要なポイントとなります。在庫管理を適切に行う方法の一つとして「安全在庫」に基づいた管理があります。「安全在庫」とは、通常必要な在庫にプラスして、欠品を防ぐために最低限の量を保持しておく在庫管理の考え方です。

今回の記事では、その安全在庫の計算方法からメリット、運用上の注意点まで解説します。

安全在庫の算出方法

安全在庫の計算式

安全在庫とは欠品を防ぐために最低限の必要な在庫数量を示す統計上の数字です。自社の安定在庫は、下記の公式に基づいて計算します。

安全係数×標準偏差×√発注感覚+リードタイム=安全在庫

安全係数

安全係数(安全在庫係数)とは「どれぐらいまでなら欠品を許容できる欠品率に対する数値」です。安全係数の算出はExcelを使って算出が可能で、数式は下記の通りです。

安全係数=NORMSINV(1-欠品許容率)

この「欠品許容率」は、例えば100回注文がトータルで入った場合に、その中で欠品が5回であれば問題ないと考えるとします。その場合は、欠品許容率は5%として計算することができます。欠品許容率は各事業者ごとに決める数値で、安全係数を求めるには先に欠品許容率を決める必要があります。そして欠品許容率が決まれば、下記の表に基づいて安全係数を算出することが可能です。

【欠品許容率=安全係数】

0.1%=3.10
1.0%=2.33
2.0%=2.06
5.0%=1.65
10.0%=1.29
20.0%=0.85

ここで気をつけたいのが、欠品をできるだけ減らそうと欠品許容率を低く見積もると、安全係数の数が大きくなってしまう点です。この安全係数の数が大きくなるに従って、確保すべき在庫数も増加するため、余剰在庫が膨らんでしまいます。

健全な在庫運営のためには、欠品をゼロにするのは現実的ではないので、検討が必要です。

なお一般的にとされる欠品許容率は5%とされています。この安全在庫の数値に大きく関わるだけでなく、実際の事業の運営に関わってくる欠品許容率の数値は、事前に社内でどれぐらいまで許容できるかを十分に摺り合わせすることをオススメします。

標準偏差の設定

安全在庫を算出する際には、商品の需要もあらかじめ考慮する必要があります。しかし常に変動する需要を予測するのは不可能に近いため、商品の需要を算出する際には「標準偏差」という値で設定します。

「標準偏差」とは過去の商品の需要の変動を踏まえた上で、標準値を抽出した数値のことであり、標準偏差は過去の出荷量などを参考にして算出します。実際の計算方法としてはExcelでSTDEV関数を利用すると簡単に算出ができますが、標準偏差はできるだけ多くのデータを元に算出した方が、よりリアルな数値を得ることができるとされています。

リードタイムの設定

リードタイムとは、商品を発注してから納品にかかるまでの時間を指す言葉で、別名で「調達時間」という言葉で使われることもあります。リードタイムのカウント方法は、例えば2月1日に商品を発注した後、2月10日に商品が納品された場合は、リードタイムは9日としてカウントされます。

安全在庫を算出する際には、リードタイムとあわせて「発注間隔」も必要です。「発注間隔」とは一度発注した後に再度同じ商品を発注するまでの期間のことを指します。

安全在庫の算出方法は、発注間隔+リードタイムの平方根(√)の値が必要で、この値もExcelのSQRT関数を使うことで簡単に出すことができます。

安全在庫を知るメリット

メリット1:余剰在庫を抱えるリスクが軽減できる

EC事業などを運営していると、販売機会の損失を恐れから在庫量を多く抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、必要以上に在庫を抱えてしまうことで保管スペースを圧迫するだけでなく、外部倉庫を借りている場合はは保管料の膨らんでしまいます。

そして忘れてはいけないのは、「商品は在庫として仕入れた瞬間から、劣化が始まるものである」ということです。例え腐らない商品であっても、倉庫内でずっと保管している状態ですと湿気やほこりなどが原因で商品状態が悪くなってしまいます。

その結果、商品が不良在庫として放置された結果、最終的に商品として販売できないため廃棄をしなければならないという事態を招くことも考えられます。

多くの商品が倉庫内に溢れていることで、物流作業にも影響することも懸念されます。倉庫の中が余剰在庫であふれて整理整頓されていない状態ですと、スムーズな出荷作業ができない要因になる可能性があります。

安全在庫を知ることで在庫の無駄削減だけでなく、余剰在庫を抱えるリスクを軽減が期待できます。結果的に、物流作業の作業の効率化・生産能力の拡大にも繋げることができるでしょう。

メリット2:キャッシュフロー改善に繋がる

多くの在庫を倉庫に保管しているのは販売機会損失を防ぐことができますが、実際に保管している商品が売れなければ、価値を生まない荷物になります。

商品を多く在庫として抱えるということは、商品購入のために多くのコストが発生する状態です。賃借対照表に計上される際には在庫も資産と扱われますが、実際に自由に動かせる現金としての資産ありません。そのため過剰在庫を抱えるということは、キャッシュフローという観点で見ても健全とは言い難い状況といえます。万が一、在庫が売り切れなかったことで在庫処分のためにセール販売を行った結果、利益がほぼ残らなければ、損失に繋がる可能性もあります。

事業を運営している上で、いくら在庫があっても現金がゼロになると倒産します。したがって、キャッシュフローの改善は事業を継続していく上で大事なポイントになるといえます。

自社に必要な安全在庫を知り、在庫と発注のコントロールを行うことで、資金の無駄遣い防止だけでなく、保管費用などの固定コストの削減などのキャッシュフローの改善につなげることができるのです。

