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ECストアで商品を購入する際に、そのストアがどのような決済手段に対応しているかは、顧客が購入を判断する重要な要素のひとつです。決済機能を導入したいと考えているものの、具体的にはどのような決済システムを導入すればよいのか分からないという方もいるのではないでしょうか。
電子決済が普及してきていることからも、決済方法の選択肢は従来に比べて豊富になりました。そこで今回はECの決済手段について、メリットやデメリットも含めながら詳しく解説します。
ECストアで利用される決済方法|メリット・デメリットも合わせて解説
ECストアで利用される決済方法にはさまざまな種類があり、メリットやデメリットも異なります。ここでは、ECストアでよく利用される代表的な決済方法について解説します。
クレジットカード決済
クレジットカード決済は、ECストアにおいて最も一般的な決済方法です。近年ではキャッシュレス決済が浸透しつつあり、現金を持たずに生活する人も以前に比べて増えてきました。
現在ではオンラインショッピングにおけるクレジットカードの利用率はスーパーマーケットと並んで高いといわれており、ECストアを運営する上でクレジットカード対応は欠かせないものとなっています。
クレジットカードはECサイトで決済情報を入力すればその場で決済を完了できるため、機会損失を最小限に抑えられるというメリットがあります。
銀行振込やコンビニ支払いは注文から支払い完了までにタイムラグが発生するため、途中で「やっぱり購入しなくていいや」といって購入をやめてしまう顧客が発生しやすくなりますが、クレジットカードならそういったリスクは低くなります。
一方で、クレジットカード決済を導入するためには信販会社による所定の審査を通過しなければならないことから、導入に時間がかかりやすいというデメリットもあります。クレジットカード情報を扱うためにはセキュリティ対策にも配慮する必要があるので、システム構築にかかるコストが高額になるケースも考えられます。
多通貨決済
クレジットカードの多通貨決済を利用すると、日本にいながら海外の通貨で商品を販売できます。一般的に海外へ商品を販売するためには現地の決済代行サービス会社と通信を接続しなければなりませんが、他通貨決済なら海外と通信する必要なく現地通貨によるクレジットカード決済を提供できるというメリットがあります。
通貨変換は多通貨決済サービスを提供している事業者が行うため、日本円による入金が可能であることも特徴です。
後払い決済
後払い決済とは、商品を受け取った後で代金を支払える決済方法のことです。通常は商品を支払う前に顧客が購入代金を支払う必要があり、商品の発送は入金確認完了後にしか行われません。そのため、初めて利用するECサイトなどでは商品がきちんと届くのか不安だというい人もいるでしょう。
後払い決済を利用すると欲しいと思った商品を注文すれば先に手元に商品が届くため、配送内容に不備がないことを確認してから代金を支払えます。内容を確認してから支払える環境を整えることで、顧客に安心を与えられるというメリットがあります。
支払い方法は銀行振込やコンビニ支払い、モバイル決済などさまざまで、利用するサービスなどによっても違いがあります。
しかし後払い決済であることから、商品を受け取ったまま代金が支払われずに未回収が発生するリスクは、前払いに比べると高いというデメリットもあります。取り扱っている商品の種類や顧客の年齢層などによって、後払い決済を導入するかどうか慎重に判断する必要があります。
代金引換
代金引換は顧客が配送業者から商品を受け取る際に商品と引き換えに代金を支払う決済方法です。配送業者が代金を一時的に立て替えてECストアに支払い、配送時に顧客から代金を回収するというフローが一般的です。
クレジットカードを持っていない顧客や、ECストアでクレジットカード情報を入力することに不安がある顧客にとっては利便性の高い決済方法のひとつといえます。また、身体が不自由な高齢者など、銀行振込やコンビニ決済をはじめとした「自分で代金を支払いに行く必要がある決済方法」を避けたいと考えている顧客にとってもメリットがあります。
事業者は配送業者から代金を回収するため、顧客からの入金確認を行う必要がないという点もメリットといえるでしょう。注文が入った段階ですぐに発送手続きに移行できるため、顧客に商品を届けるまでのリードタイム短縮にもつながります。
一方で、代引き手数料は他の決済方法と比べるとやや高額であるというデメリットも存在します。銀行振込などと比較しても手数料の負担が膨らみやすいので、事業者側が負担する場合は注意が必要です。また一人暮らしの女性などは、防犯上積極的に利用されにくい傾向があります。
