ECサイトを構築する際に避けられないのが費用面の問題です。少しでもコストを抑えて安価に構築したいけれど、機能にも妥協せず運用しやすいECサイトを作りたいと考えている方は多いことでしょう。
ECサイトにはさまざまな構築方法があり予算感も選ぶ方法によって大きく異なることから、自社に合った方法を選ぶことが大切です。そこで今回はECサイトの構築にかかる費用を方法別に解説し、メリットやデメリットなども詳しくご紹介します。
ASP
あらかじめ事業者側がサービスを作り込んだ状態でユーザーにECサイトの機能を提供するのがASPの特徴です。低コストながらカート機能や決済機能などのECサイトの運営に必要な基本機能は用意されているので、小規模事業者や扱うアイテム数がそれほど多くない方にとっては扱いやすいでしょう。
事業者側にIDやパスワードを発行してもらい、サービスにログインして利用する形が一般的です。既に用意されたサービスを利用する形式なのでカスタマイズ性は高くありませんが、導入から比較的短期で利用を開始できるのがメリットです。
Shopify
Shopifyはカナダ発のASPサービスで、世界的にもシェアNo.1を誇る人気の高さが特徴です。世界175ヶ国で利用されており、これまでShopifyを通じて商品が購入された金額は7兆円を超えるともいわれています。
日本に参入したのは2017年からとまだそれほど日が経っていないものの、既に多くの事業者が自社のECサイトの構築に利用しておりノウハウも十分といえるでしょう。
100種類以上の豊富なテンプレートの中から選択するだけで簡単にデザイン性が高いECサイトを制作できるので、HTMLの知識がない初心者の方にもおすすめです。機能のカスタマイズ性も高く、2,200種を超えるアプリの中から自社に必要な機能を手軽に実装できる利便性の高さも支持を得ている理由といえます。
ベーシックプランで1ヶ月あたり29ドルから利用できるコストパフォーマンスの高さが魅力であり、越境ECにも対応しているサービスとしては非常に安価に利用できるASPです。日本円に換算すると月3,000円程度の予算感で利用したい方には適しています。79ドルからのスタンダードプランもあるので、必要に応じて移行を検討すると良いでしょう。
配送サービスも国内外の大手業者と提携していることから、現在は国内のみの事業展開であってもいずれは海外進出を考えているという方は、Shopifyを選んでおくとスムーズに越境ECを開始できます。
また、世界中の決済方法に対応しているのもポイントのひとつです。日本国内ではクレジットカードや代引きのほかネット決済の「PayPal」なども利用可能です。
ただし、一部のサービスには英語が残っているという部分には注意が必要です。サポート対応は純国産のサービスに比べるとやや手薄な側面もあります。
BASE
BASEは2012年にサービスインしたECサイトを製作できるASPで、初期費用や月額費用がかからないためコストを抑えた運用が可能です。日本国内では多くの事業者から選ばれているサービスであり、ECサイトを開設するだけなら利用料は0円なのが嬉しいポイントといえます。
テンプレートも数多く用意されているので、HTMLの専門知識がない方でも簡単にお洒落なサイトを構築できるのが魅力です。無料のものからプロが制作した有料のものまで幅広く取り揃えられており、高クオリティなテンプレートを使いたい方の要望にも応えています。
HTMLの知識があれば自由にカスタマイズも可能なことから、初心者~中級者向けのサービスといえるでしょう。「Apps」を利用すると自由かつ手軽に機能を追加できるため、自社に必要な機能を揃えて利便性を高められるのも特徴のひとつです。
一方で、販売手数料が他社サービスに比べると比較的割高であるというデメリットもあります。クレジットカードを利用して決済する場合は「販売手数料3%+決済手数料3.6%+40円」の手数料がかかるので、毎月の手数料を抑えたいという方はBASE以外のASPの方が向いているケースもあるかもしれません。
また、Appsはすべて無料というわけではなく、制作したECサイトのBASEのロゴを非表示にしたり不正決済保証を追加したりする場合は有料購入になります。
カラーミーショップ
カラーミーショップはGMOペパボ株式会社が運営するASPで、2005年に提供が開始されたASPの中では比較的老舗のサービスです。これまで4万4,000店舗を超えるショップがカラーミーショップで制作されており、多くのノウハウを蓄積しています。
同ASPの最大の特徴はユーザーの利用継続率の高さで、契約をスタートしたユーザーの約6割が3年以上継続して利用し続けています。利用者からの評価も高く、ショップのジャンルや業種を問わず多くのユーザーに愛されているといえるでしょう。