メリット3:販売機会損失の防止

余剰在庫が心配で極端に在庫を減らしてしまうと、欠品による販売機会の損失が発生する可能性が高まります。商品の注文が入ってから在庫を発注する場合は、入荷までのリードタイムがかかるため、お客様への納品が遅れます。その結果、お客様の顧客満足度に大きく影響し、事業運営にも大きな影響を与える可能性があるのです。

安全在庫で適切な在庫をコントロールを行い、最低限多少の変動があっても欠品しない程度の在庫を保持することで、販売機会の損失を防ぎ、お客様に素早くお届けすることが望めます。

それだけでなく、適切な在庫をキープしながらお客様へ販売を続けていくことで、売上が安定し、在庫の減り具合や売れ筋商品などのデータが蓄積されていきます。これらを参考にすることで今後の売れ行きを予想し、新たな販売戦略を立てることも可能になるでしょう。適切な在庫管理を行うことでよい循環を作り、売上が拡大していくきっかけの一つとなるかもしれません。

安全在庫の注意点

欠品リスクを完全に防げるものではない

安全在庫の注意点として「安全在庫は欠品リスクを完全に防げるものではない」ということを理解しておく必要があります。

安全在庫はあくまでも、欠品を防ぐために最低限の量を保持しておくための統計学上の数値です。そのため、予想できない要因や突発的な事情が発生し、商品の需要が急増すれば在庫が欠品することも考えられます。安全在庫を算出する際は、明確な根拠を持ったの過去データに基づかないと、より欠品のリスクは高くなる可能性があるといえるのです。

安全在庫はできるだけ欠品しないように確率を小さく設定する数値です。安全在庫を知っておくことで欠品リスクを軽減することはできますが、完全に防げるものではありません。また欠品許容率をスタッフ間などで共有しておくことで、リスクの共通認識ができるだけでなく、慌てずに対応することにも繋がるでしょう。

標準偏差は在庫の使用量が安定していることが前提

安全在庫を算出するときに必要な標準偏差は、季節性があるものなど需要の増減が激しい商品の場合、適切な標準偏差は算出できません。よって、標準偏差は在庫の使用量が安定していることが前提となります。

そもそも、ある季節や行事の時のみに販売数が一時的に増加する商品であれば、その期間の例年のデータを元に一時的に在庫数を多く確保して、短期的で一気に売り切る形になるため、安全在庫を算出しても役に立たないものであり必要性も無いといえるでしょう。

反対に季節性がある商品などの適正在庫を算出するには、周期性と日々のデータの蓄積が非常に重要となります。年間を通じて安定した販売量がある商品に対してのみ安全在庫は適用できる数値となりますので、すべての商品には適用されないことを理解しておきましょう。

計算上の安全在庫は目安として活用する

計算によって安全在庫が出たとしても、あくまでも目安であるということは忘れないようにしましょう。安全在庫で算出した数値は、過去のデータに基づいて導き出したものとなります。事業を運営する上で、その時々の社会情勢やトレンドの移り変わりなども加味しながら、在庫管理を行うのは安全在庫を算出していても変わりません。

安全在庫による運用が正しく行われているかどうかは、欠品が以前より減っていれば問題ないと考えるべきです。しかしそうでない場合は原因を究明して適切な値を再検討が必要でしょう。

また、当初設定したのと同じ安全在庫の数値で運営を続けるのも危険だといえます。事業を運営しながら、常に定期的にデータを最適化し続けることが必要です。

自社に最適な在庫管理を実現するためにも、安全在庫はあくまでも欠品率を下げ、過剰在庫も削減できる統計学用の目安という気持ちで活用することが大切です。

【コラム】安全在庫と適正在庫の相違点

安全在庫と適正在庫は目的が異なる

安全在庫と似ている言葉として「適正在庫」という概念があります。二つの概念の違いは目的が異なるということです。

安全在庫は欠品を避けることを目的としていますが、適正在庫は利益の最大化を目指した適切な在庫数を確保することが目的とされています。

適正在庫は欠品を避けることはもちろんのこと、過剰在庫にならないことも一緒に検討します。そのため適正在庫の算出時には在庫の最低値と最大値も設定が必要です。そして最低値は欠品を出さないギリギリまで在庫数を設定します。

適正在庫の算出方法は、安全在庫にプラスして「発注して次に発注するまでの間にどれぐらい在庫が消費されたのか」を表す数値であるサイクル在庫も加味します。さらに適正在庫が保てているかどうかを判断するために在庫の回転率と回転期間を算出し、在庫が入れ替わるまでの期間も非常に重要な基準となります。

適正在庫を保つためのポイントは在庫数の減少だけでなく、在庫補充の方法の見直しやリードタイムの短縮、商品需要の予測などが上げられます。これらを絶えず行うためには、管理システムやAIなどを利用した詳細データの蓄積が非常に重要です。

安全在庫と比べてより一歩踏み込んだ在庫管理方法であるのが適正在庫ですが、正しく運用すれば欠品を避けることだけでなく、利益の最大化による更なるキャッシュフローの改善を期待することができるでしょう。

安全在庫の利点と利用方法を正しく知り自社業務に生かそう

安全在庫をきちんと理解して活用することで、EC事業を円滑に運用することができるなど、さまざまなメリットを得ることができます。しかし安全在庫は、欠品を完全に防げるものではなく、引き続き常にお客様の動向などを追いかける必要があるので注意が必要です。

安全在庫を設定するためには、さまざまな業務体制を見直してみることも重要です。効率化できる部分は改善しながら、より一層運営しやすい業務体制を構築していきましょう。

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