PayPal
PayPalは、クレジットカード情報を事業者に渡さずにクレジットカード決済を実行できるサービスです。「クレジットカード決済を行いたいものの、初めて買い物をするECストアにカード情報を入力するのは不安」という方でも、PayPalを使えばカード情報を渡すことなく決済が可能です。
特に、越境ECなどで海外から商品を購入する顧客にとってはPayPalが用意されていると安心を与えられるでしょう。日本から海外に向けた越境ECビジネスを行うのであれば、ぜひ導入を検討したい決済方法のひとつです。200カ国・100通貨に対応しているため、世界各国と取り引きを行えます。
また、クレジットカード以外にデビットカードや銀行口座からの支払いも可能です。クレジットカードを持っていない顧客は銀行口座からの引き落としや振込で商品を購入することもできるため、柔軟性の高さも魅力です。日本円であれば手数料も無料になります。
一方で、海外決済の場合は為替手数料がかかるというデメリットもあるため、導入時にはコストを把握した上で導入することが大切です。
銀行決済
銀行決済は「自動引き落とし」とも呼ばれており、顧客が登録した銀行口座から自動的に代金を引き落とす決済方法です。「口座振替」と呼ばれることもあります。一定周期で定期的に支払いを継続する必要がある商品に適しており、サブスクリプションや定期購入などに利便性が高い決済方法といえるでしょう。
ECストアでの決済手段の他に、公共料金や携帯電話の通信料を回収する手段としてもよく使われている方法です。
ECストア内の登録情報管理ページや口座振替依頼書などで顧客が自ら口座登録を行い、登録が完了すると所定の口座から毎回自動的に代金が引き落とされます。顧客は商品を購入するたびに自分で支払いを行う必要がなくなることから手間を削減でき、事業者にとっては代金の未回収リスクを軽減できるというメリットがあります。
また、自動引き落としは手数料がかからないというコスト面でのメリットもあります。
一方で、最初に口座振替の登録を行わなければならない点はデメリットといえるでしょう。口座振替の登録には銀行の審査を通過する必要があるので、正確性の高い書類を用意することが大切です。
ID決済
ID決済とは、Amazon PayやLINE Pay、PayPay、メルペイなど、外部サービスに登録済みのユーザー情報と連携して支払いを行う決済方法です。ECストアで購入したい商品を選択したら、一旦連携先の外部サービスにIDやパスワードを使ってログインし、そのサービスに登録されているユーザー情報やクレジットカード情報を使って決済を行います。
お買い物中のECストアで新たに決済情報を入力する必要がないため、顧客にとってはスムーズに決済を完了できるというメリットがあります。「決済手続きが面倒」という顧客によるかご落ちを防げるため、購入率の向上が期待できます。
ただし、ID決済を行うためには各サービス事業者が定めた所定の手数料がかかるというデメリットがあります。例えばAmazon Payの場合、デジタルコンテンツ以外(物理的商品・サービス等)は4%、デジタルコンテンツには4.5%の手数料がかかります。
キャリア決済
今日では誰もがスマートフォンを所有するようになっており、キャリア決済も浸透しつつある決済方法のひとつといえます。キャリア決済は顧客が利用している通信キャリアの毎月の通信料と合算して、ECストアなどでの購入代金を支払える方法です。
日本国内の通信キャリアはドコモ、au、ソフトバンクの3社が特に有名であり、3社ともそれぞれ独自の携帯キャリア決済を用意しています。また、最近登場した楽天モバイルもキャリア決済に対応しています。
ECストアで商品を注文する際に各通信キャリアの電話番号やユーザーIDなどと注文者情報を紐づけておき、毎月の通信料と合算するという仕組みです。
携帯キャリア決済においては、通信キャリアがECストアに対して顧客の購入代金を立て替えておき、後から通信料の請求とともに代金を回収する形をとっています。したがって、事業者にとってはクレジットカード決済と同様未回収のリスクが低いというメリットがあります。手軽に利用できるため、多くの顧客をカバーできるのも魅力です。
ただし、各キャリアによって利用限度額が設定されている点には注意が必要です。一般的には10万円程度の上限が設けられており、家電や家具などの高額商品を扱っているECストアでは利用しにくい決済方法であるといえます。
電子マネー決済
電子マネーは、交通系ICのモバイルSuicaやID、QUICPayなどに代表される電子マネーを利用した決済方法です。
