Vコマースとは|特徴や市場規模、事例・Mコマースとの相違点についてご紹介

Vコマースとは|特徴や市場規模、事例・Mコマースとの相違点についてご紹介

インターネット環境やスマートフォンが浸透してきた近年では、テキストや画像を使ったショッピングであるeコマースよりもさらに進んだ購買体験が注目されています。中でもVR技術を駆使したVコマースは、発展が期待されている筆頭格といえるでしょう。

Vコマースの活用は、ユーザーに新たな購買体験を提供して売上拡大できる可能性を秘めています。そこで今回は、Vコマースの特徴や市場規模、Mコマースとの相違点や、具体的な活用事例などを分かりやすくご紹介します。

Vコマースの概要

近年話題になっているVコマースですが、どのような考え方を指すのでしょうか。まずは、Vコマースの概要や市場規模、Mコマースとの相違点について解説します。

バーチャル(Virtual)コマース・VRコマースを指す

Vコマースとは「VR技術を活用し、商品やサービスの売買を行うオンラインショッピング」のことです。Vコマースの他に「バーチャルコマース」や「VRコマース」とも呼ばれています。インターネット上の電子商取引は「eコマース」と呼ばれますが、eコマースの新しい技術のひとつとして位置づけられています。

VRは日本語で「仮想現実」という意味を持っており、専用のデバイスによってこれまでには無かったさまざまな体験を可能にします。例えばゲームの世界に自分が入り込んだかのような体験ができたり、医療現場で実際の手術をシミュレーションしたりと、VR技術の活用方法は多様な業種・業態に広がっています。

VRコマースにおいては、これまでテキストや写真、動画が中心だったオンラインショッピングに仮想現実を採用することで、よりリアリティのある店舗空間をインターネット上に再現して買い物を楽しんでもらうことができます。

ボイス(Voice)コマースを指すことも

VコマースはVR技術を活用した仮想現実によるオンラインショッピングを指しますが、時には「ボイスコマース」を指すこともあります。ボイスコマースとは音声を活用した取引形態のことで、声紋認証技術を活用して声による決済を可能にします。

まだ日本ではそれほど活用されていませんが、海外においては電話による声紋認証で決済や送金、残高照会等が行われるケースも増えてきており、取引期間の短縮に効果を発揮しています。

ボイスコマースの登場は2017年頃とされており、アメリカにおいては20%程度のユーザーが声紋認証を利用した決済を行っているといわれています。今後さらにボイスコマースの活用が広がり、日本においても浸透していく可能性は十分にあるといえるでしょう。

現状では主に決済手段として活用されているボイスコマースですが、ECストアにおいて商品の検索を行うなどの購買体験に応用される可能性もあります。

市場規模

​株式会社グローバルインフォメーションが実施した調査によれば、VR技術の市場規模は2020年時点で​158億1,000万ドルにも達しており、2021年~2028年にかけて​年平均成長率18.0%の高い推移が期待されるという結果を発表しています。このことからも、Vコマースは今後ますます成長が期待される分野であるといえるでしょう。

また、経済産業省がまとめた「平成30年度 我が国におけるデータ衝動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)」を参照しても、最新の通信技術である5Gの普及が契機となり、EC業界においてもVコマースやライブコマースなどの新しいオンラインショッピングが急速に発展する可能性があると述べられています。

発展し続けるVR市場の勢いも手伝って、Vコマースは急激に浸透が期待されるEC事業のひとつであるといえます。

Mコマースとの相違点

eコマースが発展したオンラインショッピングの形式のひとつに「Mコマース」があります。Mコマースとはスマートフォンを活用した取引のことであり、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などあらゆる取引を想定しているeコマースとは異なって、モバイル端末に限定したオンライン取引を指しています。

一方で、VコマースはVR技術を活用したオンラインショッピングのことであり、Mコマースのように取引を行う端末はモバイル端末に限定されません。

例えば、ECストアを閲覧した際にVR技術によるリアリティのある店舗で買い物を楽しむ場合も、閲覧する媒体はパソコンやスマートフォン、タブレット端末などのどれであっても「Vコマース」と表現されます。

Vコマースの特徴

Vコマースの主な特徴として、次の3つが挙げられます。新たなブランド体験の提供や詳細なデータ分析によって、顧客と企業の双方にメリットがもたらされる可能性が期待できます。

ユーザーに新たなブランド体験を提供可能

eコマースにおいては、ユーザーが商品の購入を判断するための材料は商品説明や商品画像、動画などの視覚を重視したものに限られていました。動画を活用したとしても聴覚が加わるのみで、五感全ての働きかけることは難しかったといえます。

しかし、Vコマースを利用すると視覚や聴覚以外の感覚にも訴えかけることが可能になります。店員による接客は聴覚からの情報をもたらし、方法によっては商品の手触りといった触覚、商品の香りといった嗅覚からのアプローチも実現できます。これらの情報は購入の判断材料にできるでしょう。

