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複数に分散されている物流拠点を集約することによって、倉庫運用を行う上でさまざまなメリットが期待できます。しかしいくつかのデメリットもあるため、両方の側面を十分に理解した上で集約を検討することが重要です。
物流拠点の集約を検討しているものの、自社が集約を選択すべきなのか分からずにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、物流拠点を集約するメリットやデメリット、集約先を選定する際のポイントなどについて分かりやすくご紹介します。
物流拠点集約のメリット
物流拠点を集約することによって、次のようなメリットがあります。
メリット1:コスト削減につながる
従来は複数拠点を運用する方が環境の変化に対して臨機応変な対応ができるため、コストを削減できると考えられていました。急な輸送ルートの変更や、ある1拠点で発生したトラブルの影響が全体に波及しにくくなるといったメリットがあるためです。
しかし、1つの拠点に集約することによって人件費や設備投資にかかる費用を大幅に削減できることから、近年では拠点を集約した方がコストを抑えられるという考え方が一般的になってきています。これまで多くの物流拠点を所有していた事業者が拠点の集約を図るようになったことで、首都圏においては大型の物流拠点が急速に需要を伸ばしています。
メリット2:転送が不要になり配送効率が上がる
物流拠点を集約することによって、転送が不要になり配送効率が向上するというメリットもあります。物流拠点が複数あると、効率的に在庫を捌くためには在庫がない拠点に対して在庫を抱えている倉庫から転送しなければなりません。拠点間が遠ければ転送には時間がかかりますし、転送のために走らせるトラックの人件費や燃料費もかかります。
しかし、物流拠点を集約すれば在庫は特定の拠点に集中するため基本的に転送不要になります。これまで張り巡らせていたさまざまな拠点間の複雑な転送ルートがなくなることから、配送効率は大きく向上するでしょう。
一旦荷物を他の拠点に転送してからあらためて配送先へと運ぶ必要がなくなり、集約した拠点から直接出荷できるため、無駄な手間とコストの削減が期待できます。
メリット3:在庫状況の把握がしやすい
在庫状況がを把握しやすいという点も、物流拠点を集約するメリットのひとつです。
複数の物流拠点にまたがる在庫は、全体を俯瞰することが難しくなります。それぞれの拠点に少しずつ在庫が保管されている状態で物流を運用すると、本来は他の拠点に在庫が残っているのに新たに商品を発注してしまい、古くなった在庫が消費期限を過ぎて廃棄対象になってしまうリスクは増大します。
しかし、あらかじめ物流拠点を集約しておけば在庫数を押さえておく拠点数が限られるため、物流全体の在庫数を可視化しやすくなります。例えば5拠点の在庫全てを把握する労力と、1拠点の在庫を把握する労力では、後者の方が圧倒的に小さいことをお分かりいただけるでしょう。
在庫状況を可視化できればスムーズに物流業務を運用できるようになるだけでなく、過剰発注による廃棄リスクを軽減し、効率的な倉庫運用も可能になります。
物流拠点集約のデメリット
物流拠点にはさまざまなメリットがありますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。双方の側面を知った上で、物流拠点の集約を検討することが大切です。
デメリット1:集約拠点によりリードタイムが却って長くなる
物流拠点を集約することによって拠点から納品先までの距離が長くなると、リードタイムがかえって長くなってしまう可能性があります。
配送に時間がかかっても問題がない商品を取り扱っているのであれば大きなデメリットにはならないかもしれません。しかし、食品などのリードタイムが延びると大きな悪影響を及ぼす可能性がある商品については、拠点の集約が必ずしもメリットになるとは限らないことを覚えておきましょう。
また、リードタイムに縛られにくい品質の商品であっても、納品先の都合によってはリードタイムの縮小が求められるケースもあります。拠点を集約するメリットとリードタイムが延びるデメリットのバランスを慎重に検討して、物流拠点を集約するかどうか決めることが大切です。
デメリット2:リスク分散が困難
1箇所の物流拠点だけで物流を運用すると、トラブルが起こった際にリスク分散が困難になるというデメリットも考えられます。
複数拠点を運用していれば、仮にどこか1つの物流拠点でトラブルが起こっても他の拠点が配送をカバーするなど、迅速なバックアップ体制を構築することが可能です。しかし、物流拠点が1つしかない場合はその拠点がトラブルに見舞われるとバックアップする手段がありません。
例えば不慮の災害で物流拠点の機能が停止してしまうと業務再開までに長い時間がかかり、経営に大きな打撃を与えるリスクがあります。BCP対策を考慮すると、物流拠点の集約にはデメリットの側面も大きいといえます。
デメリット3:コスト負担が上がる可能性
複数拠点を1つの拠点に集約することによって、在庫管理の費用や倉庫の作業員に支払う人件費、設備投資費用などは削減できます。しかし、これらの費用を削減できても配送費の増加が上回れば結果的に全体のコスト負担は増加します。