HTMLテンプレートも用意されていますが、同社はWordPressの公式プラグインを提供しているのも特筆すべき点といえます。WordPress上でプラグインをインストールするだけでカラーミーショップに登録済みの商品情報を参照してWordPress上にも商品ページを生成してくれる優れものです。
ただし一部のプランでは決済画面のデザインが自由にカスタマイズできなかったりPHPファイルのアップロードやSSH接続に対応していなかったりと、HTMLを利用して自由なデザインを実現したい方にはあまり向いていません。
総合すると「知識がなくても使いやすいECサイトを構築したい初心者向けのASP」といえるでしょう。
料金プランは「エコノミー」「レギュラー」「ラージ」の3種類から選択できるようになっています。エコノミーは月額834円から使えるリーズナブルなプランなので、まずはECサイトを開設してみたいという方におすすめです。
一番人気のレギュラープランは月額3,000円で、ディスク容量や登録画像数、フリーページ数がエコノミーに比べてアップしています。ラージプランはディスク容量が100GB用意されており、大量の画像を扱う事業者向けです。
STORES
STORESはヘイ株式会社が提供するASPで、初心者でも直感的にECサイトを開設できるのが魅力のサービスです。管理画面が見やすく最適化されており、パソコンからでもスマートフォンからでも理想的なデザインを実装できます。
専門的な知識は不要で利便性の高いECショップを製作できることはもちろん、新規導入の際は専門の担当者が相談に乗ってくれるので、自社にとって最適な導入方法を提案してもらえるのも安心です。
しかし、HTMLの編集に対応していないためデザインを自由にカスタマイズしたい場合は、他のサービスを選んだ方が便利に使える可能性もあります。一部の機能はスタンダードプランでしか利用できないものもあるので、事前に自社に必要な機能を確認しておきましょう。
STORESはフリープランとスタンダードプランの2種類が用意されており、フリープランは初期費用と月額費用ともに無料で販売手数料は5%です。スタンダードプランは月額費用が1,980円かかる代わりに決済手数料が3.6%なので、販売額が大きい事業者にとってはスタンダードプランを選ぶとお得に利用できるでしょう。
MakeShop
MakeShopはネットショップ・ECサイト構築サービスにおいて「全店舗総流通額」のカテゴリーで9年連続業界No.1(2021年3月時点)を達成しているASPです。
販売手数料が0%に設定されているのが特徴で、月々の販売額がいくらになっても追加の支払いは発生しません。販売額が大きい事業者ほど手数料の負担は重くなるので、どれだけ販売しても費用がかからないというのは嬉しいポイントといえます。
機能数は650以上、全稼働店舗会員数は4,400万人を突破しており、日本国内の3人に1人はMakeShopを利用しているなど多くの人に選ばれているサービスです。Instagramショッピング機能などSNS特有の機能と連携できるので、効果的に集客できるのも魅力的です。
サポート形式が豊富に用意されており、電話、メール、オンライン掲示板等の中から状況に応じて使い分けられるのでスムーズな運営の助けとなってくれるでしょう。
料金プランは「プレミアムショッププラン(初期費用10,000円・月額10,000円/税抜)」と「MakeShopエンタープライズ(初期費用100,000円・月額50,000円/税抜)」の2種類で、それぞれ取り扱える商品数が異なります。別途開発費用が必要になりますが、MakeShopエンタープライズではカスタマイズにも対応しています。
多機能でコスト面がやや高めなので、完全な初心者が利用すると少し持て余してしまうかもしれません。ECサイトの運営にやや慣れて販売額が大きくなりつつある中級者が選ぶのにおすすめのサービスといえるでしょう。
ECモール
ECモールは「ECサイトの商店街」のようなイメージで、企業が運営しているプラットフォームに事業者が出店して商品を販売するビジネススタイルのことです。ECモールに出店する際はモール側のプラットフォームにある程度合わせたページデザインになるケースが多く、サイト制作ツールがあらかじめ用意されている場合もあります。
モール自体の知名度を活かした集客力の高さが最大のメリットで、認知度がそれほど高くない小規模事業者やスタートアップ企業であっても訪問者を集めやすいので、出店してすぐ売上を立てられる可能性もあります。販売額に応じて所定の販売手数料を支払って利用する形式が一般的です。
Amazon
https://www.amazon.co.jp/ref=nav_ya_signin?