あらかじめ指定した金額を現金やクレジットカードからチャージしておく「プリペイド方式」と、クレジットカード情報を紐付けておき、商品の購入時に電子マネーで決済を行って後から代金をクレジットカードの請求と一緒に支払う「ポストペイ方式」の2種類があります。
プリペイド方式は、コンビニや駅に設置されている機械などを通して現金によるチャージが可能です。そのため、クレジットカードを持っていない人でも気軽に使えるのが魅力といえます。一方で、ポストペイ方式は内部的にはクレジットカード決済に近い性質があるため、クレジットカードを所有していない人は利用できません。
電子マネーはプリペイド式の残高やクレジットカードから代金をその場で引き落とすため、未回収のリスクが低いというメリットがあります。
一方で、プリペイド方式はチャージ済みの金額しか利用できないことから一回あたりの購入額が小さくなりやすいと言えるでしょう。ポストペイ方式はクレジットカードを利用するため不正利用を防止するためのセキュリティ対策が必要になることから、導入費用が高額になりやすいところは注意が必要です。
決済代行サービス会社をご紹介
ここからは、代表的な5つの決済代行サービス会社をご紹介します。
STORES決済
STORES決済は、貸与される決済端末を導入するとクレジットカード、電子マネー、QRコード決済、請求書支払いが可能になるサービスです。2店舗以上のECストアを同時に運営している場合でもまとめて管理できるので、運営中のストアの売上を一括で把握できるのが魅力です。
入金確認機能や売上管理機能などスムーズに配送に移るために必要不可欠な機能の他に、決済モジュール連携やAPI連携などを用いて拡張機能を使うこともできます。入金サイクルは2種類から選択できるので、企業に合わせて柔軟な設計・運用が可能です。
セキュリティ対策も十分に整備されており、決済端末にクレジットカード情報が残ることもありません。
STORESターミナルは初期費用と月額費用がかからないので、決済端末のレンタル料金(通常価格19,800円)だけでスタートできるのは大きなメリットだといえるでしょう。
ソニーペイメントサービス
https://www.sonypaymentservices.jp/
ソニーペイメントサービスでは、「e-SCOTT」という総合決済サービスを提供しています。同社は他社にはない独自のセキュリティサービスを採用しているのが特徴で、信販会社とダイレクトに接続することから決済処理の高速化に成功しています。
「決済に時間がかかりすぎるから購入を諦めよう」と判断する顧客を減らし、かご落ちを抑えて購入率を高める効果が期待できます。
また、クレジットカード会社とソニーペイメントサービスの間に中継地点を挟まないため、メンテナンスが必要な箇所を限定できるのもメリットのひとつです。サービスの停止時間を最小限に留めて稼働率を高められます。
システムは二重化されているので、メンテナンス時でも24時間365日稼働を継続できます。商品を購入したいと思ったときにメンテナンスでサービスが停止しているとそのまま購入を忘れてしまう顧客も多いため、「いつでも決済できる」というのは重要なポイントです。
初期費用や月額費用、決済手数料など、導入のための詳細な金額は公表されていません。導入を検討している場合は、別途見積りの取得が必要です。
ヤマトクレジットファイナンス
https://www.yamato-credit-finance.co.jp/
ヤマトクレジットファイナンス株式会社では、「クロネコ掛け払い」を提供しています。BtoB取引の掛け払いをまとめて同社が代行処理するサービスであり、自社が代金回収を行う必要がないため、基幹業務に集中できます。
請求書発行や入金管理、取引先への集金や督促まで全て対応してもらえるので、事務作業にかかっていたリソースを丸ごと解放できるのは魅力といえるでしょう。
また、事業者側が未回収のリスクを軽減できるのもメリットのひとつです。クロネコ掛け払いは仮に取引先の企業から代金を回収できなかったとしてもヤマトクレジットファイナンスが売掛金を保証してくれるため、安心してビジネスを行えます。
利用までのステップが簡単であり、クロネコ掛け払い専用のWebサイトでアカウント登録を行ってログインするだけで利用準備が完了します。ただし、最初のうちは60万円までの利用限度額が設定されており、限度額の引き上げには所定の審査を通過する必要があります。
GMOペイメントゲートウェイ
GMOペイメントゲートウェイ は、国内の決済代行サービスの中でも最大手の決済代行サービス会社です。「PGマルチペイメントサービス」を提供しており、導入すると非常に多様な決済方法をカバーできます。
