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越境ECを展開して海外進出すると、日本に事業所を構えながら海外のユーザーにECサイトを通じて自社の商品を販売できます。現地法人を作らずに販路を確保できることから、コストを抑えながら海外に進出できるのが何よりの魅力といえるでしょう。
現在では世界各国で大小さまざまなECモールが登場しており、越境ECに対応しているプラットフォームも数多くあります。オールジャンルのECモールから特定のジャンルを扱ったECモールまで幅広い選択肢があるので、進出を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、世界の越境ECモールとプラットフォームをまとめてご紹介します。選定方法も合わせて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
越境ECに強いECプラットフォーム
自社ECを構築する場合は、越境ECに強いECプラットフォームを選択することが大切です。次にご紹介する4つのプラットフォームは越境ECに強いことで知られているため、検討対象に入れることをおすすめします。
Shopify
Shopifyはカナダに拠点を置くASPサービスで、世界でシェアNo.1を獲得している人気の高いプラットフォームです。175の国と地域で利用されており、Shopifyを通じて決済された商品の購入金額は7兆円以上であるともいわれています。
日本では2017年からサービスが開始され、2021年時点で既に多くの事業者から支持を集めています。100種類を超える豊富なテンプレートから気に入ったデザインを選ぶだけで、簡単に機能性が高いECサイトを制作できるのが特徴です。HTMLの専門知識がなくてもお洒落で運用しやすいショップを制作できるので、初心者でも扱いやすいでしょう。
ベーシックプランを選択すると、1ヶ月29ドルから利用できます。日本円3,000円程度の負担と考えるとコストパフォーマンスも高く、利用のハードルは比較的低いプラットフォームであるといえるでしょう。スタンダードプランも79ドルから利用できるので、事業規模が拡大してきた際には意向を検討するのもおすすめです。
国内外の大手配送業者と提携しており、越境ECにも強みがあります。越境ECへの進出を考えているのであれば、物流面でもShopifyは有用であるといえるでしょう。世界中の決済サービスに対応しており、PayPalなども利用できるので、越境ECでもスムーズに決済を完了できます。
Magento
MagentoはAdobeが提供しているECプラットフォームで、オンライン販売を対象とした拡張機能のマーケットプレイスです。日本よりも世界で広く浸透しており、年間の取引総額は1,000億ドルを突破しています。2017年時点で世界におけるシェアは2位を獲得しており、多くのユーザーから認知されているサービスであるといえるでしょう。
PHPを利用してショップを構築する必要があるため、専門知識がない初心者の方にはあまりおすすめできませんが、プログラミングの知識がある方ならカスタマイズが自由自在です。また、オープンソースなので利用料がかかららず、コスト面のメリットも大きいといえます。Adobeが提供しているだけあって、美しいデザインを実現できる点は非常に魅力的な部分です。
ただし、前述のように世界のシェアは高いものの、日本での知名度は残念ながらそれほど高くないのが現状です。開発者を探して知識を共有するのが難しいことから、使い方に悩んだ時に相談できる相手を見つけにくいというのがデメリットといえます。
オープンソースなので基本的に無料ですが、有料で購入できる拡張機能も用意されています。
LaunchCart
LunchCartはアジア向けの越境ECに特化したECプラットフォームであり、徹底的なローカライズが特徴です。現地の商習慣に合わせているため、システム面でも進出先の国に対応できないという状況が起こりにくく、スムーズに越境ECを運用開始できるのがメリットです。
単品通販と総合通販の両方に対応できるのも魅力のひとつで、単品通販では現地ローカライズされたフォーム一体型ランディングページや定期購入機能、、オプションサービスを利用するとSMSによるステップメールも導入できます。
総合通販ではCMS機能によるコンテンツ配信や多言語切り替えの他にも、オプションサービスとしてリアルタイム通貨変換なども用意されています。現地に合わせたショップを制作することで訴求効果を高めて、現地のユーザーに響きやすい運用を実現できます。