Amazonは世界的に有名なECモールで、国内外で圧倒的な利用者数を誇ります。日本国内だけでも2019年時点で約1兆7,000億円の売上を記録しており、一大市場を築き上げているモールといえるでしょう。
Amazonの魅力は「マーケットプレイス」というプラットフォームを通じて事業者が手軽に出品できる点にもあります。一般的なECモールでは出店者が出店登録を行ってショップページを準備した上で商品登録を行う必要がありますが、マーケットプレイスでは出店者情報を登録すれば販売価格や在庫数を登録するだけですぐに商品を出品できます。
まだ開業したばかりで集客力が心もとない事業者であっても一定の集客を見込めるでしょう。FBAというオプションのフルフィルメントサービスを利用するとカスタマーサポートや物流業務を委託できるのもメリットです。
一方で、競合が多く価格競争に巻き込まれやすかったり、商品のカテゴリーによっては複数種類の販売手数料がかかったりといったデメリットもあります。
「大口出品」と「小口出品」の2種類のプランが用意されていますが、企業がビジネス目的で出品するのであれば大口出品を選択するのが一般的です。月額費用は4,900円で、商品のカテゴリーに応じた販売手数料を加えて支払います。
楽天
楽天株式会社が運営する楽天市場は、会員数が1億IDを超えており国内随一の利用者数を誇るECモールです。2020年の流通総額は楽天全体で4.5兆円と前年比20%の伸び率を記録し、楽天市場だけでも3兆円を突破するなど右肩上がりの成長を続けています。国内の知名度は非常に高く、「ECモールといえばAmazonか楽天」と答える方も多いでしょう。
ECモールの他にもクレジットカードや電子書籍サービス、旅行予約サイト、キャリア通信事業などさまざまなサービスを展開しており、すべてのサービスで共通のポイントシステムを採用することによって顧客を囲い込む取り組みを実施しているのも特徴です。
楽天市場の出店プランは「スタンダードプラン」「がんばれ!プラン」「メガショッププラン」の3種類が設けられています。プランによる違いは月額費用やシステム手数料の料率、登録可能商品数、画像登録容量などが挙げられます。
固定費用の支払いは6ヶ月に1回の年間2回または年間一括払いになりますが、月額費用になおすとスタンダードプランは月額50,000円、がんばれ!プランが月額19,500円、メガショッププランは月額100,000円です。この他に販売額とプランに応じたシステム手数料がかかるので、他のECモールに比べるとコストはやや高めに感じられるかもしれません。
また、楽天ペイなどのオプションサービスを利用するとさらに別途手数料が発生するので、集客力が魅力な反面、どの範囲でサービスを利用するかは慎重に検討する必要があるといえます。
Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングはAmazonや楽天と並んで高い集客力を誇るECモールで、近年著しく成長を続けています。「出店料」「月額費用」「販売ロイヤリティー」が0円であることも手伝って、出店数が非常に多いのも特徴です。2019年3月時点で出店数は90万店舗にも迫る勢いであるといわれており、他のモールと比較しても飛びぬけて多くの事業者が出店しています。
楽天同様キャンペーンに力を入れているECモールで「5の付く日」には5%ポイント還元キャンペーンを実施したり、最近ではモバイル決済サービスのPayPayと提携したキャンペーンも積極的に展開しています。
商品の仕入れや運用にかかわる人件費以外は基本的にコストがかからないため、少しでもランニングコストを抑えて運営したい事業者には向いているECモールです。特に事業を開始したばかりの企業はキャッシュフローが十分でないケースも多く、月額費用の負担は重くなりがちなので「毎月必ず支払わなければならない費用が発生しない」というのは利用しやすい部分でしょう。
