保管料を見直すときは、単純に「1坪いくらか(坪単価)」だけを見るのではなく、
「その在庫を保管するために、どれだけの面積が必要なのか」という視点を持つことが重要です。
本記事では、保管料と必要面積の関係を整理したうえで、保管方法によってコストがどの程度変わり得るのかをシミュレーションで紹介します。
物流コストを見直すなら、「保管料の決まり方」に注目する
EC事業の成長に伴って出荷量が増えると、物流コストも増えていきます。
特に月間1万件程度の出荷規模になると、物流コストは利益率にも大きく影響するため、「削減できる項目はないか」検討が必要になります。
物流コストの削減を考える際、確認したいのは「何にいくらかかっているか」だけではありません。
「なぜそのコストになっているのか」
ここに目を向けると、これまで削減対象として考えていなかった部分に、改善の余地が見つかることがあります。
代表例が「保管料」です。
保管料は契約条件によって、坪単価だけでなく、同じ在庫を保管するために必要な面積まで含めて考えることが重要になってきます。
保管料は「坪単価」だけでは判断できない
保管料を見直す際、どうしても「1坪いくら(坪単価)」という数字に意識が向きがちです。
しかし、保管面積に応じて料金が決まる契約であれば、実際に支払う保管料は、坪単価だけでなく必要な坪数によっても変わります。
つまり、保管料は「坪単価」だけでなく、「必要面積」とセットで考える視点が不可欠です。
例えば、坪単価が5,000円の倉庫と6,000円の倉庫があった場合、単純に比較すれば5,000円の倉庫のほうが安く見えます。
一方、6,000円の倉庫のほうが少ない面積で同じ在庫を保管できれば、月額の保管料では逆転する可能性があります。
そのため、倉庫の保管料を比較するときには、「1坪いくらか」だけでなく、「自社の在庫を何坪で保管する必要があるか」まで考えることが重要です。
必要な保管面積は、何によって決まる?
必要な保管面積は、在庫量だけでなく、保管方法や作業に必要なスペースなどによって変わります。
例えば、パレットを床に直接置いて保管する方法では、在庫を増やすほど床面積が必要になります。
一方、ラックを使って高さ方向の空間を活用すれば、同じ在庫量でも床面積を抑えられる場合があります。
ただし、単純に高く積めばよいわけではありません。
商品の荷姿や重量、ケースの強度、入出荷の頻度、フォークリフトなどの荷役方法によって、適した保管方法は異なります。
また、パレットそのものの面積だけでなく、通路や荷役に必要なスペースも考慮する必要があります。
在庫の動き方によっても、適した保管方法は変わる
ECでは、日々の出荷に使う在庫と、当面ピッキングする予定のない在庫が同時に存在することがあります。
出荷頻度の高い在庫は、ピッキングのしやすさや作業動線を優先したほうが効率的です。
一方、日々の出荷対象ではない在庫であれば、必ずしもピッキング作業に適した場所や保管方法を選ぶ必要はありません。
例えば、一定量をまとめて保有している在庫では、日々の出荷作業とは切り分けて保管方法を考えることで、限られた倉庫スペースをより効率的に使える可能性があります。
つまり「どの在庫を、どのくらいの頻度で動かすか」ということも、保管方法を考えるうえでの重要なポイントです。
シミュレーション① 保管方法でパレットの占有面積はどれだけ変わる?
ここで、日々の出荷対象ではない200パレット分の在庫を例に、保管方法によってパレットそのものの占有面積がどのように変わるのかを見てみましょう。
今回は、日々の出荷作業や作業スペースとは切り分け、200パレット分の在庫を保管する際のパレット占有面積に焦点を当てます。
【シミュレーションの前提条件】
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 対象在庫 | 日々の出荷対象ではない在庫 |
| 保有パレット数 | 200パレット |
| パレットサイズ | 1.1m × 1.1m |
| 1パレットあたりのケース数 | 36ケース |
| 1ケースあたりの商品数 | 20個 |
| 1パレットあたりの商品数 | 720個 |
200パレットの場合、
720個 × 200パレット = 144,000個
の商品を保管することになります。
また、1パレットの床面積は、
1.1m × 1.1m = 1.21㎡(約0.366坪)
です。
そのため、200パレットを1段で床に並べた場合、パレットそのものが占有する面積は、
約73.2坪
となります。
ただし、これはあくまでパレットそのものの占有面積です。実際の倉庫では、パレットを出し入れするための通路や荷役スペースなども必要になります。
高さ方向を活用すると、パレットの占有面積を抑えられる
例えば、1パレットの床面積に4段重ねて保管できるラックを利用すると、200パレット分の在庫も単純計算で50パレット分の床面積に収まります。
パレットそのものの面積で考えると、
73.2坪 ÷ 4 = 約18.3坪 です。
同じ在庫量でも、保管方法によってパレットそのものが占有する床面積を圧縮できるということです。
ただし、これはあくまでパレットそのものを置くために必要な面積を単純計算した数字です。実際には、ラックの構造や通路幅、フォークリフトによる荷役作業、設備配置などを考慮する必要があります。
シミュレーション② 必要面積まで含めると、保管料はどれだけ変わる?