初期費用55,000円~、月額費用32,780円~となっています。サイト上でオプションサービスなども含めた詳しい見積もりシミュレーションを行えるので、導入を検討しているなら一度利用してみるのがおすすめです。
Wix
https://ja.wix.com/ecommerce/netshop
Wixはイスラエルが発祥のECプラットフォームで、テンプレートから選択するだけで簡単にホームページを制作できます。Wixの中には「Wixストア」という機能が用意されており、ネットショップを簡単に構築する機能を利用可能です。
Wixストアではデザインや機能が豊富に用意されており、自由なカスタマイズが可能な点が魅力のひとつです。決済方法が豊富に用意されており、クレジットカードやコンビニ決済、Pay-easyなどを含んだ多様な決済に対応しています。
テンプレートは500種類以上から選べて、細かいパーツも用意されています。ひとつひとつを組み合わせることで、テンプレートでありながらも独自性を押し出した他社と差別化できるネットショップを制作できるのが特徴です。
Wixのホームページ制作自体は無料ですが、ショップ機能は有料となります。無料プランの場合は実際に商品を販売することはできませんが、操作感を確かめることは可能なので、まずは制作してみて、運用できそうであれば有料プランを契約するという方法もあります。
中国の越境ECモール
中国の越境ECモールの代表格はアリババグループが運営する天猫国際ですが、他にも多くの人に使われているモールはいくつかあります。
天猫国際(Tmall Global)
天猫国際は、アリババグループが運営している中国最大級のECモール「天猫」の海外事業者向け越境ECモールです。
天猫は中国のEC市場で総取引額の50%以上を占める巨大モール組織であり、日々多くのユーザーが買い物を楽しんでいます。天猫と合算した実績にはなりますが、累計流通総額は2017年度時点で84兆円を数えるなど、世界でも有数の巨大マーケットといえるでしょう。
中国国内で有名な「淘宝網(Taobao)」もアリババグループによるECモールですが、こちらはCtoCの取引をメインとしており、BtoC取引を行うのであれば天猫を選択する必要があります。
天猫国際は越境ECモールで海外事業者を対象にしているとはいえ、偽物を極力排除するために出店基準が高く設けられており、出店審査は厳格なことで知られています。他のECモールでも同様ですが、中国で営業するには営業許可証を取得しなければならないなどの制約もあるため、出店の際は十分な準備が必要です。
とはいえ、中国における日本製品の需要は根強く、日頃から日本企業が出店するECサイトで日本製品を購入したいと集うユーザーはたくさんいます。巨大な中国市場への進出を考えるのであれば、天猫国際は外せないモールのひとつです。
出店には「保証金」「年間技術サービス料金」「テクニカルサービス料金のリアルタイム控除」の3つの費用が必要になります。保証金は初期出店費用のようなもので、約15万元から80万元まで幅があるようです。年間技術サービス料金は3万元か5万元で、年額費用に相当する利用料です。
テクニカルサービス料金のリアルタイム控除は商品にかかる手数料に近い性質を持っており、商品ごとに2%または5%かかります。
考拉海購(Kaola)
考拉海購は中国においてはまだ比較的新しいECモールで、2015年1月からサービスが開始されました。越境ECビジネスをメインとする中でも、コスメ用品やベビー用品、生活雑貨などを中心に扱う事業者が出店しています。
考拉海購自体も約80ヵ国100社以上との取引があり、合計数億アイテムの商品を取り扱っていることから、越境ECプラットフォームに限ると天猫国際と並ぶ知名度を誇っているのが特徴です。
日本からも多くの企業が出店しており、日本製品は考拉海購上で最も高い売上を獲得しているなど、高い人気を博しています。2017年11月には日本の東京都にHQG Japan株式会社という日本法人も設立しており、日本製品の需要の高まりに応えるための施策を展開しています。
2017年10月の時点で3年間で日本円にして総額5,000億円の仕入れを目指すと宣言するなどの背景からも、日本製品が必要とされている現状が見て取れます。また、2018年4月には東京都品川区にもオフィスを設立しているなど、日本とのつながりを深めている越境ECプラットフォームです。
コスメ用品やベビー用品を扱っている性質上、ユーザーは女性が80%程度であるといわれています。
京東国際(JD worldwide)
https://www.digima-japan.com/knowhow/world/8123.php