ただし、全ストアに対して一律で所定のストアポイント原資、キャンペーン原資、アフィリエイトパートナー報酬原資、アフィリエイト手数料の負担を求められる点には注意が必要です。
出店料や月額費用がかからないので、プランなどは特に設定されていません。Yahoo!ショッピングでは店舗ページに自社サイトのURLを自由に設置できるので、自社のブランディングにも利用できるのが便利なポイントです。
au PAYマーケット
auコマース&ライフ株式会社とKDDI株式会社が共同運営するau PAY マーケットは、2017年からサービスを開始した比較的新しいECモールです。
かつては「DeNAショッピング」「auショッピングモール」としてそれぞれ運営していたECモールが合併して1つになり、「au Wowma!」として2年ほど運営してから2019年にau PAYマーケットに改名しました。
auのキャリア通信サービスをはじめとしたKDDIグループのサービスを契約するユーザーに訴求できるのが特徴です。ショッピング自体はKDDIグループのサービス契約者に限らず、IDを無料登録すれば誰でも楽しめます。
Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどと比べると出店数はそれほど多くありませんが、伸びしろは大きいECモールであるといえるでしょう。
越境ECを検討しているのであれば、中国や台湾市場に商品を販売できる「越境サイト販売プログラム」を利用できるのでおすすめです。ただし、全般的な集客力については前述の3つのモールと比べるとやや見劣りする面もあります。
「シンプル出店プラン」と「コミコミ出店プラン」の2種類のプランが用意されており、シンプル出店プランでは決済システムを自分で用意しなければなりませんが、手数料が割安になるという特徴があります。
コミコミ出店プランはシステム手数料が成約手数料の中に最初から含まれている分かりやすさが特徴です。月額費用は4,800円で入会金や決済導入費用は0円、手数料率は売上額に応じて4.5~9.0%の範囲で変動します。
パッケージ
パッケージは「基本機能がある程度揃った状態でパッケージ化されているソフトウェア」のことです。カスタマイズ性が高く、必要に応じて自社独自の機能を実装できるのが特徴といえるでしょう。ASPに比べると自由度が高く、フルスクラッチに比べるとコストが安いという両者の中間の立ち位置といえます。
ecbeing
ecbeingはパッケージシェア12年連続No.1が特徴で、支援実績も豊富なユーザーに寄り添ったECサイトの構築を叶えます。創業から34年と同業の中では歴史が長く、積み上げてきたノウハウをもとに安定した支援を行ってくれるので運用までの準備も二人三脚で進められるでしょう。
国内最大級の400人以上のエンジニアを抱えており、カスタマイズにもスピーディーに対応できるのは魅力といえます。単にECサイトの機能を用意するだけでなく集客を見越したデータ分析などのマーケティング支援も行っており、ECサイトの構築から集客まで一気通貫で任せられるのも嬉しいポイントです。
導入費用は公開されていないので、導入を検討の際は問い合わせが必要です。小規模事業者様よりは中規模事業者様向けで、ある程度EC事業が軌道に乗って売上が拡大してきたASP利用者が乗り換えを検討するのにもおすすめです。
Orange EC
EC-ORANGEは株式会社エスキュービズムが提供するパッケージで、BtoBやBtoCの種別を問わずECサイトを構築できる柔軟性が魅力です。オムニチャネルなど独自性の高いECサイトも実現できるので、他社との差別化を図りたい方におすすめです。
構築の準備段階から実運用まで一貫してサポートしてもらえることから、専門知識がなくても安心して導入準備を進められる環境が整っています。アクセス負荷が大きくても耐えられる強固なプラットフォームも特徴で、月間の売上が数十億以上の大規模なECサイトでも安定した運用が叶うという性質上、大規模事業者様に向いているといえるでしょう。