クレジットカード決済やLINE PayなどのID決済、ビットコインをはじめとした仮想通貨決済、キャリア決済、さらには多通貨決済など、国内で考えられるあらゆる決済方法を網羅しているので、さまざまな顧客の希望に応えられるでしょう。
豊富な導入実績を活かして事業者ごとのニーズを捉え、それぞれの企業に最も適したプランを提案してもらえます。決済代行サービスの利用が初めてで勝手が分からないという方であっても、安心して利用できる点が魅力です。また、コールセンターが年中無休で稼働しているので、疑問点があればすぐに問い合わせて解決できます。
海外進出のサポートにも対応しており、越境ECへの進出にも有効です。利用料金は公式ホームページに記載されていないので、利用を検討する場合は見積の取得が必要です。
楽天ペイ
楽天ペイは、国内大手企業のひとつである楽天株式会社が運営している決済代行サービスです。同社は楽天市場や楽天カードなどでも有名であり、非常に多くのサービスを運営しています。
クレジットカードの他に複数の電子マネー決済が可能であり、交通系ICのSuicaや楽天Edy、QUICPayなどに対応しているため、日本国内の顧客なら広範囲をカバーできるでしょう。
また、売掛金の入金先を楽天銀行に指定している場合は手数料が無料になるのもメリットです。売上の入金は決済が完了した翌日とスピーディーであり、なかなか売上が入金されないことによるキャッシュフローの停滞を防止できます。
導入する際は端末代金を支払う必要があり、売上に対して決済手数料もかかります。しかし、他の決済サービスと比べても飛び抜けて高額ではないため、十分に候補のひとつとなり得る決済代行サービス会社です。
決済代行サービス会社選定のポイント
決済代行サービス会社を選定する際に注意したいポイントとして、次の4つが挙げられます。ひとつひとつに注意を払わなければ思わぬ不利益につながる可能性もあるため、慎重に検討することが大切です。
ポイント1:セキュリティや機密情報の管理は万全か
決済代行サービス会社を選定する際に、システムそのものの機能性や対応している決済方法に注目することは重要です。しかし機能面だけでなく「信頼できる決済代行サービス会社かどうか」も、しっかりと見極める必要があります。
決済システムは、顧客の決済完了後すぐに自社に代金が支払われるわけではありません。「顧客から収納代行会社や決済会社に対して代金が支払われ、その代金から手数料を差し引いた金額が事業者のもとに支払われる」という流れをたどるので、信頼できる決済代行サービス会社を選ばなければ、支払い遅延や未回収などのトラブルにつながるリスクがあります。
ごく小規模な事業者であれば、経営破たんして代金回収の目途が立たなくなってしまうことも起こり得ます。定期的なサイクルで売上が入金される環境を構築しキャッシュフローを良好な状態にしておかなければ、ECサイトの運用にも支障をきたして自社の事業の継続に影響がないとも限りません。
決済代行サービス会社の選定に失敗してしまう大きな原因のひとつに「手数料の安さだけを重視して選んでしまう」というものがあります。決済する件数や金額が多ければ多いほど、手数料が安い事業者と高い事業者では支払額に大きな差が出るのは確かです。
しかし手数料を削減したいからといって信頼できない決済代行サービス会社を選んでしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれるリスクもあります。事前に信頼に値するかどうかを十分に精査して選定しましょう。
ポイント2:サポート体制は整備されているか
サポート体制が整備されているかも重要な確認ポイントのひとつです。決済システムを導入した後、使い方が分からなくなったり利用中に何らかのトラブルに見舞われたりすることは十分に考えられます。そんな時すぐにサポート対応を行ってくれる決済代行サービス会社であれば、解決までにそれほど長い時間を必要とせずに通常業務に戻れる可能性が高いといえます。
しかし、サポート体制が不十分な決済代行サービス会社を選んでしまうと、疑問やトラブルの解決までに長い時間がかかってしまう可能性があります。特に電話でのサポート対応を行っておらずメールのみで受け付けているサービス会社の場合は、返信があるまでに1日~数日かかることもあるでしょう。
深刻なトラブルであれば普及するまで営業できなくなってしまう場合もあるため、手厚いサポート体制を整えている決済代行サービス会社を選ぶことをおすすめします。
ポイント3:初期費用だけでなく運用コストは適正か
決済代行サービス会社を選定する際、つい導入費用が安価なシステムを選びたくなってしまいがちです。しかし、初期費用だけでなく運用コストにも注意して選定しなければ、最終的なコストに大きな差がつきます。