京東国際(ジンドンコクサイ)は、中国国内では天猫国際に続いて大規模な越境ECモールです。京東も中国で広く利用されているECモールであり、中国国内では長い間2位の売上を維持し続けています。中国の広いマーケットを活用して年々規模の拡大を続けており、2017年時点で約20兆円もの流通総額に達しています。
京東自身も事業者から商品を仕入れて販売していますが、京東国際には海外の事業者が出店することもできます。京東自体は家電に強いプラットフォームなので、扱っている商品も家電製品が数多くラインナップされており、出店者もデジタル家電などを出品する場合が多いでしょう。とはいえ、最近では他のジャンルの商品も取り扱いが増えてきています。
ヤマトグローバルロジスティクスジャパンが京東と業務提携を締結しているので、京東から日本国内の事業者に注文が入ってからわずか4日間程度で商品を配送完了できるのも強みのひとつです。
京東国際は保証金、プラットフォーム利用料、技術サービス料金がかかりますが、他のプラットフォームに比べるとやや安価に設定されています。
アメリカの越境ECモール
アメリカの越境ECモールは、Amazon、eBay、Walmartの順にシェアが高くなっています。それぞれの特徴を詳しくご紹介します。
eBay
1995年にアメリカで設立されたeBayは、20年以上が経過した現在でもアメリカの主要なECプラットフォームのひとつです。当初はCtoCを目的としたフリーマーケットとして立ち上げられましたが、現在ではBtoBやBtoCビジネスも数多く展開されています。
世界中に多くのアクティブユーザーを抱えており、アメリカだけでなく、世界各国でも浸透率の高いモールです。特に近隣のカナダやヨーロッパのドイツ・フランス・イギリス、オセアニアのオーストラリアなどでは、eBayが浸透しており、多くのユーザーに利用されています。
後述するAmazonやWalmartに次いで3位の販売額を記録するなど、世界的に規模が大きいECモールのひとつです。最近ではマーケットプレイスの出店が増えており、普段はマーケットプレイスで商品を販売しながら、一部の数量限定品や中古品は古くからあるオークションプラットフォームに出品するという使い方が一般的です。
eBayは6つのプランが用意されており、小規模であれば出店料は0円からスタートすることも可能です。有料プランになると出品手数料が下がったり、無料出品枠が増加したりするなどの恩恵を受けられます。
0~12%の間でかかる商品の落札手数料の他に、PayPal手数料が4%差し引かれる点にも注意が必要です。
Amazon
世界中に莫大なユーザー数を抱えるAmazonは、EC市場が発展しているEC大国のアメリカで50%ものシェアを誇ります。日本でも人気の高いモールであり、今日では非常に高い認知度を獲得しているといえるでしょう。世界的にも日本を含めた19の国と地域にローカライズされており、最もよく使われているECモールのひとつです。
その規模を活かしたアイテム数の中から、希望の商品を気軽に探して購入できるのが魅力です。日本でも、何か欲しい商品を思い立った時にまずはAmazonを覗いてみる、という方も多いのではないでしょうか。
2020年にはアメリカ国内で有料プライム会員数が1.5億人を超えており、全アメリカ国民の半数が有料プランを契約しているという試算が出ています。
Amazonに出店する方法は、日本のAmazonへ出店する方法とほとんど同じです。最初のアカウント登録手続きは英語のページで進めなければなりませんが、最近では出品画面も少しずつ日本語対応が進められているので、出店のハードルは比較的下がってきている越境ECモールです。
月額$39.99(税抜)を支払うことで、大口出品プランを契約できます。販売手数料は日本と同様に販売する商品のジャンルによって大きく異なるので、あらかじめよく調査しておきましょう。
Walmart
Walmartも、アメリカでは高いシェアを獲得している越境ECモールのひとつです。Walmartは日本では大手のスーパーマーケットチェーンとして認知度が高く、名前を聞くと広大なスーパーマーケットをイメージする方も多いのではないでしょうか。同社が所有している自社ECサイトに越境ECで商品を出品することができます。
Amazonのような巨大ECモールと比べると知名度はやや下がりますが、それでも順調に成長を続けているモールのひとつであり、今後の発展も期待できます。競合他社も比較的少ないので、早めに参入しておくのも手段のひとつです。
世界的にローカライズされているAmazonと比べると出品に苦労する可能性もありますが、現在ではShopifyと連携して簡単に出品できる機能が用意されていることから、ECプラットフォームにShopifyを利用しているのであればおすすめのECモールであるといえます。