初期費用や月額費用は開発規模や利用するサーバーに応じて異なるので、Webサイト上では公開されていません。詳細が気になる方は問い合わせが必要になります。ある程度まとまった費用がかかることも想定されるので、コストよりも丁寧なサポートや安定性を重視する方に適しています。
規模がそれほど大きくない事業者様や、システム導入はコストの安さを重視するという場合は他のシステムを検討した方が良いケースもあるかもしれません。
在庫管理システムや会計システムなど外部サービスとの連携実績も豊富で、VRコマースなどの近年広がりつつある最新のIT技術を駆使したビジネススタイルにも対応しています。
ebisumart
ebisumartはパッケージ型のクラウドコマースプラットフォームで、国内の有名企業を含む650サイト以上の導入実績があります。カート機能や在庫管理機能をはじめとしたECサイトに必要不可欠な基本機能の用意はもちろん、BtoCにもBtoBにも対応する拡張性の高さで自由なカスタマイズも可能です。
アップデート回数が多いのもebisumartの特徴であり、週に1度は最新の状態に自動アップデートがかかります。システムの定期的なリニューアルが不要なので、コスト削減にもつながります。クラウドなので、自社でサーバーを持ちたくない事業者様に向いているといえるでしょう。
料金プランは「従量課金プラン」「固定料金プラン」「レベニューシェアプラン」の3種類があります。従量課金プランはサイトのアクセス数に応じて料金が変動するプランで、初期費用は300万円~を想定しています。
固定料金プランはアクセス量にかかわらず料金を固定するプランで、支払いを一定にしたい方におすすめです。こちらも初期費用は300万円~の想定となっています。
レベニューシェアプランは毎月のECサイトの販売額に応じて事前に取り決めた料率の手数料を支払うプランです。初期費用は1,000万円~を想定しており、手数料は2.5%~が一般的です。
開発コストがある程度かかるので、売上が安定的に推移している中規模事業者様に適しています。
オープンソース
オープンソースは一般公開されているプログラミング用のソースコードのことで、知識がある人なら誰でも自由に改変してECサイトの構築に使用できます。
無料でダウンロードできることからコストがかからないというメリットがある一方で、専門知識を持たない場合は扱うのが難しいというデメリットもあります。次にご紹介する3つのオープンソースでは、導入を手軽にしたクラウド版のサービス費用として一部有料のものも存在します。
EC-CUBE
EC-CUBEは株式会社イーシーキューブが提供するオープンソースで、カスタマイズ性が非常に高くプラグインが豊富に用意されているのが魅力です。
ECカートや決済システムなどの基本システムは一通り用意されているので、複雑な構成でなければ最低限のプログラミングで公開できるレベルに持って行けるのもポイントといえます。ある程度の開発力は必要になりますが、スキルがある人材を確保できる状況にあり、理想とするデザインを自由に実現したいのであればおすすめです。
EC-CUBEを利用して開設されたショップは35,000店舗以上にのぼり、開発支援事業者を含めた多くのユーザーから支持されています。このソースコードを元にECサイトを開発している制作会社も数百社あり、開発中の疑問を解消するためのオープンプラットフォームが設けられるなど開発者向けのコミュニティも用意されています。
クラウド版とダウンロード版の2種類が用意されており、ダウンロード版はオープンソースなので無料でできます(GPLライセンスの場合)。
クラウド版は自分でサーバーを用意しなくても自動アップデートやSSLの標準対応を行ってくれる代わりに、月額費用がライトプランで6,800円(販売額50万円以上の場合は超過分×1.3%を加算)、Standardプランで39,800~64,800円(販売額500万円以上の場合は超過分×0.5%を最大64,800円になるまで加算)かかります。