一般的に、物流拠点の集約によって納品先までの距離が遠くなるとトラックドライバーに支払う人件費や燃料費などの配送コストも増加します。そのため、物流拠点の集約によって削減できるコストと増加するコストを事前に調査した上で、物流拠点を集約した方が自社にとってコスト削減効果が高いのかどうかを明確にすることが重要です。
前述のリードタイムが延びるなどのデメリットもあるため、物流拠点の集約を検討する際は、さまざまなメリットとデメリットを総合的に考慮することが求められます。
物流拠点の集約先を選定する際のポイント
物流拠点の集約先を選定する際は、次の2つのポイントを押さえておくことが大切です。
ポイント1:新たな物流拠点の契約面積や立地の条件は合っているか
新たに物流拠点を構築するにあたって、契約面積や立地条件が自社の物流に適しているかどうかを十分に確かめておく必要があります。
当たり前のことではありますが、複数拠点を1つに集約すると保管しなければならない在庫数は大幅な増加が見込まれます。そのため、従来の拠点よりも大型の倉庫を契約する必要があるといえるでしょう。
また、立地条件も重要なポイントです。これまでよりも納品先から遠い倉庫を選ぶと、配送リードタイムが大幅に延びたり配送費が増加したりする可能性があります。首都圏など物流の中心地に近づくほど賃貸料は上がる傾向にありますが、利便性とコストの双方を考慮して自社に合った立地の拠点を選ぶことが大切です。
ポイント2:拠点集約によるコスト負担は適切か
前述の「デメリット3:コスト負担が上がる可能性」でもお伝えした通り、条件次第では物流拠点を集約することによってコスト負担が増加する可能性もあります。そのため、拠点の集約によるコスト負担は適切かどうかを十分に検討してから集約先を選定しなければなりません。
もちろん、コスト負担が多少増加したとしても倉庫の運用効率などのメリットが上回るのであれば拠点集約を選択した方が良い可能性もあります。倉庫運用の現状や支払っているコストなど、さまざまな要素を明らかにした上で拠点を集約するかどうかを決定しましょう。
物流サービス提供企業をご紹介
物流拠点の集約を図るなら、物流サービスを提供している企業への外注を検討するのがおすすめです。ここでは、代表的な3つの物流サービス提供企業をご紹介します。
オープンロジ
オープンロジは、シンプルで使い勝手の良い物流アウトソーシングのプラットフォームです。手間のかかるさまざまな物流業務をワンストップで提供し、お客様の物流業務を自動化して基幹業務に集中できるようサポートします。もちろん全ての物流業務を一括でアウトソーシングするだけでなく、一部の物流業務を代行することも可能です。
出庫指示をはじめとした日々の物流業務は独自開発のWMSから指示するだけで完結するため、これまで物流業務に割いていたリソースを大幅に削減できます。
初期費用やシステム利用料などの固定費用は0円で商品1点から倉庫を利用できる完全従量課金制を採用しているため、事業を開始したばかりでコストを抑えたいとお考えの方でも気軽にお使いいただけます。
富士ロジテックホールディングス
富士ロジテックホールディングスは、「物流・商流・情報のオルガナイザー(構築者)」としてさまざまな物流サービスを提供しています。
従来のような倉庫サービスや運輸サービスだけでなく、近年注目を集めている3PLやSCMといった物流の新しい考え方も積極的に取り入れながら、クライアントのニーズに合わせた柔軟なワンストップサービスの提供が可能です。
在庫管理をはじめとしたサプライチェーン全体を一元管理するための基幹システムも開発しており、あらかじめ統一された状態で開発されたプラットフォームをクライアントの業務に即した形でカスタマイズしながら運用しやすい業務フローを整備できます。
ECサイト事業者向けの通販物流なども扱っており、コンサルティングを含めて物流全般の幅広い悩みを相談できるのが魅力です。
トミーズコーポレーション
トミーズコーポレーションは、アパレル物流に特化した物流サービスを提供しています。入庫保管や発送代行などの一般的な物流会社でも提供可能なサービスだけでなく、検品・検針やX線検査、補修といったアパレル物流ならではの物流加工サービスや、魅力的な商品紹介には必要不可欠な撮影業務など、幅広い業務をアウトソーシングできます。
中には持ち込みのデザインをプリントして加工し、そのまま発送まで完遂するプリントサービスなども行っているため、自社でデザインのみ行って商品の製造から発送までは物流会社に任せたいという方にもおすすめです。
通常のワンストップサービスだけでは不足するアパレルならではの事業も含み、クライアントのニーズに合わせて1社だけでアパレル物流の全てを完結できるのが強みといえます。
物流拠点の集約場所はポイントを抑えて選定することが大切
複数の物流拠点を1つの拠点に集約することによって、人件費や設備投資費用などのコスト削減を図るとともに、配送効率の向上、在庫管理の簡易化が期待できます。
一方で、集約先として選定した物流拠点によっては納品先から距離が遠くなり、配送リードタイムが延びてしまうことも考えられます。クライアントの要望や扱っている商品の種類によっては重大なデメリットになり得るため、自社にとって集約が適切かどうかをしっかりと見極めてから集約するかどうか決めることをおすすめします。
集約先を選定する際は、契約面積や立地などの諸条件もよく確認しましょう。また、人件費や設備投資費用は削減できても配送費が増加する可能性もあるため、コストのバランスを注視することも大切です。