インテリア用品や家電などの場合は、VRを利用して実際に自宅に配置してみることも可能になります。商品の具体的な利用シーンをイメージしやすくなるため、より購入を的確に判断できるのがメリットです。

個別対応で売上向上が狙える

eコマースの場合は、ECストアをユーザーが能動的に閲覧して商品を購入するかどうか判断するショッピングの方法が一般的でした。訪問先に商品画像や説明などの情報が用意されており、疑問があっても問い合わせる方法は電話やメール、チャットなどの限られた方法しかないためにすぐに解決することは簡単ではありません。

しかし、Vコマースならユーザー一人ひとりに合わせた個別の接客が可能になります。リアル店舗にいるかのように買い物を楽しめるため、商品に対する疑問をその場で店員に相談して解決したり、おすすめの商品を尋ねることで自分に合った商品を選べたりするといった新しい購入体験をユーザーに提供できます。

従来のeコマースでは商品の購入には至らなかったユーザーも、個別対応なら購入を決断してもらえる可能性があります。全てのユーザーに同じ対応を取るのではなく、個々のユーザーに特化した対応を行うことによって、売上の向上も期待できます。

幅広いユーザー層にリーチをかけられる

これまでのeコマースのように商品情報を閲覧するだけでなく、リアル店舗で買い物をしているかのような体験をユーザーに提供できることから、幅広いユーザー層にリーチをかけられるのもVコマースの特徴のひとつです。

オンラインショッピングによる購入体験に慣れていない層は、決済方法が分からなかったり商品の閲覧方法が難しいと感じたりして、eコマースの利用を諦めてしまう例も少なくありません。しかし、Vコマースなら、インターネットに接続できる環境さえ用意できれば店舗に買い物に行った時と同じように接客を受けることが可能になります。

顧客の要望に合わせて店員が柔軟に接客し商品を販売できるため、インターネットで買い物をする方法がよく分からないというユーザー層にもリーチしやすいといえるでしょう。

リアル店舗が近隣になく足を運ぶのが難しいというユーザーでも、オンラインでリアル店舗に近いショッピングを楽しめるのも魅力です。

機能豊富なツールが多く高精度の分析が可能

リアル店舗は入店したユーザー一人ひとりの行動を追いかけることは難しいため、行動パターンの分析には限界があります。しかし、eコマースはユーザーが訪問した経路や滞在時間、閲覧した商品ページの種類や購買プロセスなどを詳細に分析できるため、効果的なマーケティング戦略を立案しやすいといえます。

また、Vコマースではeコマースの分析機能に加えて検索ツールやナビゲーション機能なども取り入れられるため、分析結果に基づいたマーケティング戦略の幅がさらに広がります。

ユーザーが商品を選んでから決済を完了するまでのプロセスをより簡潔にできるため、かご落ちを防いで購入完了率を高められるというメリットがあります。

Vコマースの事例をご紹介

まだ日本ではそれほど浸透しているとはいえないVコマースですが、海外では積極的に活用している事例が数多くあります。ここでは、Vコマースの3つの事例をご紹介します。

Virtusize株式会社

https://www.virtusize.jp/

Virtusize株式会社では、「サイズをチェック」というVコマースによるバーチャル試着室サービスを提供しています。

ユーザーが同社のECサイトで購入した商品や既に所持している洋服を、ECストア上の商品と重ね合わせてサイズを比べられるサービスで、イラストによる視覚的な比較が可能になるためサイズ感を把握しやすいというメリットがあります。

自分の身体情報を入力するだけで簡単にシルエットが完成するため、シルエットを利用して商品の試着が可能になり、手軽かつ的確にサイズを把握できるのは魅力的です。

eコマースによるショッピングでは洋服のサイズ感を把握しにくく、購入した商品のサイズが自分に合っていないという理由で返品されるケースがよくありますが、Vコマースで事前に試着できるようになることで返品の手間やコストを削減しやすくなるでしょう。

Virtusizeを利用してオーダーされた商品は1.5億点を超えており、3,000万人のユーザー数と1,000万点の対象商品がある実績豊富なサービスです。

eBay

https://www.ebay.co.jp/

世界でも最大規模を誇る越境ECストアのeBayは、オーストラリアの大手百貨店であるMYERと提携して2016年に世界で初めてVR百貨店事業を開始しました。このVR百貨店は「Virtual Reality Department Store」と名付けられ、新たなオンラインショッピング体験を提供しています。

Virtual Reality Department Storeで購入できる商品はMYER社の商品であり、eBayは決済の部分を担当しています。ユーザーはMYER社が扱う商品をVR専用のデバイスを経由して閲覧し、購入したい商品を決定したら、eBayアプリから決済を行うという流れでショッピングを行います。

このVR百貨店は商品を360°から3Dで閲覧できるため、商品の質感やデザインなど、これまでのeコマースでは詳細に知ることは難しかった情報を簡単に提供できるようになりました。ユーザーはより豊富な情報を元に購入を判断できるようになり、リアル店舗に近い感覚でショッピングを楽しめます。