Magento
MagentoはAdobeが提供するオンライン販売向けの拡張機能マーケットプレイスです。Magentoを通じた取引額は年間1,000億ドルを超えており、2017年時点で世界のシェアが2位であることからも多くの人々に利用されているプラットフォームといえるでしょう。
PHPというプログラミング言語を利用したオープンソースで、日本国内よりは海外における浸透率が高い傾向にあります。世界で多く使われている実績があり、カスタマイズ性やデザイン性の高さは魅力です。
ただし、国内での知名度はそれほど高くないので開発者を探すのが難しいというデメリットも考えられます。日本語化が比較的難しいともいわれており、疑問点をすぐに解消しにくい環境にある点が開発の難易度を高めているという見方もできます。
言語の壁が気にならない事業者様にとっては機能も豊富で自由度が高く、主力になり得るオープンソースです。基本的に無償で利用できますが、中には有償の拡張機能もあります。
Zen Cart
Zen Cartは個人の有志ユーザーが開発・提供しているオープンソースで、企業が提供しているものではないためダウンロードに関して金銭的なやり取りは一切発生しません。日本語版の公式サイトは2004年からスタートしている比較的歴史の長いプロジェクトで、現在でも定期的に国内の展示会などにも出展されているプログラムです。
国内でもさまざまなジャンルのECサイトの構築に活用されており、実績も豊富なので開発スキルがあるエンジニアであれば自由なデザインを実現できるでしょう。特価商品のランダム表示など訪問者を引き付けるための機能も用意されていて、ユーザーを飽きさせない工夫も凝らされています。
シンプルで見やすい管理画面も特徴のひとつですが、十分なスキルが備わっていないと扱いにくさを感じる人もいるかもしれません。利用者が前述の2種類のオープンソースと比べても少ない点を考えると、比較的上級者向けのプラットフォームであるといえます。
フルスクラッチ
フルスクラッチは「1から完全オリジナルのECサイトを制作する」構築方法のことで、予算をかけられるのであれば自社の商流に必要な機能を揃えたECサイトに仕上げられるのが特徴です。
ただし、ここまでご紹介してきた構築方法の中では最もコストや機能設計のための時間が長くかかります。設計を慎重に行わないと不要な機能を実装してしまったり、必要な機能が不足したりする可能性があるので、専門知識を持ったITベンダーなどと連携して構築を進めるのが一般的です。
ECサイト構築費用を調べるときに気を付けるべきポイント
ECサイト構築費用を調べる際は、単にシステムの構築にかかる料金だけを想定していると思わぬ費用がかかるケースがあります。次の4つのポイントに注意して、慎重にどの方法にするのか選びましょう。
ポイント1:見積もり時の費用は適切か
ASPやパッケージを提供している業者やフルスクラッチで開発を依頼するITベンダーなどから見積もりを取る際に、提示された費用が適切かどうかをしっかりと確認することが大切です。1社だと相場が分からないケースも多いので、できる限り複数の業者に見積もりを依頼することをおすすめします。
ECサイトの構築費用が適切かどうか見極める際は、「初期費用」と「月額費用」の両方の観点から見積もりの内容を精査しましょう。初期費用だけが安かったとしても、月額費用が高額だと数年間使い続けた際にコストが高額になりすぎる恐れがあります。
一般的にはASP<パッケージ<フルスクラッチの順に金額は高くなる傾向にありますが、搭載されている機能によっても金額は大きく異なります。
コストを安価に抑えることは重要ではありますが、単に金額だけに注目するのもおすすめできません。自社に必要な機能が備わっていないサービスを選んでしまうと後から他社に乗り換えたり別のサービスを追加で契約したりしなければならず、結果的にコストも膨れ上がって利便性も低下するリスクがあるからです。