アジア圏の越境ECモール
アジア圏にも成長し続けている越境ECモールがいくつかあります。ここでは、東南アジア、台湾、タイ、韓国の事例について紹介します。
Shopee
Shopee(ショッピー)はシンガポールで生まれた越境ECモールです。2015年2月の登場時からわずか数年で急成長を遂げており、東南アジアでは現在最も勢いがあるECプラットフォームといえるでしょう。サービス開始から1年で流通総額が18億円を突破するなど、破竹の勢いで市場を拡大していきました。
一般的なECモールのように問い合わせ対応をモールのカスタマーサポートが対応するのではなく、購入者が直接出品者に対してコミュニケーションを取れるのがShopeeの特徴です。中国で人気が高いタオバオも近しい機能を備えていますが、Shopeeはシンガポール以外の東南アジア諸国に商品を販売できるというメリットもあります。
Shopeeの最大の特徴は、販売手数料とリスティング手数料が無料に設定されているという点です。費用を最小限に抑えられることから出店のハードルが格段に下がり、多くの出店者が集まってプラットフォームがどんどん拡大しています。
「無料だからとりあえず出店しておこう」と考える事業者が集ってアイテム数が増加し、魅力的な商品が揃っていることによってユーザーもShopeeに集まるという好循環が生まれています。
PChome(台湾)
https://shopping.pchome.com.tw/
PChomeは台湾における最大級のECサイトであり、PChomeの中でも複数のサイトに分かれています。BtoCを中心とした商品の販売を行っているのは「PChome購物中心」というサイトです。
他にも24時間以内にPChomeの自社倉庫から商品を配送するBtoCの「PChome24購物」や、ECモールタイプのBtoBtoC型プラットフォームである「PChome商店街」なども運営されています。日本から越境ECに進出する場合は、このプラットフォームのいずれかに出店することになるでしょう。
「PChome商店街」は2005年からサービスを開始しており、現状の出店数は12万店舗を突破しています。取り扱っているアイテム数も4億点を超えており、台湾における一台EC市場を形成しているといえるでしょう。プラットフォームだけでなく、物流サービスも活用できます。
ユーザーの男女比は半々だといわれており、メインターゲットは働いている社会人です。日本から越境ECで販売されている製品のうち、最も人気が高いのは食品だとされています。
初期費用や入会金がかからないのも魅力のひとつで、商品の販売手数料6%を支払うだけで運用可能です。
Lazada Thailand(タイ)
Lazadaは東南アジア向けの越境ECプラットフォームで、2016年以降は中国の天猫やタオバオを運営しているアリババグループが親会社となって運営しています。
現在、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、シンガポール、インドネシアの6ヵ国に対してサービスを提供しており、2030年までには3億人に対してサービス範囲を拡大していく目標を打ち出しています。
日用品から家電、アパレル用品まで非常に多様なジャンルの商品が揃っており、1ヵ国あたり3,000店舗以上の出店があるといわれています。Lazadaへの訪問者数は1日500万人を突破しており、売り上げ上位のショップは1日に1,000アイテム以上を売り上げるとされています。成長率も高く、20%程度の安定的な成長を続けているのも特徴です。
Lazadaには「ローカルアカウント」と「グローバルアカウント」が用意されており、越境ECの場合はグローバルアカウントを作成する必要があります。タイ向けのLazadaに出店する場合は、Lazada Thailand用のアカウントを取得するなど、国別の管理となる点には注意が必要です。
初期費用や月額費用はかかりませんが、販売する商品のジャンルに応じて2%程度の手数料がかかります。
G-market(韓国)
http://global.gmarket.co.kr/Home/Main
G-marketは韓国で展開されているECモールであり、国内向けのG-marketの他にも「G-market Grobal」と呼ばれる越境EC向けのプラットフォームが用意されています。日本語、中国語、英語の3ヵ国語に対応しており、一部の商品は海外に向けて発送できます。日本国内のAmazonや楽天市場をイメージすると分かりやすいでしょう。
韓国の国内向けG-marketで販売している商品の一部を海外へ発送できる仕組みになっており、韓国の商品に興味を抱く海外ユーザーに商品を提供できる環境が整っています。