導入時にかかる初期費用を安く抑えられたとしても、月額費用や手数料などの運用コストが高額だと、数年後の総額も非常に高額になる場合があるからです。
例えば、初期費用が100万円のシステムと10万円のシステムなら、一見すると10万円のシステムの方がコストパフォーマンスが高いように思えるでしょう。しかし、実際にはランニングコストの差が総額を決定づける大きな要素であり、初期費用と運用コストの双方を比較・検討した上でシステムを選定することが重要であるといえます。
ポイント4:自社のECストアのシステムに対応しているか
顧客の利便性を考えると、できるだけ多くの決済システムに対応しているのが理想ではあります。しかし、決済方法の種類だけが充実していても、自社にとって効率の良い運用は難しいため、自社のECストアに適したシステムか十分に検討することも大切です。
例えば「リピート通販」や「サブスクリプション」と呼ばれる販売形態においては、1人の顧客が定期的に同じ商品やサービスを自動的に購入します。このサイクルを実現するためには、毎回自分で決済を行わずに済むようにするための仕組みが必要です。
具体的には「商品の購入時期が来たら、自動的に登録済みのクレジットカードで決済する」などの機能が備わっているシステムを選ばなければなりません。
決済以外の機能についても、自社に必要なものが揃っているか確認しましょう。分析機能が豊富に用意されているシステムなら、顧客の注文情報を参考にして大々的にキャンペーンを展開する商品を見極めたり、自社のECストアに多く訪れている年齢層に合わせた商品を仕入れたりすることも可能です。
【コラム】決済方法の接続方式について解説
決済方法の接続方式は複数あるため、自社の予算や状況に応じて適切なものを選択することが大切です。ここでは、代表的な4つの接続方式についてご紹介します。
リンク型
リンク型は「画面遷移型」と呼ばれる方法です。決済代行会社が提供する決済専用ページ上で決済処理を実行します。決済代行会社が準備した決済ページを利用して決済を行うため自社でページを作成する必要がなく、システムの構築費用を最小限に抑えられるのが特徴です。
顧客がクレジットカード情報を入力するのは決済代行会社のサーバー上に存在するページであることから、事業者側のサーバーでクレジットカード情報を扱わなくても良いというメリットもあります。
自社が所有するサーバー上で決済処理を行う場合、セキュリティ対策を十分に講じていないと決済処理の最中にクレジットカード情報が盗み取られるなどのリスクがあります。しかし、決済代行会社のページにはあらかじめ厳重なセキュリティ対策が講じられているため、情報漏えいのリスクを格段に小さくできます。
「コストはなるべく抑えたいけれど、セキュリティも心配」という方にとってはリンク型がおすすめです。決済ページへのリンクをボタンやURLなどの形にすることも可能であり、顧客にとっても違和感が少ない導線を設置できます。
データ伝送型
データ伝送型は「API型」とも呼ばれており、自社が所有するSSL対応サーバーを利用してクレジットカード情報を決済代行会社に伝送する方法です。SSLとは暗号化の方式のひとつで、改ざんやなりすましなどを防止する効果があります。
API型では、決済代行会社の決済ページに遷移せずに自社のECストア内で決済処理を行えるのが特徴です。オリジナルのページデザインを実現できるため、カスタマイズ性の高い決済ページを構築したい場合におすすめの方法といえるでしょう。
決済専用のサーバーを構築するので、日常的に大量の注文が入る大規模事業者にも向いています。
決済代行会社の決済ページに遷移する必要がないことから、決済処理を完了させるまでの動作を最小限に抑えて離脱率を低下させられる効果も期待できます。決済の途中で購入を諦めてしまうケースは多いため、画面遷移の回数を少なく済ませられるのは魅力的です。
トークン型
トークン型は「JavaScript型」とも呼ばれている方法で「JavaScript」というプログラミング言語で作成したプログラムを利用して決済を行います。自社ECストアの決済画面内に用意した「クレジットカード情報の入力フォーム」に決済代行会社が持つプログラムを組み込み、決済情報の伝送を行います。
「トークン」とは「クレジットカードの情報をデジタルデータに変換するためのパラメータ(変数)」を表しています。つまり、クレジットカード情報を一旦トークンに置き換えてからデータの伝送を行うということです。
クレジットカード情報がECストアのサーバーを通過すると、情報漏えいのリスクがあります。しかし、トークン型では事業者のサーバーは経由せずに直接決済代行会社のサーバーを通るため、ECストア内にクレジットカード情報を持たずに決済を完了できるというメリットがあります。