「自社に必要な機能が過不足なく揃っているか」「機能と金額のバランスは適切か」の2点に注意して費用が適切かどうか見極めると良いでしょう。
ポイント2:ささげ業務や物流外注などのコストを忘れない
ECサイトの運営にかかる費用はサイトそのものの構築費用だけではありません。商品ページに掲載する写真撮影の費用や商品サイズの採寸、商品を魅力的に紹介する原稿制作などの準備にかかるコストもECサイトを運営する上で発生する経費のひとつです。
特に写真撮影はどの程度のクオリティを求めるかによっても費用が大きく異なる傾向にあります。EC担当のスタッフが自分で写真を撮影してアップロードする程度のごく簡単な作業であれば最低限のコストで済ませることもできますが、モデルを使ってロケ地でイメージ制作を行うようなケースではある程度の費用がかかることを想定しておきましょう。
また、物流業務もECサイトの運営においては大きなコストがかかる部分です。物流を外注する際は、委託先の倉庫に支払う委託費用などが発生する点も忘れずに意識しましょう。
注文が増えて扱う荷量が増加するにしたがって物流コストも増加していくので、事業規模の拡大を見込んでいる場合は将来的に必要になる経費もある程度計算に入れておかないと、後々になって想定していた必要経費と大幅にずれが生じる可能性があります。
ポイント3:決済・集客方法によっては別途コストがかかる
ECサイトにおいてさまざまな決済システムに対応していることは重要です。クレジットカードだけでなく代金引換や銀行振込、コンビニ収納代行など複数の決済方法に対応することで「商品を購入したいのに購入できない」というユーザーの取りこぼしを防ぎ、売上を確実に確保することにつながります。
しかし、複数の決済方法に対応するにはコストがかかるという点には注意が必要です。利用するASPやパッケージによってはあらかじめいくつかの決済方法に対応しているものもありますが、フルスクラッチなどでは自社で決済システムを用意するか別途決済サービスを契約しなければなりません。
ECモールなどでは複数の決済方法がモール側から提供される代わりに、販売額に応じた決済手数料を支払わなければならないケースもあります。
また、集客方法によっては集客のための費用が発生する場合もあるでしょう。例えばSNSに広告を出稿したり、商品のプレゼントキャンペーンを実施したりする場合にはまとまった予算を組んで運用しなければなりません。
決済や集客の手段によってはECサイトを構築する以外の費用がかかるという点は見落としやすいポイントなので、忘れずに意識しておきましょう。
ポイント4:ECサイトリニューアル時にも料金が発生する可能性
ECサイトは一度制作すれば終わりというわけではなく、常にユーザーの利便性を考えて改善を重ねていかなければなりません。小さな修正であればその場で対応できるものもあるかもしれませんが、大がかりなリニューアルが必要になるとカスタマイズ費用が発生する場合もあるでしょう。
サイトはずっと同じままだと陳腐化してしまい、目新しさがなくなったり使いにくさを感じたりしてユーザーが離脱する原因になります。このような観点からも定期的なリニューアルは必要不可欠であり、断続的に費用が発生すると考えておいた方が安心です。
クラウド型のサービスの中には、利用料金内で最新の状態にアップデートしてくれるものもあります。ASPなどの小規模事業者向けのサービスで十分に対応できる場合は、そのようなサービスの利用を検討するとECサイトのデザインをリニューアルする程度の小規模な改修で済むケースも多いです。
費用対効果を最大限に得るためのコツ
ECサイトの費用対効果を最大限に高めるためには、事前のリサーチや目標の設定が重要になります。準備段階でどれだけ詳細に詰められるかが運用開始後の成果に直結するので、入念な準備を行いましょう。
構築方法を決める前に競合他社のリサーチを行う
ECサイトの構築方法を決める前に、競合他社のリサーチを行うことは大切です。自社が扱う予定の商品のジャンルを取り扱っている上位のサイトなどを参照して、どのような販売手法を採用しているのか把握しましょう。