また、楽天株式会社が運営している日本市場に向けたG-marketも用意されており、韓国のG-marketで販売している商品の一部を日本語にローカライズされたECサイト上で購入できます。コスメ用品やスキンケア用品、ファッションや食品なども扱っており、気軽に購入できるのがメリットです。
楽天ポイントを貯められるなど、ユーザーの囲い込みに関する工夫も凝らされています。
イギリスの越境ECモール
イギリスの越境ECモールとして有名なプラットフォームは、eBayやAmazonのローカライズ版の他にもJhon Lewisがあります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
eBay.co.uk
eBay.co.ukはeBayのイギリス向けプラットフォームです。eBayのメイン市場はアメリカではあるものの、イギリスのeBayも日本製品は人気があり、出品することで一定の売上を期待できるでしょう。
発送方法にEMSを利用したい場合は、世界情勢でアメリカにEMSを利用できない場合もあるので、現在のところEMSを利用できるイギリスのeBayはおすすめです。競合他社もアメリカに比べると少なくなるので、高いシェアを獲得できる可能性もあります。
eBayで商品を出品する場合は、アメリカのeBayのアカウントがあれば流用して出品登録が可能です。eBay.ukのページから既存のアカウントでそのままログインできるので、既にアメリカのeBayに出店していてイギリスのeBayにも進出する、という使い方もできるでしょう。
ただし、出品手数料が1点につき0.5ドルかかるなど、アメリカとは異なる点もいくつかあるので注意が必要です。安易に出品を取り下げて再出品を繰り返すなどの行為を繰り返すとコストが膨れ上がってしまうので、最低限の出品をスムーズに行いましょう。
Amazon.co.uk
Amazonをイギリス向けにローカライズしたECモールです。Amazon.co.ukに出店するにはAmazonでヨーロッパマーケットプレイス用のアカウントを作成する必要があります。
ヨーロッパマーケットプレイス用のアカウントは、セラーセントラルヨーロッパでイギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの5ヵ国を切り替えながら出品できるので、イギリス以外のヨーロッパのAmazonにも並行して商品を出品したいという場合にもおすすめです。
イギリスは公用語が英語であることから、英語に強いスタッフがいる場合はアメリカのAmazonと同じ感覚で出品できるのがメリットのひとつといえます。同じヨーロッパマーケットプレイスの5ヵ国であればセラーセントラルページは英語に変換できるため、英語が使えるのであれば比較的どの国の出品も対応しやすいでしょう。
Amazon.co.ukの出店料は、大口出品の場合月額25ポンドです。販売手数料は商品のカテゴリーによって異なりますが、最大で15.3%と高率なものもあるので、出品する商品の料率をあらかじめ調べておくことが大切です。
John Lewis
John Lewisはイギリスの大手デパートであり、自社ECサイトを展開しています。顧客満足度1位のデパートであり、多くのユーザーから支持を集めているのが特徴です。
ECサイトを通じて購入した商品をあらかじめ指定された拠点で受け取れる「クリックアンドコレクト」というサービスも提供しており、現在では900箇所以上が受け取り場所に指定されていることから、気軽に買い物ができるのもポイントです。
扱っている商品は家電やインテリア、アパレル用品、健康用品が多く、サイト上ではさまざまなカテゴリーが細かく分類されていて商品を探しやすくなっています。
イギリスはECが発展している国のひとつであり、多くのユーザーがインターネットを通じた買い物を楽しんでいます。iOS専用アプリも提供しており、AR機能「Virtual Sofa」を利用すると、自宅にソファーなどの家具を設置した場合のイメージを再現できるなど、ECを最大限に活用するための工夫が施されています。
このアプリは「Virtual Lipstick」という口紅の色を数百色試すことができるアプリの成功から着想を得ており、多くのユーザーによってダウンロードされています。
ドイツの越境ECモール
ドイツで人気を集めている越境ECモールは、Amazon、Otto、Zalandの3つです。ここでは、その中でも独自性の高いOttoとZalandについてご紹介します。
Otto