自社のECストアに決済機能を実装したいと考えているものの、情報漏えいのリスクをなるべく抑えてセキュリティを高めたい方に適している接続方式です。画面遷移の回数が少ないため、決済の手間をできるだけ減らしたい場合にも役立つでしょう。
メールリンク型
メールリンク型とは、顧客が注文を完了した後に決済代行会社などを通じて登録したメールアドレス宛に決済用のURLを送信し、送信されたURLのリンクから決済手続きを行う方法です。
メール内のリンクを利用して決済するためECストアの改修が不要であり、構築コストを抑えられるのがメリットです。決済システムの改修費用を抑えたいと考えている事業者には効果が高い方法であるといえます。
また事前予約や見積など、その場で決済を完了するのが難しい販売方法を採用しているケースでは、支払い情報が確定してから決済を行わなければなりません。このようなシチュエーションでも、メールリンク型が有効です。
電話注文を受け付けている場合など、ECストア内での決済以外の注文方法を持っている事業者も、支払いをひとつの窓口に集約できるため利便性が高いでしょう。自社のサーバーを持たずに運用できるのがメールリンク型の最大の特徴ともいえます。
Eメールの他にもスマートフォンのSMSを利用する方法や、決済画面に接続するQRコードの発行によって決済手続きを行う方法もあります。
決済方法選定時のポイント
決済方法を選定する際は、次の2つのポイントに注意すると顧客の取りこぼしを防ぎやすくなります。
ポイント1:自社ECストアの顧客ニーズに合った方法を選ぶ
「なんとなく」で決済システムを選ぶのではなく、自社ECストアを利用しているユーザーがどのような決済方法を必要としているのかを十分に調査した上で、顧客ニーズに合った方法を導入することが大切です。
近年では、ECストアの決済方法はクレジットカードが主流になりつつあります。しかし、10代~20代の若年層をターゲットにしたECストアなどでは、クレジットカードを所有していないユーザーの割合が多くなることも考えられます。
このような場面においては、銀行振込やコンビニ収納代行、モバイル決済などクレジットカード以外の決済方法に対応していると、「支払いができない」という理由によるユーザーの離脱を招きにくくなるでしょう。
一方、50代や60代など年齢層が高めのECストアであれば、クレジットカードの利用率が高くなりやすい傾向にあり、モバイル決済などには馴染みが薄い傾向が強くなります。運営中のECストアの特徴によってどの決済方法を導入すべきかは異なるので、自社の顧客に適した決済方法を選択することが重要です。
ポイント2:決済方法は1つに絞らず複数選定する
決済方法はどれか1つに絞るのではなく、複数種類選定することをおすすめします。前述のように顧客ニーズによって適した決済方法は異なりますが、顧客が置かれている状況によっても利用したい決済方法はさまざまだからです。
たとえクレジットカードを所有していたとしても、その月は限度額の限界が近くなっているため、なるべく利用したくないという状況にある人なら、銀行振込やコンビニ支払い、代金引換などを選択したい場合もあるでしょう。たまたまモバイル決済に残高が残っていて、その時はモバイル決済で支払いを済ませたいというシチュエーションもあるかもしれません。
1つの決済方法に絞って導入してしまうと、その決済方法が使えない顧客は商品の購入を諦めなければなりません。顧客の取りこぼしを招いてしまうため、できるだけ複数種類の決済方法を用意しておくことが重要です。
決済方法を導入したら、実際に使われている決済方法を分析して追加・変更するか検討することも大切です。まだ導入していない決済方法のうち顧客ニーズが高い決済方法を導入することで、さらに顧客満足度を高めて購入率を引き上げられる可能性があるからです。
決済方法は自社と顧客双方に合った方法を選定することが大切
ECストアに導入する決済方法は、従来のクレジットカードや銀行振込、代金引換などに加えて、モバイル決済やキャリア決済、ID決済などさまざまな方法が登場しています。対応している方法が多いほど顧客にとって利便性は高くなりますが、システム導入費用や手数料などの兼ね合いもあるため、自社と双方に合った方法を選定することが大切です。
決済システムでは顧客の個人情報を扱うことになるため、セキュリティ対策が十分に考慮されているかどうかも重要なポイントです。サポート体制が整っていればトラブルが起きたときにすぐ問い合わせられるので、あらかじめどのようなサポートを提供しているかも確認しておきましょう。