全体のサイトデザインや商品画像の見せ方、説明文の内容やキャンペーン施策など、競合他社のサイトから学べる部分はたくさんあります。
普段は何気なく利用しているECサイトですが、運営する側に回ると何が必要なのかイメージを掴むのはなかなか難しいものです。競合他社のサイトを参考事例にすることで、運用の具体的なイメージを掴みやすくなるでしょう。
自分が購入するユーザーの立場だと仮定して、購入までの過程をシミュレーションしてみるのもおすすめです。使いにくいと感じる部分は自社のサイトを構築する際に改善した状態で導入し、使いやすいと感じた点は積極的に取り入れると良いでしょう。
また、ECサイトによっては売れ筋ランキングなどを紹介している場合もあるので、どのような商品が売れているのかリサーチしておくのも良いでしょう。自社のコンセプトから大きく逸脱しない範囲で、売れ筋を仕入れる際に役立ちます。
KPIを設定する
目標がない状態でやみくもにECサイトを運営すると、売上が上がらない状態に危機感を覚えにくかったりスタッフのモチベーションの低下につながったりするので、サイトを開設する際には必ずKPI(指標)を設定しましょう。
ECサイトにおけるKPIは売上金額や商品の販売個数などを利用するケースが多いといえます。「1年間で商品Aの注文を1,000個達成する」「1年間で売上金額5,000万円を突破する」などの長期的かつ具体性のある指標を用意することで、短期的にどのような運用をしなければならないのかが見えてきます。
まずは長期的な指標を設定してその数値を短期スパンに落とし込み、目標に到達するためにはどのような施策が必要なのかを考えましょう。
魅力的な商品を提供しても商品の購入が増えないなら、商品の認知度が不足していることが原因かもしれません。この場合、SNSの運用や広告出稿などを通じて多くのユーザーに商品を認知してもらうための施策を打ち出す必要があるでしょう。
集客は十分にできているのに売上が上がらないのであれば、ECサイト自体に問題があるケースもあります。「設定したKPIを達成するためにはどのような行動が必要か」を意識したサイト運用を心がけると、モチベーションも高まり効率的な運用をしやすくなります。
自社の方針を固めて計画を綿密に立てる
「どのようなショップを作りたいのか」はECサイトの根幹となる重要な部分です。ECサイトを構築する前に、まずはサイト自体のコンセプトを固めて土台がぶれないようにすることが大切です。
一貫したコンセプトを維持し続けるには、自社の方針をしっかりと話し合って固める必要があるでしょう。その時々で経営方針がぶれてしまうとECサイトの運用方針も大きく変動することになり、せっかく集客したユーザーが「このサイトは自分の求めているものを提供してくれない」と感じて離れてしまう可能性があります。
コンセプトの決定はターゲットや仕入れる商品の選定、マーケティング手法にも影響してくる部分です。ECサイトの開設を急ぐあまりコンセプトを固める段階をおろそかにしてしまうと、魅力的なサイトを作り上げることは難しくなります。事業の開始を焦る気持ちを抑えて、じっくりと自社の方針を話し合う時間を設けましょう。
各構築方法を比較し自社に合った手段を選定しよう
ECサイトの構築方法は多岐に渡り、かかるコストも選ぶ方法によってさまざまです。自社の運用方針や事業規模、スキルの有無などの状況に応じて適切なものを選ぶことで、サイトの公開後も運用管理がしやすくなります。
ECサイトの運用で発生するコストは構築費用だけではありません。マーケティングにかかる費用や物流コスト、ささげ業務などの作業費も必ず考慮して運用方針を定めましょう。見積もりを依頼する際は1社のみだけでなく、複数の事業者の見積もりを確認することをおすすめします。
費用対効果を最大限に高めるためには、ECサイトのコンセプトや指標の設定も重要です。事前準備を入念に行って、成果を挙げやすいECサイトを構築しましょう。