シミュレーション①では、パレットそのものが占有する床面積を比較しました。
一方、実際に倉庫を借りる場合は、パレットの占有面積だけでなく、ラックや通路、荷役スペースなどを含めた「契約上の必要面積」で考える必要があります。
そこで、シミュレーション①とは別に、同じ在庫を保管する場合の契約面積を想定して比較します。
【2つの倉庫比較】
| 倉庫A | 倉庫B | |
|---|---|---|
| 保管方法・設備 | 平置き中心 | ラックによる立体保管 |
| 坪単価 | 5,000円 | 6,000円 |
| 必要面積 | 約210坪 | 約125坪 |
| 月額の保管料 | 約105万円 | 約75万円 |
【倉庫A】
パレットを床に直接置く平置き中心の保管環境を想定しています。
パレットの保管に加えて、通路や荷役スペースなどを含め、必要面積を約210坪とします。
【倉庫B】
高さ方向を活用できる保管設備を備えた倉庫を想定しています。
4段ラックを前提とし、通路や荷役スペースなども含めた必要面積は約125坪です。
ラック設備の導入や運用コストを反映し、 坪単価は倉庫Aより高い6,000円としています。
坪単価だけでなく、必要面積まで含めて比較する
2つを比較すると、
倉庫A:210坪 × 5,000円 = 105万円/月
倉庫B:125坪 × 6,000円 = 75万円/月
となります。
つまり、坪単価は1,000円高い倉庫Bのほうが、月額の保管料は30万円安いという結果になります。
このように、倉庫を比較するときは、坪単価だけでなく、同じ在庫を保管するために必要な面積まで含めて考えることが重要です。
必要面積だけでなく、契約条件や作業性も確認する
もちろん、すべてのEC事業者に、必要な保管面積を減らすことで同じようなコスト削減効果が生まれるわけではありません。
すでに効率的な保管ができている場合や、商品のサイズ・重量・形状などの特性上、保管面積を減らすことが難しい場合もあります。
また、保管料の料金体系によっても、面積削減による効果は異なります。
坪単価など面積に応じて料金が決まる契約では、必要面積の削減が保管料の削減につながりやすい一方、パレット数や商品数、容積などに応じて課金される場合は、面積を減らしたところで保管料が下がるとは限りません。
さらに、必要面積が小さければ、それだけで適した倉庫だと判断できるわけでもありません。
商品のサイズや重量、SKU数、出荷頻度、天井高などによって、適した保管方法は異なります。
保管面積だけでなく、契約条件や入出荷のしやすさ、作業性まで含めて判断することが重要です。
まとめ|「なぜそのコストになっているのか」を考える
物流コストの削減を考える際、保管料も見直しの対象になります。
保管料を見直すときは、単純に「1坪いくらか」だけを見るのではなく、
「その在庫を保管するために、どれだけの面積が必要なのか」という視点を持つことが重要です。
同じ在庫量でも、商品の荷姿や保管方法などによって、必要となる保管面積は変わります。
保管料が高い・安いということだけでなく、「なぜそのコストになっているのか」を考える。
それが、物流コスト削減の第一歩です。
▼ 物流倉庫の移管を検討中の方へ
オープンロジでは、現在の物流状況をお聞きしたうえで、保管方法や倉庫の使い方、物流コスト全体を見ながら、適した方法を一緒に考えてご提案します。

記事監修|有田 秀夫 (ありた ひでお)
某大手物流企業にて業務設計や法人営業を経験後、老舗通販物流企業にて20年近く数多くのクライアントの物流課題を解決に導いてきた物流のプロ。
現職のオープンロジでは、物流ネットワーク開発に携わっている。