Ottoは世界でも最大規模のeコマース企業のひとつであり、ドイツ国内ではAmazonドイツに次いで2位のシェアを獲得している越境ECモールです。Ottoが得意としているのはアパレルや生活用品で、ドイツだけでなく、近隣のフランスやイギリスなど、ヨーロッパ諸国のユーザーに対して訴求を期待できます。
ドイツでは2018年時点でAmazonドイツとOtto、後述するオンラインファッションECのZalandoで売上総額が約1.53兆円を数えており、3社のオンラインの売上は、国内の上位100社の小売業の売上合計額に対して41.4%もの割合を占めています。
ドイツで初めてリアルタイム決済サービスを導入した企業としても知られており、国内企業と連携することによってユーザーがリアルタイムに送金できるサービスを利用できるようになりました。
これまでドイツの銀行業界では既に実現されていたものの、eコマースでは実現されていなかったリアルタイム送金のシステムを開発したことにより、EC市場はさらに発展していくのではないかといわれています。
Zaland
https://en.zalando.de/?_rfl=de
Zaland(ツァランド)は2008年に事業を開始した越境ECモールで、当初はサンダルをメイン商材としたECサイトとしてスタートしました。現在はファッションサイトの大手としてドイツで高い人気を獲得しており、国内の3大ECモールの一角に名を連ねています。
商品情報が細かく掲載されており、画像だけでも質感が分かりやすいのが特徴的で、比較的安心感をもって商品を購入できます。また、購入完了から100日以内は返品が可能であり、返送料が無料に設定されているのもメリットのひとつです。越境ECで商品を購入するユーザーにとっては返送料が無料なのはポイントが高く、支持を集めています。
日本国内のファッション系ECサイトの最大手はZOZOTOWNですが、Zalandは同社の10倍近い規模を誇る巨大企業です。従来のZalandoは商品を仕入れて自社ですべての販売を行うことを重視していましたが、現在はデジタルショッピングモールとしての立ち位置を確立したいと考えているようです。
実際にZalandoが提供しているファッションアプリでは、インターネット上で商品を展開していない地域に根差したショップの商品を紹介して最新トレンド情報を提供するなどの試みも行っています。
越境ECの販路選定のポイント
越境ECの販路を選定する際は、次の3つのポイントを意識することが大切です。単に海外で商品を販売するというだけでなく、相性やニーズも見極めた上で出店先を決定しましょう。
ポイント1:自社取扱い商品との相性・ニーズが対象国やサイトと合致しているか
日本にもさまざまなECモールがありますが、海外でもモールによって対象となる商品のジャンルは異なります。自社が取り扱っている商品との相性や現地のニーズをよく見極めた上で、出品予定のサイトが自社とマッチしているかどうかを判断しましょう。
AmazonやeBayのようなオールジャンルのECモールでは、比較的どんな商品を扱っている事業者であっても出品しやすい傾向にあります。しかし、その分競合他社も多いというデメリットもあります。
巨大なECサイトは集客をECモール自身の知名度に頼れるというメリットがあるので、越境ECを始めたばかりで認知度が低い事業者でも売上につながる可能性が高まります。一方で、ジャンルに特化したECサイトの方が特定の商品を探しているユーザーと出会いやすい側面もあるため、メリットとデメリットを理解した上で出店先を選ぶことをおすすめします。
出店先の国によっても売れやすい商品は異なるので、出店前に現地の基本情報やトレンドをリサーチしておくことで、ミスマッチを最大限に抑止できます。せっかく進出してもニーズがないのでは売上を期待できないので、出店する国が適切かどうかも十分に検討しましょう。
ポイント2:サポート体制は万全か
海外の越境ECモールに出店する際は、日本国内とは勝手が違って分かりにくい場面も数多くあるでしょう。そんな時に十分なサポートを受けられるかどうかは重要な問題です。出店の途中で躓いてしまい、サポート体制が整っていないことで出店を断念してしまう例もあることから、あらかじめ出店先のモールのサポート体制を調べておくことをおすすめします。
Amazonなどではアメリカのサイトへの出品であっても日本語の対応が進んでおり、日本で出品するサイト変わらない感覚で利用できるようになってきています。また、東南アジアで人気を博しているShopeeは日本語を扱えるスタッフが配置されており、疑問点があればスムーズに問い合わせに対応してもらえるのが魅力といえるでしょう。