また、レコメンド機能も精度が高く、ユーザーの関心に合わせた商品を表示できるため、ついで買いの効果も期待できます。

Alibaba

https://japanese.alibaba.com/

中国で数多くの大手ECストアを運営するAlibabaは、2016年から「BUY+」というVRショッピングサービスを提供しています。VR専用デバイス(VRヘッドセット)を装着すると、リアル店舗のような空間が目の前に表示され、店舗を自由に歩き回ったり商品を手に取ったりしてショッピングを楽しむことが可能になります

インターネット環境とVR専用デバイスさえ用意できれば、リアル店舗に足を運ぶのが難しい人でもリアリティのあるショッピングを体験できるのがメリットです。

購入したい商品が決まったら、Alipayの「VRpay」を利用して決済を行います。セキュリティ対策にも配慮されており、VR空間にいながらパスワード入力も行えます(パスワードなしの設定も可能)。

よりリアリティのある質感を楽しむにはVR専用デバイスの装着が推奨されますが、VRヘッドセットがなくても全体像を見ながらショッピングを行う方式を選択することもできるため、Vコマースによるショッピングの雰囲気を掴むことはできるでしょう。

【コラム】波動対応は事前の物流外注がおすすめ

Vコマースによく起こりがちな波動への対応は、あらかじめ物流を外注化しておくのがおすすめです。なぜ物流の外注化が効果的なのか、その理由を解説します。

急激な物量の変化にも即時対応

Vコマースも含めたeコマースにおいては、急激に物量が変化する「波動」が起こりやすいという特徴があります。インフルエンサーが自社の商品をSNSやブログで紹介したり、メディアで特集が組まれたりすることで受注が激増すれば、物流体制が追い付かずに配送遅延や誤配送を起こしやすくなるリスクを避けられません。

波動はどのタイミングで起こるかを予測することが非常に難しいため、事前に対応策を講じておく必要があります。事前に物流を外注しておけば、突然需要が増加しても外注先の倉庫で需要増に柔軟に対応するため、慌てずに基幹業務に集中し続けられます。

自社の基幹業務への影響を最小限に抑えられる

物流業務は自社の基幹業務を圧迫しやすく、特に事業が拡大してくると影響が大きくなりやすい傾向にあります。規模が小さいうちは片手間にこなせていた物流業務が、事業拡大とともに基幹業務の妨げになるからです。

物流業務はユーザーの信頼を維持する上で大切な業務ではありますが、一方で生産性が高い業務とは言い難いのが実情です。基幹業務への営業を最小限に抑える意味でも、物流を外注化してプロの物流業者のノウハウを取り入れることをおすすめします。

外注化によって物流に割り当てなければならないリソースを解放できれば、基幹業務への影響を小さくできます。

余計なコスト発生を防ぐ

物流の外注化はリソース不足の解消や物流のクオリティ維持を実現するだけでなく、余計なコストの発生を防ぐことにもつながります

自社で物流体制を構築する場合は、倉庫スタッフも自社で雇用する必要があることから毎月の人件費は固定費として扱われます。閑散期でスタッフに余剰が発生したとしても、すぐに削減することは簡単ではありません。もしスタッフを減らしてしまうと、繁忙期を迎えた時に十分なスタッフの確保が難しくなる可能性があるからです。

物流需要が高まっている背景もあり、人件費は増大し続けているため、繁忙期にスタッフが不足すると高額な費用を支払って追加スタッフを雇用しなければならない可能性もあります。

しかし、外注なら毎月の受注量に合わせて委託先の倉庫が柔軟にリソースを調整するため、常に最適なコストで物流を運用できます。物流費は固定費から変動費に変わり、余計なコストの発生を防止できます。

Vコマースはこれから注目していきたい領域のひとつ

Vコマースを活用することによって、これまで難しかった五感をフル活用した購入体験を提供できます。VR市場は今後さらに発展していくことが予測されており、まだあまりVコマースが浸透していない日本でも急速に普及していく可能性は十分にあるといえるでしょう。

リアル店舗からは遠い場所に住んでいるユーザーや、オンラインショッピングに明るくないユーザーにも現実の店舗と近い感覚で買い物を楽しんでもらえることから、Vコマースはこれまでターゲットにならなかったユーザー層にもリーチできる可能性を秘めています。

ECストアの運用は波動が発生しやすい傾向にあり、Vコマースによってさらに物流の変動を見極めにくくなるリスクもあります。急激な物流の変動に備え、必要に応じて物流の外注かも視野に入れた運用を検討しましょう。

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オープンロジマガジン 編集部

物流プラットフォーム「オープンロジ」のマーケティングメンバーにて編成。物流のことはもちろん、ネットショップやマーケティングのことなど、EC事業者に役に立つ情報を幅広く発信していきます。

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