現地の言語でしか対応ができない場合は、言語に精通した専門のスタッフを確保する必要があります。言語の問題をクリアできれば、著名なモールであればサポート体制そのものは整っている場合が多いので、今回ご紹介したような越境ECモールであれば比較的安心して出店できます。
ポイント3:モールとプラットフォームの両方利用することも検討する
日本国内でもECモールとプラットフォームはどちらを利用するのか迷う面も多々ありますが、海外への進出となるとさらに迷う場面は多いでしょう。
国内の場合と同じくECモールはモール自身の知名度の高さを活かした集客力が魅力であり、日本から進出したばかりで認知度が高まっていない状態の事業者であっても、日本製品というだけで注目してもらえる可能性があります。
一方で販売手数料や月額費用などが発生するモールも多く、中には日本のECモールに比べて高額な販売手数料が設定されているケースも少なくありません。
ゆくゆくは越境ECを発展させていきたいと考えているのであれば、自社でECサイトを構築して事業を拡大していくことも視野に入れるのが望ましいといえます。
しかし、最初の段階からECプラットフォームのみで運営すると売上がなかなか立たず、コストだけがかかり続けて事業の継続が困難になってしまう可能性もあるため、モールとプラットフォームの両方を利用することを検討するのも選択肢のひとつです。事業が軌道に乗ってきたらプラットフォームに一本化するなど、柔軟な運用体制を構築していきしましょう。
【コラム】越境ECの物流は大変?アウトソーシングも検討してみよう
越境ECの物流は海外発送を伴うことから大変だ、難しいというイメージをお持ちの方も多いでしょう。実際に海外発送は関税や送料などの問題があるため、国内物流に比べると手間がかかるケースが多いといえます。
越境ECならではの課題が物流にはある
海外へ荷物を発送する際は、越境ECならではの課題が発生します。送料は一般的に国内向けの発送よりも高額になる傾向があり、発送手段も国内とは異なります。日本郵便のEMSや国際eパケット、民間業者のDHLやUPS、FedExなどを利用して発送することになりますが、一部には新規契約が必要なものもあるため、事前準備は複雑になりやすいでしょう。
また、配送期間も国内であれば1~2日で全国各地へ商品を届けられますが、海外へ荷物を届けるのであれば長い配送期間を必要とします。中にはEMSで5~7日程度かかる配送先もあるため、越境ECに進出するのであれば、どのくらいの配送リードタイムがかかるのかをあらかじめ把握しておくことが大切です。
また、関税の問題もあります。日本国内への発送であれば関税は発生しませんが、海外へ荷物を送る際には通関検査が行われるため、発送先の国の規定に応じて商品に関税がかけられる可能性があります。
関税は基本的に受取人が支払うことになるので、事前に関税の発生を知らされていなかった受取人が受け取りを拒否すると、高額な返送料を支払って手元に商品を戻さなければならないリスクもあるので注意が必要です。
さらに、海外の配送は日本に比べて荷物の扱いが荒くなる可能性もあるため、梱包を国内向けの発送よりも厳重にしなければならないという問題もあります。このように、越境ECならではの物流の課題がいくつもあるのです。
物流アウトソーシングの利用で業務負担・コスト軽減が叶う可能性
越境ECに進出するのであれば、物流アウトソーシングを利用することでコストの軽減を実現できる可能性があります。
自社で海外発送を行う場合、配送料金は通常の運賃に基づいて支払いを行う必要がありますが、物流アウトソーシングを提供している一部の物流業者は割引料金を設定して割安な配送料金で海外へ荷物を発送できる場合があるからです。
また、海外への発送はインボイスや通関書類の作成など、国内発送とは異なる手続きが発生するため、業務負担は通常の物流業務に比べて重くなりやすいといえるでしょう。物流アウトソーシングによって海外発送を代行してもらうことで、手間のかかる通関業務などもまとめてプロに任せられるので、業務負担を大幅に軽減できます。
荷物の梱包の問題も、プロの技術で海外でも問題なく配送できるように商品を梱包してもらえるので、高品質な物流を維持する上でも役立つでしょう。
越境ECは自社にあった販売経路を選定することが大切
日本にいながら世界中に自社の商品を販売できる越境ECは、自社の販路を大幅に拡大できるチャンスとなります。世界にはさまざまな越境ECプラットフォームがあるので、自社が扱っている商品に適しているのはどのプラットフォームなのかを十分に検討した上で、出店を検討すると良いでしょう。
初期費用や月額費用の他にも、独自の販売手数料を設けているプラットフォームがほとんどです。コスト面もよく把握した上で、場合によっては物流アウトソーシングの利用も検討しながら出店準備を進めることが大切です。